或るディーラー こんなのは、悪党どもの常套手段だ。そんなことは分かっていた。
洒落た彼の装いは、ゲームの場を悠然と取り仕切るディーラーのようだった。さまざまなものを包み隠す、優雅な物腰。フッキと名乗った竜人の男は、力なく崩れ落ちた主人公に向かってまっすぐに視線を投げかけていた。
「助けようとしていた相手の本当の姿が、君もようやく分かったはずでしょう」
怒涛の出来事に、頭は混乱しきっていた。そんな主人公を前に、フッキはあえて言葉を重ねてみせる。相手に、より重要な事柄を理解させるように。相手が、より絶望をおぼえ、救いを求めるように。
予測もつかなかった事態や絶体絶命の修羅場なら、これまでにも幾度も切り抜けてきた。でも今回のこれは、今までのものとはレベルが違う。今まで信じてきた前提や世界のことわり。そういったものがあっけなくひっくり返っていく。まるで、テーブルの上に並べられた、ただの紙でできたカードを一枚、ぺたりとひっくり返すように。
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