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    Sakumaru_oo

    @Sakumaru_oo

    勝デク💥🥦字書き
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    Sakumaru_oo

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    「守護者達の冒険譚」
    突如始まる半精霊💥×精霊🥦の勝デク冒険者ファンタジーの冒頭です!
    森できらきらしてる精霊🥦くん書けたので満足😊
    続きます

    #勝デク
    katsudeku

    人外💥🥦夫婦の冒険者ファンタジー「ああ〜、クソ」
    ザクザクと土を踏みしめる足音は硬い。間もなく踏み下ろされる黒いブーツに慌てて小虫が逃げて行く。生い茂る草木は陽の光を透かし、辺り一面を領域のように緑に染めていた。
    ズカズカと荒々しく緑黒の地を踏みしめるのは一人の青年だ。運動機能に配慮したピタリとした黒のトップスには上半身の筋肉が浮き出ている。引き締まった上体に対し腰から皮長靴までにかけてはダルっとしたボトムスを着用し、腰には太いベルトをいくつか、無造作に巻いていた。この辺りに伝わる武芸、もしくは格闘向けの服装だ。それらと違い目立つのはその厚手のマントで、膝裏付近までの藍のそれは顔の下半分を隠していた。
    白金の髪から覗く顔は隠されてあるにも関わらず良い造形が分かる。意思の強い紅のつり目が射抜くようだった。
    乱心の彼は森の深部へ向かい、大樹へと辿り着いた。大人五人でも抱えきれない大樹は、緑ばかりのその地には珍しく、燃えるような赤の実をぶら下げている。
    美しいそれを見て、けれど青年は当てが外れたように踵を返す。
    「何処だよアイツ……」
    その時だった。
    しゃん、と鳴る鈴の音と共に、ざわざわと緑が押し寄せ、彼の行く手を阻んだ。
    「かっちゃん?」
    高い青年の声が尋ねるように響いた。
    振り返った青年が驚いたように声の主を見る。
    青年の顔を見た鈴の彼は「やっぱりかっちゃんだ」と嬉しそうに笑い、しゃん、しゃん、と音を立てながら青年に駆け寄った。
    「……出久か」
    「うん。久しぶりだね、かっちゃん」
    青年に駆け寄った鈴の彼は緑を象徴していた。
    生い茂る草のような髪は奔放に跳ね、そこにある羊の耳と角を飾っている。白い前合わせのふんわりとした服は不思議な形状をしており、袖付近の布地がふわりと風もなく浮いて、細い腕をちらちらと覗かせていた。金の首飾りに腕輪、と少ない装飾品は、彼の素朴さを慎ましく彩る。
    彼はその、森を朝露で閉じ込めたかのような大きな瞳を嬉しそうに細めて青年に尋ねた。
    「帰ってきたの?10年ぶりだね」
    「あぁ、ようやく修行が終わった」
    「大変だったね。もし良ければ話していかない?」
    それに頷くと、彼は羊の耳についた鈴をしゃんと揺らしながら歩き出した。



    そこは10年の時を経ても尚、同じ姿を保っていた。
    「……懐かしいな」
    「そうだね」
    辺りを白く背の高い石に囲まれたそこの上面には丸く切り取られた空が浮かんでいる。切り立った崖に円柱の穴が空いているその底面に二人は佇んでいた。空間には背の低い草花が咲き乱れ、踏みしめる度に花弁が舞う。
    この場所は幼い二人の隠れ家だった。

    ──森を守る僕の元に来訪者が訪れた日のことは鮮明に覚えている。
    彼は……かっちゃんは、この空間の空から落ちてきた。いや、飛び込んできた、というのが正しいのだろうか。
    幼くも勇気と自信に溢れた彼はまるで冒険者の様に、ぽっかりと空いた穴へ飛び込んだのだろう。咲き乱れた草花は彼を受止め、そしてそこで花冠を作っていた僕と鉢合わせた。
    花冠を上手く作れなかった僕に、かっちゃんは自慢げに作って見せてくれた。
    そこからはあれよあれよと共に遊ぶようになり、彼が旅立ちを迎えるまで二人は共に過ごした。

