「アバッキオ〜、もぉ帰っちゃうの?」
今日も泊まっていけばいいのにと言って腰にまとわりついてくる女を引き剥がして、アバッキオはバスルームに向かう。手早くシャワーを浴びて髪を乾かす。
昨日着ていた服はまだ女が寝そべっているベッドの足元に散乱していた。シャツを拾って軽く払って、第三ボタンまで閉める。
「次はいつ来れる?」
上目遣いの女がシーツの上で尋ねるのを尻目に、姿見でシャツにシワがないか確認する。
「……わからねぇ。また連絡する」
「ひっど〜い! そうやっていっつも全然会ってくれないじゃん!」
投げ出されていたデニムのチャックを上げ、ベルトを締めていたアバッキオの腕を女がつかむ。邪魔なことこの上ない。「しつこいぞ」と言ってアバッキオが振り払おうとした、その時 ───
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