セックスしないと出られない部屋 [ 前編 ]「なんなんだこの下品な部屋は」
白い硬質な壁、塵一つない清潔な床。
皺を許さないと言わんばかりにぴんとシーツが張られたベッド。
そして壁に浮かび上がる“セックスしないと出られない部屋”の文字。ピンク色だ。
低級の任務だからと遣わされた任務。
指定地点である廃校、その1室に踏み入れた瞬間、2人はこの部屋に閉じ込められた。長い年月放置され砂ぼこりを被っていた教室があっという間に美しくも生活感のない純白の空間に変化した。
割れていた窓は消え去り、ドアも見つからない。怪異の仕業と知らなければ発狂しそうな空間だ。
「まじでヤバいじゃん…なにこれ」
今にも吐きそうな、震えた声で呟き魁斗はしゃがみ込んだ。
「え?だっておかしくね?事前調査の報告書と違くない?」
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