ログストの感想SS「私の思う幸せな香りは……そうだなあ。ミチルの部屋の薬草にレノさんの羊さんたち、フィガロ先生の医務室……それから、父さまの書庫、母さまに抱きしめてもらった時の匂い………」
ルチルがキャンドルの材料を揃えながら、懐かしそうに微笑んだ。ミチルとレノックスとフィガロの匂いというのは、シノにもわかる。父親と母親の匂いはわからないけれど、ルチルの表情から、きっと自分にとってのヒースや旦那様、奥様のような幸せな匂いなんだと思った。
「母様が亡くなった時、父様に絵本で読んでもらった神様の話を思い出したんだ。亡くなった人の魂は、天国に上るんだって。そこでは、いい香りのする花が一年中咲いていて、いつも素敵な匂いに囲まれて暮らせるんだって。その話を聞いてからずっと、花の匂いを嗅ぐたびに、今私は、父さまと母さまと同じ匂いを嗅いでるんだなあって思ってた。
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