ただいま「宍戸さん」
「なんだ? 長太郎」
「前から聞きたかったことがあります」
鳳はソファに腰かけている宍戸に神妙な面持ちで声をかけた。まるでこれから戦いに出るかのような顔で、握りこぶしを作って体に力の入った鳳に、宍戸は「まあ座れよ」と声をかける。
「あの……」
足早にソファに駆け寄ると、ボフ、と音を立てて座った鳳は、宍戸の左手をとって薬指を親指でさすりながら言った。
「宍戸さん、どうして。どうして……結婚指輪をしてくれないんですか?」
何を言い出すかと思えば。
眉尻を下げて今にも泣き出しそうな顔をして自身を見つめる鳳に、宍戸は「ハハッ」と思わず吹き出してしまった。
「わ、笑わないでください。俺、真剣なんです」
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