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    鴨緑

    @gatoyosee

    描いた絵ここにポイとする
    お題箱 https://odaibako.net/u/gatoyosee

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    鴨緑

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    アオ主
    フシギ被造物・ちっさいアオの話

    秋を味わう季節の変わり目の、暑いのか寒いのかよく分からない、おそらくこれをイマドキの『秋』と呼ぶのだろうなぁと感じる放課後に、
    オレの寮部屋ではヒッソリと『例のブツ』をいそいそとカバンから取り出していた。
    そろそろ食べなければならないと言う使命感でスーパーで買ってきた『焼き芋』である。
    買ったばかりの熱さは消えてしまい、今は程よい温もりを感じる程度になってしまったが、これぐらいが丁度いい。

    はこっ…と真ん中から芋を割れば、まだ中には熱が籠っていたのかスーパーでカゴに入れた時と同じような蒸気が顔に、鼻に纏わりつき、なんとも食欲のそそる匂いを堪能してしまった。
    その匂いを嗅いだのはオレだけじゃないらしい。
    学ランの胸ポケット、胴のポケットからも、
    三体のちっさいアオガミがひょっこりと、匂いに釣られたの顔だけ覗き込むように匂いの発生源をジッ…と睨んでいた。

    説明書きみたいにはなるが、ちっさいアオガミとは表上では『アオガミの代替品』である。
    アオガミにメンテナンスが必要な事態になった時の『お守り』のようなものだ。

    その名の通り、『本当にちっさい』アオガミである。
    ちっさいと言えど、そのままちっさくしたものでは無く、アニメのデフォルメの様な…二頭身のマスコットキャラクターともとらえられる…そう言う意味の『ちっさい』も、このアオガミには含まれている。
    パッと見た感じだと本当にマスコットキーホルダーが意思を持って動いているのだ。

    ダアトで拾った結晶となったアオガミ式の欠片、
    それに該当するアオガミ式の写せ身、
    神造魔人を鋳造する際に使用した……あまりよく知らないけど、そう言う技術、
    そして……オレ達、ナホビノのマガツヒを蓄えた髪の一房、

    その全てを混ぜ合わせて作った、通常のアオガミ式を鋳造するよりも『かなりの低コスト』で作られた廉価版……
    それが、ちっさいアオガミ……と、言う事らしい。

    代替品とか廉価版とか言葉を並べてしまったが……
    オレにとっては可愛い、カワイイ『オレ達の子供』みたいなモンだと思っている。
    今ここにアオガミがいたら「その通りだ」と言っていただろう。

    ちっさいアオガミを作って貰った時、ベテルの職員の人に「アオガミ式のパーツだけでは到底無理だったと思う…ナホビノによるマガツヒ?神格の書き換えの力…?恐らく私達でも考えがつかない力が『つなぎ』の様な役割をしてくれたのかな?とにかく、ナホビノ様々ね」…と言ったモンだから、
    「オレ達の……愛の力……って…こと!?」
    と調子よく反応したら、なんとも言えない苦笑いで返されてしまった。

    まぁそんな言い方をされたらもう『オレ達の子供』と呼んでも過言ではないと言う事だ。
    誰がなんと言おうとそう言うことなのだ。

    ………………
    ……………
    ………

    ちっさいアオガミ達は相変わらず焼き芋を睨み続けている。
    そんなちっさいアオガミ達をヒョイヒョイとつまみ上げ、机の上にそっ…と移動させた。
    「ちっさいアオガミもお食べ?」そう言って、
    ちっさいアオガミ達に割った半分の焼き芋を差し出す。
    試しにコレは食べられるものだと見せる為にも一口齧ってみせた。
    ………オレは焼き芋の皮は取るのが『面倒くさい』派だ。
    皮のコゲより勝る芋の甘さがたまらない。もう一口、と言った感じに芋を食べ進める。

    それを眺めていたちっさいアオガミ達もチビチビと芋の端っこを齧っていった。
    お?食べてる食べてる。と、
    喜びながらもその光景を、芋を齧りながらしばらく眺めていた。
    いつのまにか芋も食べ尽くしたところで、
    ふと気づいた。

    「……ちっさいアオガミ達??それ、皮だけしか食べてない?」

    …ちっさいアオガミ達の予想外の行動につい言葉が出る。
    焼き芋の皮しか食べてない。丁寧に芋の中身だけは綺麗に残して、皮だけを剥いでそれを食べていた。

    「ちっさいの?」
    呼びかけるとちっさいアオガミ達は、そのちっさな体全体を使いながらさっきまで群がっていた焼き芋を支え、こちらに向けてきた。
    綺麗に皮が剥かれた焼き芋だ。

    それを見て、オレのイマジナリーアオガミが「少年、焼き芋の皮を剥いておいた。これで食べやすくなったはずだ」と、
    ありもしないが、あり得なくもない幻聴が聞こえたような気がした。
    いつものアオガミだろうが、ちっさいアオガミだろうが、考えている事は『大体は一緒』なのだ。

    「…ありがと」
    そんな優しいちっさな子達の健気な献身に思わず顔が緩んでしまう。
    そんな優しい子には、ご褒美をあげなくては。

    「でもね、オレはアオガミ達にも美味しいものを食べて欲しいから、ね?」そう言って、
    ちっさいアオガミ達から焼き芋を受け取ると、端っこをつまむようにして小さく割り、ちっさいアオガミ達に手渡した。

    それでようやく『食べていいもの』と認識してくれたらしい。

    ようやく焼き芋の味をちっさなアオガミ達に知って貰えたところで、オレもせっかく貰ったものだからとチビチビとまた焼き芋を齧る。
    ハムスターの様に焼き芋を夢中で頬張るちっさいアオガミ達の姿をジッと網膜に焼き付けるように見つめながら、
    おっきなアオガミ…もとい、オレの恋人の方のアオガミがメンテナンスから帰ってくるのを待っていた。







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