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    ふう。

    @huu_ILO

    アカウントを作ってしまいました
    小説とか上げられたらな〜と思います。
    類司大好き!司最推し!よろしくお願いします!

    類司/成人済

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    類司ワンライより
    演目『演説』『メイク』
    美丈夫の役を演じる🌟が書きたかった

    「劇場の皆さんにお知らせします。間もなく劇団△△による秋公演、○○の公演が始まります。席をお立ちになっているお客様はお席にお戻りください。上演中はスマートフォンなど音の出る機器の電源はお切りいただき………………」



    劇場に鳴り響くアナウンスに、類は開演間近の空気を感じるために、そっと目を閉じた。客席からはザワザワとお客さんたちの声が聞こえるが、舞台袖では開演前の独特な緊張感が漂っている。今日は1ヶ月近く稽古を重ねてきた舞台の初日公演の日である。有難いお話を頂いてから、この1ヶ月近く、毎日のように稽古を重ね、劇団員の人たちとより良い舞台を作ろうと試行錯誤してきた。


    類はそっと目を開く。密かに周りにいる劇団員たちや裏方さんたちの顔を見れば、皆緊張感の中で、それでも幕が上がるのを今か今かと待っているのが見て取れた。その気持ちは類も同じである。幕が上がった瞬間のお客さんの反応、これから起こる数々の展開に彼らはどんな反応をくれるだろうか。舞台初日、幕が上がるこの瞬間にしかない高揚感を類も感じていた。


    舞台の中央に目を向ければ、主演である彼は集中しているのだろう、微動だにせずそこに立っている。ここからでは距離があり、舞台上が暗いこともあって、彼の顔はよく見えない。それでも類はこの瞬間、自分と同じようにこれまでの稽古を思い起こし、役と向き合い、寄り添ってきた一つ一つの欠片を大切に反芻しているであろう司を舞台袖で見るこの瞬間が一等好きだった。



    開演の告げるブザーが劇場内に鳴り響く。先程までザワザワとしていた客席はシーンと静まり返り、お客さんの緊張と期待も伝わってくるようだ。劇場内に流れる大きな音楽に類の高揚感は高まっていく。舞台中央の司の顔は相変わらず見えないが、纏う雰囲気が変わったのを感じ、類は不自然に口元に笑みを浮かべた。普段の司を知っている者ならば、いっそゾクリと不気味さすら感じさせるほどの変わり身。けれど類にとっては司の輝きの欠片を間近で感じられる瞬間でもあった。類自身もゾクゾクとした畏怖にも近い感情を抱きながら司を見る。舞台袖が暗くて良かった。類の心酔しきった顔はきっと傍から見れば開演直前にする顔ではないのだから。



    ああ、この瞬間が好きだ。やっぱり舞台の上にいる司くんは一等輝いて見える。君の輝きを今日来てくれた全てのお客さんの目に焼き付けよう。そうしてもっともっと高みへと……。



    幕が開けば、すぐに司のセリフだ。何十回と繰り返し、頭に染み付いた段取りを類は再び反芻する。類の出番はもう少し先だ。ここに居れば、開演後すぐに出番がある劇団員たちの邪魔になってしまうだろう。司の輝きを間近で見れないのは名残惜しいが、一役者として類もこの後の出番に備えて集中しなければならない。類は司の姿を尻目に舞台裏に去っていった。





    舞台裏の控え室。


    類はスタッフさんに軽くメイクをしてもらいながら、モニターで舞台上を見ていた。その真剣な眼差しは、普段は自ら演出をつけることもある演出家としての眼差しに見えただろうか。しかし実際のところ、類は舞台上で煌びやかに舞う司を目で追っていたのであった。



    舞台は江戸時代末期。
    倒幕の気運が高まった動乱の時代に幕府転覆を試みた一人の見目麗しい男とそのお付の剣士の物語。


    司の役は己の美貌を武器に、仲間を従え、幕府転覆を企てる美丈夫という設定の役である。そして類は、そんな司が演じる美丈夫な男に惚れ込み、共に幕府転覆を約束し、お付の剣士となる江戸一番の剣技を持った男という役を演じる。司の役は己の美貌だけで仲間を従えていくため、美丈夫という設定に説得力を持たせなければならない難しい役どころだ。もちろん、司は類の目から見ても整った顔をしているとは思うが、美貌だけで幕府転覆を企てるに足る男だとお客さん全員に思わせるには今一つ迫力に欠ける。司も類も共にオファーを受けた身だが、稽古では司も美丈夫という設定をどのように表現するのか思い悩み、思うように演じることが出来ていなかったことを思い出す。それでも司は最後の最後まで己の役を追求していた。類はこれまでの稽古を思い出し、そして再び画面に映る司を見て、目を細める。類は思わず感嘆のため息を漏らしてしまった。司くんならやってくれるだろうとは思っていたが、まさかここまでとは。