    「かっちゃん」
    上手く作れるようになった花冠を彼に被せると、お返しのように、僕のものより繊細な編み込みのなされた花冠が被せられた。
    「ふふ、どうなってんのこれ」
    「俺は常に百歩先を行くンだよ」
    「すごいや」
    彼の自慢そうな顔は昔から変わらない。
    と、白い石壁にきらりと翠が光った。続け様に彼のマントの中でも。
    その光に見覚えがあった。
    「…かっちゃん、マントの中」
    「あ?……あぁ、これか」
    彼はマントをめくり、腰ベルトに括り付けられたポーチからそれを取りだした。
    彼の手に握られていたのは緑の宝玉が埋め込まれた腕輪だった。彼がつけるには些か細いように思える。
    「それ、持ってたの」
    「たりめーだろ」
    これは別れの時に僕があげたものだ。両腕に着けていた腕輪の片方。一端の守護者である僕にはそれなりの加護がある。彼の幸運と旅の安全を祈る片割れは10年を経て傷がついていた。対して僕のは綺麗なままだ。
    「ねぇ、覚え……わぷ」
    話そうとする前に、彼は僕を押し倒した。花びらが舞い、辺りにふわりと散る。
    彼の精悍な顔が間近にあった。
    「覚えとる」
    彼は覆い隠された口元をぐいとさらけ出した。白い牙が覗く。
    「"帰ってきたら、必ずお前を嫁にとる"、だろ」
    「……覚えてたの」
    「そのために来たンだよ」
    「うそぉ」
    嬉しさに目元を滲ませる僕に、彼は口付けを落とした。



    青年──爆豪勝己は、人と守護者の混血である。
    火山の守護者の母と人間の父の馴れ初めは腐るほど聞いた。取り敢えずこの場では熱烈な恋の元に息子が生まれた、とだけにしておく。
    その勝己は恐ろしく強かった。守護者の爆破の力に、守護者が持ちえない人間の物質体を持つという特性は強力で、彼はめきめきと力を上げた。彼持ち前のプライドと自尊心も糧となり、丁度この守護者の島へ訪れていたベストジーニストという冒険者が彼を弟子にとった。冒険者にただならぬ憧れを持つ勝己は十歳のころ修行の旅に出た。
    島外の地にて、修行中に勝己は数多くの者と出会い、戦い、そして信頼出来る友を作った。長らく世話になったジーニストの元を離れる頃には、勝己はSランクの冒険者となり多くの冒険者パーティーに誘われていた。
    その仲でも長い間友人として関わってきた切島、上鳴、瀬呂の冒険者パーティーに加入することとした勝己は、その前にと一度故郷である守護者の島へ帰ったのだ。

    帰郷の理由はいくつかある。
    幼馴染を娶ること。
    受け損ねた成人の儀を執り行うこと。
    この地に残した薬剤の材料を手に入れること。
    …親に顔を見せること。
    それから、もう一つ。

    寄り添い、勝己の武勇伝に目を輝かせていた出久は、ひとしきり勝己を褒め終わると目を伏せた。
    「いいなぁ、冒険者。かっこいいな」
    昔と変わらぬようで、勝己はにやりとする。
    「来ねぇか、お前も」
    「えっ、何に?」
    「旅してえんだろ。俺の冒険者パーティーに入れてやるってんだ」
    幼い頃から冒険者に憧れる幼馴染の勧誘。
    これが帰郷の最大の目的だった。
    出久は暫し驚きに目を見開き、けれど直ぐにまた伏せた。
    「駄目だよ。僕は守護者だから、この森から出られない」
    出久はその名の通り、谷付近の森の守護者だ。守護者には意識体はあるものの物質体は無い。なのでその地から離れることは出来ないのだ。
    本来触ること、見ることすら出来ないそれを勝己が見聞きできるのは一重に守護者の血が流れているからであった。
    「んなこたぁ知っとるわ!知って対策考えた上で聞いとんだ」
    幼馴染を舐めるなよ、と言わんばかりの勝己。出久が仰天する。
    「対策なんてあるのでも、僕かっちゃんと違って修行もしてないし」
    「でももクソもねぇ!来んのか来ないんか聞いとる。何回も言わすな」
    勝己の目は真っ直ぐだ。
    出久はまたでもと言おうとして口を噤んだ。
    そうだ。この自信家の幼馴染は、やると言ったことは必ずやってのけるのだ。
    「……行く。行きたいです!」
    「うし」
    承諾は取れたとばかりに勝己は立ち上がった。一度両親のいる実家に帰るのだろう。出久が見送りにと後を追う。
    「そういえば急いでたよね。だいぶ引き止めちゃったけど大丈夫?」
    「テメェ探しとったんだわ。ハナから用事は出久だけだ」
    「ひえぇ」
    出久は頬に朱を差した。



    勝己の帰郷から三日が経った。三日の内に勝己の遅れた成人の儀が行われ、成人と認められた勝己は急ぎ足に出久の森で結婚の誓いを立てた。
    これからよろしく、と嬉しそうな出久と暫し夫婦の時を楽しみ、そして今日。

