惚れ薬と水と麿「面白いものが入荷したのだけど」
行きつけの雑貨屋で、顔見知りの店員の男にそう話しかけられた。何度も通ううちに歳も近いせいか気が合い、なんとなく仲良くなって、こんな風にたまに新商品を教えてくれる事がある。
「面白いもの?」
「惚れ薬だってさ。興味あるか? 本物かどうか保証はしないけど」
「へぇ、惚れ薬……。今の時代にそんなものがまだ存在するとは驚いた」
「だろう? ま、中身はただの砂糖菓子っぽいけどな。買うなら安くしておくよ?」
馬鹿馬鹿しい。そもそも薬で人の気持ちを操ろうだなんて、そんなこと……面白すぎるだろう。
◆
本丸に戻り、すぐに水心子と清麿の部屋へと向かう。部屋の前で声を掛けるとふたりから入っていいと返ってきたので遠慮なく襖を開けた。
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