    舞台中央に一人の男が立っている。スポットライトは彼一人を照らし出し、観客の目線は舞台中央でたった一人立つ男に釘付けになる。白を基調とした衣装に所々アクセントとして混ざる様々な明るい色の布は遠目からでも目を引く華やかさだ。ふとどこからか鈴の音が鳴り響くと同時に男はスっと目を開いた。目尻に印象的な橙色を乗せた目元はスっと細められ、鮮やかな朱色の口元はふわりと笑みを浮かべる。たったそれだけなのに不思議と色気を纏わせる男に観客はどんな感情を抱いただろうか。シャンシャンと鳴り続けている鈴の音のリズムが少しずつ早くなっていき、一際大きく音が鳴ったところで、突然パッと照明が舞台全体を照らし出した。舞台中央に立つ男の後ろに鎮座する大きな紅葉の木に、その周りでは若い男たちが赤や橙色に染まった紅葉を男の頭上に振らせている。彼らは皆うっとりとした表情で男を見つめている。ハラハラと頭上に振る紅葉や、それを降らせる男たちには目もくれず、男は紅葉の木を見上げ、目を細めてほうっと息を吐いた。


    「ああ、この世の全てのものは俺の美しさを引き立たせるためにあるのだろう」


    愉快愉快と勝気に眉を吊り上げた男は、腹の底から出たような低い声で笑い、言葉を続ける。


    「今年も見事に色付いたな。その美しさも俺の美しさの養分となるのだ。せっかく俺のために綺麗に色付いてくれたんだ。舞を披露してやってもいいだろう」


    男の言葉と共に流れ出した音楽に合わせ、男は紅葉のようにひらりひらりと舞台上を舞い踊る。踊りに合わせて白装束がひらりひらりとなびく。音楽に合わせ歌う声は、激しい動きを感じさせないほど安定していて、力強く観客席まで届いていた。



    うん、掴みは上々だね。さすがは司くん、といったところかな。役に入っている、というよりも役に"なっている"と言った方が正しいだろう。ひらひらと降り注ぐ紅葉の中心で舞い踊る"彼"は綺麗を通り越して、いっそ神々しさすら感じさせる。お客さんの視線が彼に釘付けになっている空気を映像越しですら感じるのだから、生で見た迫力はきっと言葉に表せないほどなのだろう。決して美丈夫を演じるために過剰な演技をしているわけではない。むしろ逆だ。己の美貌に説得力を持たせるために、司が悩みに悩んで最終的に出した結論は、「盛らない」ことだった。最初の頃は発声を女性らしい儚い声にしてみたり、メイクを濃くしてみたりしていたが、どれも監督にはしっくりこなかったのだ。それもそのはず、演じている司自身が自身の演技に方向性を見いだせていなかったのである。今回の役を作り上げるため、片っ端から美人だと感じる人をインプットし、自分の中に落とし込んだ司は見た目で見せるのではなく、中身で魅せる方向性に舵を切った。その結果、メイクは目尻のオレンジ色のアイシャドウと、朱色のリップのみという司本来の力強さをそのまま色濃く出せるシンプルなものに、声も司の声からはほとんど変えず低い男らしい声のままだ。しかし司の表情は普段の司の表情とはまるで違う。司本来の勝気な表情の中に、どこか凄艶な色気を漂わせ、普段の司よりも大人びて感じさせるのだ。


    類のメイクはとっくに終わり、メイクさんはいつの間にかどこかへ消えてしまったが、画面から顔を動かすことが出来ずに、類は熱を持った瞳で彼をずっと見つめていた。これから来る類の役が司の役と初めて出会うシーンのことを考え、類はゾクッと身震いをする。恐怖からではなく、興奮からである。ああ、はやく"彼"に会いたい。台本は全て頭に入れているが、彼を目の前で見た自分がどんな感情を抱くのか、類はまるで想像が出来なかった。





