かわいい合戦 あんずさんの前で軽率な行動はしない方がいい。思わぬ方向に話が進んでいくから。
「……ジュンくん、あんまり目かかない方がいいよ?」
「ん?……あぁ、無意識でした」
すんません、と言えば、謝ることじゃないけど……と心配そうな顔。そんな顔させたくはないけど、ちょっとだけうれしい。あんずさんがオレのこと考えてくれるのは、いつだってくすぐったくて、それでいてうれしい。
そんなことを考えていたから、バチが当たったのかもしれなかった。
「はいこれ」
「? なんすかこれ」
「髪止めるピンだよ?」
「いや、それは分かりますけど」
目の前に差し出された、かわいらしいキャラクターのついた細長いそれ。きれいな青色に塗られたそれは、目の前のあんずさんの髪の毛にも現在進行形でついている。いつもは隠されたおでこが見えていて、ちょっと幼く見えてかわいい。……けど、そうじゃなくて。
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