    出久の前には精巧に出来た人形が置かれていた。
    これは勝己が三日で完成させた素体だ。この森の木を彫って出来た物なので出久の体に馴染むであろうとのことだった。
    清めた水、緑玉の結晶、水晶玉など出久の体に馴染むであろう人の体の代替品も人形の傍に用意される。
    出久の受肉が行われようとしていた。
    「……行くよ、かっちゃん!」
    「おう」
    教えこんだまじないを唱える出久の体が薄く光って行く。
    この儀式は勝己が修行中に、伝説の英雄、オールマイトの文献を読み漁って得たものだ。オールマイトも元は守護者だったという。この島にも残るオールマイト伝説となると信憑性が高かった。
    だが、実際に成功するかは分からない。守護者の存在は稀有で、この島にも限られた者しか入れないため、儀式が行われたという事実は文献に残っていなかった。
    どうか、成功してくれ。
    出久の居たところは閃光のように白く光って森を照らした。
    目を閉じてしまうほど眩くなっていたその光は段々落ち着いてゆく。
    恐る恐る目を開くと、はたしてそこに出久は居た。ぺたんと裸で座り込む体には羊の角と耳は無く、人間のものになっていた。
    しばらくぺたぺたと自分の体を触った出久は呆然と勝己を見て、それから涙を流した。落ちた先でもその涙の実態は残り、土に染みを作る。
    「かっちゃん……!」
    嬉しげに立ち上がろうとした出久は、けれどどさっと倒れた。
    「出久!」
    「体、重い……」
    「ンだよビビったじゃねぇか」
    重い重いと呻く出久を「そういうモンだ」と抱き起こす。ぺたぺたと手ずから検分し、勝己はほっと息を着いた。血も通い、心臓も動いている。受肉には成功したようだ。
    だがぬか喜びはいけない。森を出られなければ意味が無いのだ、と、二人は森の境界まで来た。土の色の違うその境目で、抱き上げた出久を見る。
    「行くぞ」
    「……うん」
    勝己は一歩踏み出した。
    「……」
    「……」
    完全に森を出た出久に変化は無い。呆然と二人は顔を見合せ……それから弾けるように笑った。
    「かっちゃあん!」
    「出久!」
    「やったぁ!僕出れた!」
    「俺への感謝を忘れんじゃねぇ!」
    「ありがとかっちゃん大好き!」
    勝己は出久を抱えてくるくる回る。ラブロマンスさながらに喜んだ後、勝己は抱き上げた出久を見上げた。
    「ハハ、くっそ重ェ!」
    「ふふ、失礼!」
    ぐりぐりと出久が暖かい頬を擦り付ける。
    しばらく二人は笑いあっていた。



    出久が受肉したとの事で直ぐさま旅に出ようとした勝己の予定は挫かれた。
    曰く、冒険者になるには強くないといけないから、との事。
    「俺が旅の途中で鍛えてやる」と反論した勝己だったが、「君と君のお友達にかっこ悪いとこ見せたくないんだ。それから僕、まだかっちゃんと二人で居たいな……」という出久のおねだりによって言い含められた。
    短い二人での時間を過ごし、出久が一人で歩けるようになって、勝己は一度島を出て冒険者として経験を積み、それからまた迎えに来るという運びとなった。人の体を手に入れたため食事などが必要になった出久は爆豪家に住んでいる。
    往生際悪く今旅に出ないかと誘う勝己は「花嫁修業楽しみだな」という出久の言葉に屈し、泣く泣く島を出た。母の「やるわね出久君」と言う声は聞かなかったことにした。

    ──実は、直ぐにでも冒険へ行こうとしていたのは出久も同じであった。受肉する前はそういう流れだったし、待ち望んでいた事が起こるのなら早く行きたい。
    だが、それを無しとしたのは受肉後に彼の憧れであり伝説のオールマイトが語りかけてきたからであった。
    『あ、聞こえる?受肉した守護者の気配を感じてね。突然だけど冒険者になる気はあるかな?もし良ければ君に修行をつけたいんだけど』
    というなんとも陽気な憧れに二つ返事で了承し、予定変更、来いと渋る勝己を煙に巻いたのだった。

    ごめんねかっちゃん。出久がそう心で呟きながら手を振っていることを、勝己はまだ知らない。
    そして、半年後、満を持して迎えに行った嫁が伝説と謳われるオールマイトとお茶をしている所を発見することも、修行をつけられて恐ろしく強くなっていることも、ついでに花嫁修業の成果で料理ができるようになっていることも、勝己はまだ知らない。
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