    場面は切り替わり、類はいよいよ"彼"と対峙していた。


    近頃見目麗しい男と、腕の立つ男が幕府勢を斬っているとの噂が立ち、情報を聞き、調査をしていた幕府側の剣士である男が、町で見かけた見目麗しい男に話しかけようとしたところ、何処かから現れた男に斬り掛かられたのである。突然斬りかかってきた男の後ろには白装束を着た美しい男の姿があった。この付近では初めて見かけるその美しい男に類演じる剣士は気を取られ、危うく斬られるかというところで、奥で黙って見ていた男の空気を切るような声で、斬り掛かってきた男の動きが止まった。


    動きもセリフも全て台本通りだ。稽古中の何十回に加えて、司とも通しで何度も練習した。流れは完璧に頭に入っているのに、稽古とは違う緊張感が体を包む。なによりも、目の前で刀を突きつけている男の後ろに佇んでいる司のはずの男を司と認識することが出来ず、類はどこかふわふわと地に足着かぬ状態で舞台上に立っていた。


    彼の一声で刀をこちらに突きつけていた男は舞台袖へとはけていった。舞台上にいるのは類と"彼"のただ二人だけだ。観客が自分たちに注目していることを意識しながら、類は頭の中にある台本のセリフをなぞる。


    「こんなことをして、一体何のつもりですか?」
    「何のつもり……か。面白い。お前は腕がたつようだ。特別に俺直々に教えてやろう」


    ここから先は彼が倒幕を企て、類演じる剣士の腕を見込み、仲間として引き連れようとする彼の演説シーンだ。司と何度も何度も練習したシーン。セリフも間も完璧に頭に入っている。頭の中で台本を追いながら、やはり司のようでいて司ではない彼の動く口元を見つめる。何となく目を合わせることは出来なかった。


    動きを交えながら語る彼の語り口調は朗々としていて、重苦しくはないのに、どこか口を挟めないような緊張感が辺りに漂っていた。長い演説セリフをよどみなく言い切った彼は類に視線を無理やり合わせ、勝ち誇ったような顔に凄艶な笑みを浮かべ、一度言葉を切った。彼と見つめ合うのも束の間、一歩類に近づいた彼が下から類の顔を見上げる。キリッと吊り上がった眉毛に、微笑を湛えた口元が妙に類の心臓をくすぐった。


    「俺についてこい。お前に世界を見せてやる」
    「あなたが?まさか、ご冗談を。丸腰のあなたに何が出来るって言うんですか?」
    「丸腰ではない。俺にはこの美貌がある」
    「…………フン。美貌で幕府を転覆しようだなんて、とんだお馬鹿がいたものですね」
    「馬鹿だと思うなら試してみるか?」


    近頃の幕府の扱いにうんざりしていた類演じる剣士は甘い響きを持つ彼の言葉に一瞬動揺するが、目の前の自分よりも力が無さそうな男の突拍子もない言葉に呆れて言葉も出ない。このまま幕府に歯向かう反逆者として捉えれば、自分の扱いも少しは良くなるはずであった。そう出来なかったのは、目の前の自分の目線の下にいる彼がクラリとしてしまうほどの色気を醸し出して顔を近づけたからである。


    目線の下の彼は勝ち誇った目から一瞬にしてとろりと溶けたような目で類を見つめ、背伸びをして類の口元に顔を近づける。彼の白装束の袖の部分を、類と彼の顔を観客席から覆い隠すように上げる。観客の息を飲む音がどこか遠くの音のように聞こえた。


    キスされる……!


    そう思ったのも束の間、彼の口元は類の口元のギリギリのところで止まった。それもそのはずだ。台本にはキスをする"フリ"をすると書いてあったはず。台本がボロボロになるくらい読み返して、台本の一言一句が頭に入っていたはずだったのに。僕は今、一瞬これが演技だということを忘れていた?目の前の彼に、いや、司くんに食われそうになったのか?


    観客からは見えていないとはいえ、律儀に目を閉じていた彼はそっと目を開く。その瞳はまるで本当にキスをしたかのように甘く蕩けている。類はゾクリと背筋を這い上がる何かを感じた。なるほど、やはり目の前の司は、司でいて、司ではない。



    面白い。さすがは司くんだ!いつもいつも僕の想像を超えてくる!



