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    鴨緑

    @gatoyosee

    描いた絵ここにポイとする

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    鴨緑

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    いつぞやのハロウィンの時にこっそり出した読み物
    アオ主
    少年の部屋の間取りも公式で出ちゃったので供養の意も込めて

    二倍お得になる方法「トリックオアトリィ〜ト〜」
    「少年?」
    学寮の少年の自室にて
    少年はキョンシーの様な仮装をしていた。キョンシーにしては袖が長く下は、何故かミニスカートになってる。
    全体的にフリルが多くあしらわれており、私が知るキョンシーにしては肌の露出が多い。けれど額に札が貼っている以上これはキョンシーなのだろう。
    しかし、問題はそこではない。
    「少年、ハロウィン祭りは終わったのでは?」
    そうだ、今日はハロウィンという事でベテルにてささやかなハロウィン祭りが催された。
    皆、簡単な仮装をし、お菓子を分け合う。少年と私も今回の催しにはドンキで購入した仮装で出席した。
    狼男の仮装をした私と吸血鬼の仮装をした少年とで長官からお菓子を貰ってきた。
    「ベテルでのハロウィン祭りは、ね?」
    洗面所から現れた少年は長い袖をぱたぱたさせている
    「こっからは個人戦よ」
    「個人戦」
    ハロウィンと何かの競技だったのか?
    「……この格好でするのはアオガミだけだからね?ってコトで。トリックオアトリィ〜ト〜」
    少年が額に張られた札越しにニヤニヤとこちらを見ている。どうしようか、このままでは少年にイタズラをされてしまう。そもそもイタズラとは一体何をする事を指すのか?しかし、私には少年をイタズラなどと悪事をさせる事だけはさせたくない。
    「分かった、ではこれを」
    丁度よく、長官からもらった月餅があったので少年に手渡した。
    きょとんとしている。……様に見える。
    まじまじと月餅を見た後に額の札を横にずらし、楽しそうな笑みでこちらを見つめて来る。そんなに月餅が好きなのだろうか?
    「オレ、思うんだよ。お菓子をくれたらイタズラができないのってちょーっともったいなくない?」
    「どう言う事だろうか?」
    「つまり!お菓子もくれてイタズラもできたら二倍お得!!なワケ」
    「それは果たしてお得なのか?」
    「お得なんだよ」
    「そうなのか?」
    「そうなんだよ」
    そう言いいながら少年は月餅の包みを取り、一口大の塊に割り、口に咥えている。しまった、これでは月餅をあげた意味がない。少年に悪事をさせてしまう…

    ……………少年のさっきまでの威勢が消えている。
    静かになった少年の震える手が私の頬に添えられた。少年の顔を見ると明らかに頬が赤らめている、瞳も少し潤んでいた。
    咥えられていた月餅が私の口元に寄せられる。思わず口にすると微かに少年の唇が触れ、すぐに離れていった。
    少年はうわごとの様にやってやった、やってやった、と俯きながらまたにやにやと笑っている。
    少年がくれた月餅を咀嚼しながら何故少年がこの様な行動を起こしたのかを考えた。いや、考えるまでもなく、
    「少年、これが君の言うイタズラなのだろうか?」
    「……へへ…」
    困った様に俯きながらはにかむ少年は愛おしいと感じた。それよりも、少年が言うイタズラとは私が予想していた悪事とは全く違ったものだった。これがハロウィンのイタズラ……とするならば、
    「少年」
    「へ?」
    ベテルでの仮装で使用した狼男のカチューシャを装着する
    「トリックオアトリート」
    「え?」
    「少年、お菓子をくれなければ、私は君にイタズラをしなければならない」
    「え?ええ?」
    「私もやってみてもいいだろうか?ハロウィンのイタズラを」
    「………」
    最初、慌てた様にこちらを見つめてきた瞳は、困った様に俯いている。ぅう…うぅ…としばらくもじもじと袖を弄っていた。
    「……アオガミ」
    袖からポトポトと小さな飴が二、三粒落ちて来る
    「…お菓子…もう飴しか残ってない…」
    「そうか、十分だ」
    そう言い、飴の一粒を貰った。
    「君は言った。お菓子を貰ってイタズラもするのがお得なのだろう?」
    小さな一粒を口に含む。苺味だ。
    今度は私が少年の頬に手を添える。少年はひどくおとなしかった。誤って少年が飴を飲み込まない様、口をつけ、丁寧に舌先で飴を少年の口内に送り込む。
    その間、顔にかかる少年の荒い鼻息がとても愛おしく感じた。
    口を離してもまだ少年の息は荒い。
    「少年」
    「……うん」
    顔を赤くして俯いている。
    「ハロウィンのイタズラと言うものは『こう言う行為』をするものだろうか?」
    「……これをするのはアオガミだけ………」
    だから……ね?と、
    最後は掠れて消えそうな声だった。ぽす、と私の肩にもたれかかった少年は肩越しでも分かるぐらい体温が上昇していた。
    「なら、私も。このイタズラをするのは君だけにだ」
    顔は見えずとも少年がはにかんでいるのが分かった。




