年が明けただけの、特別では無い日冬休みは実家で家族と過ごしていたが、今年は『三年最後の年は友達と年越ししたい』と親に懇願し、
今年の冬は、初めて学寮で過ごすことになった。
親には一つだけ嘘をついた。
共に年を越すのは『友達』ではなく『恋人』だ。
「もうすぐかぁ…」
狭い学寮の自室に、無理矢理置いた炬燵の中でスマホの画面を見つめながら、天板にオレは頬を突っ伏していた。
連絡アプリで家族とやり取りをしながら、ついでに時間を見ると今年も、もう5分を切ってしまった。
随分ダラダラと炬燵の中で過ごしていたらしい。
重たい頭を上げると正面に座っているアオガミがミカンの皮を剥いている。
綺麗に白いスジを取っているのを眺めていたら、こちらの視線に気づいたのかミカンの一房をこちらに寄せてきた。
それを何も言わず口で受け取ると、口の中で絞る様に一瞬で食べてしまった。
乾いた喉に潤いが染みていくのを感じる。
「少年、喉が渇いているのなら私がお茶を淹れてこよう。」
「いいよ、もうすぐ年明けるし」
そう言って、またチラとスマホの時計を見る。
今年も段々と追い詰められている。そんな感覚だ。
無言の時間が少し過ぎ、いよいよとカウントダウンが始まる。
5…4…3…2…1…
「あけましておめでとう」
「こちらこそ、明けましておめでとう。」
なんて事ない、新年の特別な挨拶を交わしたところで炬燵から這い出て、そのままアオガミに手を合わす。
「少年?」
不思議そうに見つめるアオガミの視線を感じつつも、軽く、二礼二拍手一礼。アオガミに向かってお参りをする。
「少年?…なにを…?」
「初詣」
「初詣?」
「アオガミって神様がすぐそばにいんだから、今年、初めてはアオガミに……」
……ね?と、
間違った事は言ってない。多分。
わざわざ神社に行かなくたって神様がそこにいるんだから。やっとけの精神……
もとい、アオガミと言う神様を知ってしまったんだ。後、ナホビノと言う神にもオレは成った。
そうなれば、もう、他の神様に頭下げる必要も無いだろうと、我ながら傲慢な理由もあったりする。
「初詣も終わったし…もう寝よう……」
そのままベッドにごろんと寝転ぶと、炬燵でほてった体にシーツの微かな冷たさが伝わり、いわゆる『整う』と言う感覚と共に、眠気が一気にのしかかってきた。
「あおがみも…」
もう、目も開けるのも億劫になるぐらい眠たくなりながらもアオガミにも寝る様に催促する。
パチと炬燵のスイッチを消す音が聞こえる。
ガサと布団が捲れる音と共に布団の重みが体にのしかかる。
ピ、と電気を消す音が聞こえるといよいよまぶた越しでも感じていた光も消えた。
「おやすみ、少年」
「ん……」
「朝、起きたら日本支部で新年の挨拶をしに行こう」
「ん、」
「少年」
「ん?」
「……なんでもない。おやすみ」
「……ん。……すみ、」
その後は何もない
ただ、朝まで寝て過ごした。
ただ、あの時のアオガミが何を言いたかったか?は気にはしたけど、その疑問も眠気が全て押し流した。
覚えていたら、また聞けばいい。覚えていれば。