海ラジオから今年の最高気温が更新されたと声が聞こえた。
しかし潮風のせいかそこまでの暑さは感じない。じわりと汗は滲むが、風がそれらをさらってゆく。
昼もとうに過ぎ、時刻は17時を回っていたせいか普段は人で溢れかえっているであろう砂浜に海水浴客の姿はまばらだった。
「うわっ海めっちゃ久しぶり!」
大袈裟に声を上げ、ルカを見れば「俺もだ」と零れ落ちるような呟き。
紫色の瞳は波に釘付けだ。
「もう17時なのにまだ明るいのな」
「ああ、けど直に暗くなる…行こう!」
パラソルやシートはない。
任務の帰りに海が見えたから寄ったので、荷物と言えばスマホと怪具ホルダー、小銭入れくらいだ。
ルカの足が先に海へと走り出す。
「待てよ!」
言いながら、スマホをポケットの奥に押し込み、後を追う。
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