    …………少年はどちらかと言うとよく喋る方だ。自分が思う事を正直に口にする事ができる人間だ。
    しかし、普段ではありえない、今の様に静かにはにかむ時もある。そんな彼を見ていると今までにない、彼を愛おしいと言う感情が強くなってくる。この誰にも見せた事もない彼のこの顔が私だけに向けられている、そう思うとより一層と、だ。
    そして、その感情の中に良くないものも混ざっている自覚がある。
    それは……まだ今の私にはその名を知る事ができない。
    名の知らぬその感情はまだ、彼には見せたくないものだ。
    言葉を探すのが上手い彼ならすぐにこの感情にも名前を当てがってくれるのだろう。しかし、少年にこの想いを伝えるのは今の私には難しかった。

    私は……私が思うに私は、彼が思っている以上に臆病者なのかも知れない。

    ………………………
    「ハイ!ハイハイハイィ!!!ハロウィン終了!終了!!」
    「少年?」
    「撤収!!!!」
    一気に少年が立ち上がるとドカドカと足を踏み鳴らしあっという間に洗面所の方へ向かっていった。
    「寝巻き忘れた!!」
    またドタドタとこちらにやってきて寝巻きを回収して洗面所に戻って行った。

    嵐が通る様な勢いだった。

    「アオガミ!」
    いつのまにか着替え終わった少年が洗面所からひょっこり顔を出して来る。さっきまでの格好も静かにはにかんでたあの顔もなかったかの様ないつも通りの少年だった。
    「また来年もハロウィン個人戦やろ!」
    いつも通りの明るい笑み。
    「ああ、もちろんだとも」
    返事を聞いた途端、ニヒヒと嬉しそうに笑っていた。

    さっきまでの苦悩が掻き消える様な明るい笑みだった。
    本当に少年の笑みは不思議だ。時にこちらを苦悩させ、時にこちらを和やかにする。
    一つだけ、言葉を当てるのも躊躇ったが、当てはまるものがある。

    彼の笑みは私に取って魔性のものなのだ。
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    Replies from the creator

    鴨緑

    MOURNING寝たくない時にダラダラ付け足しながら書いてた読み物。アオが夜中の学校に忘れ物取りに行ったりする話。書いてる時はアオ主だと思って書いてた
    寝たくない夜の話「やっべ」
    少年が胸ポケットに手を入れたり、他のポケットや鞄を漁っている。
    「少年?」
    声をかけると焦りを含んだ様な声でこちらを見つめてきた。
    「学校に生徒手帳忘れたかも」
    「それは…」
    少年が苦笑いしながらどうしよ…どうしよ…と狼狽えながらまた鞄の中を漁っている。焦るのにも無理もない。
    縄印の寮の鍵は生徒手帳なのだ。生徒手帳に埋め込まれているICチップで寮の出入りが可能になっている。
    今は夜中の八時。訳あり、ベテルに寄った帰りなので遅めの帰りになってしまい、学校はもう門は閉じている。今から取りに行くのは不可能だ。しかし、
    「少年、安心してくれ。私なら鍵を開けられる」
    読み取り機に手帳をかざすフリをしてくれ。
    そう言い、少年に読み取り機にかざすフリをして貰う。防犯カメラにこの光景が写っている状態で私が今からやる鍵開けは少々奇怪に見える可能性があるからだ。少年が手を置いている読み取り機に手を当て、以前少年の生徒手帳のICチップから読み取った情報を送ると難なくエントランスの自動ドアは開いてくれた。合鍵でドアを開けた様な物だ。
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