Rain drop第一話
しとどに地面はすっかり濡れている。お気に入りの番傘をくるりと揺らしながら少女、九九は雨の日の散歩を楽しんでいた。そんな最中、道の路肩に座り込んでぐったりと項垂れてる男が傘の狭い視界に入り込んだ。白い漢服は肌色に染っている。
(こんなところに? ひと?)
辺りを見渡しても人はおらず、自分しかいないのか、とかぶりをふった。
「もし、大丈夫ですか?」
声をかけて肩を触れば予想に反して身体は酷く熱い。どうやら発熱しているようだ。このまま放置しておけば生命も危ういだろう。九九はろくに返事も出来ないでいる男の肩に手を回すとズルズルと引きづるように近所の自宅に連れ帰った。
九九は自宅につくと火鉢のそばに男を下ろした。火を灯してからぱたぱたと家の中を駆け回る。乾いた布で彼に顔に張り付いた金色の髪の毛を優しく拭ってあげれば男はそこでようやく目に光が滲んだ。
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