スケブ 舞踏会は退屈だ。狭いホールで、人の顔色を見て動かなければいけないので飽き飽きだ。反対に、海は好きだ。自由で雄大で、空の色にあわせて顔色を変える様子は見ていて飽きることはない。いつかはこの国を出て冒険に出たいと思っているが、鳳長太郎の王位継承権一位という身分がそれを許さない。
自身のフィアンセを決めるための舞踏会を抜け出し、鳳は海辺を歩いていた。自領の夜の海はなだらかで大きな波一つない様子だ。伸びをしながらゆっくりと散歩を楽しんでいると、砂浜に何か大きな魚のようなものが打ちあがっている。大きさ的にタチウオか何かだろうかと思い、駆け寄ってみるとだんだんそれは人の形のようにも見えてくる。いや、人だ。足が魚のような人が倒れている。
1691