    白装束の袖を降ろして見えた類の心酔しきった顔は、果たして役そのもののの表情だっただろうか。司の演技に食われかけ、うっとりと司を見つめる類のセリフの間を埋めるように司がアドリブを入れた。


    「どうした?俺に見惚れて声も出せぬか?」
    「…………なるほど。どうやらあなたにしてやられたようですね。良いでしょう。ちょうど幕府の犬扱いにもうんざりしていたところです。あなたの剣士となりましょう」


    類の言葉に彼は満足そうに再び勝気な笑みを浮かべた。類はもはや観客を意識していなかった。司の演技が地に足が着いていなかった類を地上に引き戻す。


    ああ、楽しい!なんて楽しいんだろう!司が役に深くハマり込めばハマり込むほど、類も役にハマリ込み、役と同じ気持ちになって司を見つめていた。





    「類!」
    「司くん」


    終演後。
    類の楽屋の前で、今日の舞台を見に来ていたえむと寧々と話していたところに司の声が聞こえ、類はそちらに意識を向けた。司がこちらに向かって近づいてくるのが見える。司は衣装こそ脱いでいるものの、メイクはまだ落としていないため、さっきまでの凄艶な司と重なり、類は何故か少し気まずくなり、司から目を逸らしてしまった。


    「類!!それにえむと寧々も!来てくれたんだな!!」
    「今日スケジュール二人とも合いそうだから行くねって連絡してたでしょ。それにしても司、すごかったね」
    「司くん、すっごく大人っぽくてドキドキしちゃった〜!類くんもすっごくかっこよかったよ!」
    「フフ、ありがとう、えむくん」
    「ハーハッハッハッ!当然だ!どんな役でも演じてこそ未来のスター!この天馬司!また未来のスターに向けて一歩成長してしまったということだ!!」


    ビシッとポーズを決めた司に、「うわ、褒めなければ良かった」なんて言う寧々を見て、いつも通りの司に類はどこか安心した気持ちになっていた。


    やっぱり司くんはこうでなくちゃね。先程までの司くんは綺麗だったけれど、なぜだか胸の辺りがムズムズして、これが普段からだと思うと僕の身がもたなさそうだ。


    まぁこれから約1ヶ月。ほぼ毎日、舞台上では"彼"と会うことになるのだけれど。そう思いながら類はえむや寧々と楽しそうに会話している司を見つめる。今は司のメイクをいたく気に入ったらしい寧々が写真を撮らせて欲しいと司にお願いして、それを快く了承した司によって様々な決めポーズ撮影大会が開かれているところだった。数時間とはいえ、いつもとは雰囲気の違う司を見た類は、こんな日常も愛おしく感じられながら、会話の中に混ざっていった。


    「ちょっと司、動かないで。顔がブレる」
    「顔!?オレの渾身のカッコイイポーズは撮っていないのか!?」
    「わー、司くんのお目目キラキラだね〜!」
    「それはメイクをしてもらって……って、えむ!顔をドアップで撮るんじゃなーい!せっかくのオレのどの方向からでも映えるカッコイイポーズが……!って、類はさっきから何をしてるんだ……?」
    「連写してるんだよ?ほら司くん、0.01秒毎にポーズを決めるんだ!君なら出来る!」
    「なにっ!?うおおおおおっ!どんな要望にも応えてみせるのが未来のスター!どうだ、類!完璧だろう!!」
    「ぷっ、あはは!司、めっちゃ半目になってるよ」
    「なに〜〜〜!?オレとしたことが〜〜〜!」


    類の無茶ぶりに無謀にも応えようとした結果、頭を抱えている司を見て、類も寧々とえむと一緒に笑う。学生時代よりも会う時間は減ってしまったが、みんなと過ごすこんな時間が類にとってかけがえのないものであることは変わりない。さっきまで役を演じていた司が頭の奥にチラついていたが、それもすっかり無くなって、類はいつも通りの百面相を見せる司に頬が緩む。先程までの司とのギャップが大きいからだろうか、いつも通りの司が愛おしく感じるのだった。





    久しぶりにワンダーランズ×ショウタイムのみんなとほんの一時の楽しい時間を過ごし、この後ご飯に行く約束も取り付けたところで、寧々とえむとは解散して、自分の楽屋に戻ろうとしたところで、司が類を引き止めた。


    「類!今日の公演、すごく良かったな!」
    「ああ、そうだね。僕も司くんと同じ気持ちだよ」


    目を細めて類は司に答える。嘘偽りのない本心だ。


    「無事に何事もなく初日の幕が開いて良かった」
    「フフ、これからまだ1ヶ月もあるんだ。感慨にふけるのは早いよ、司くん。まぁ、司くんは役を掴むのに苦戦していたみたいだからね。そう思う気持ちもひとしおなのかもしれない」
    「ああ、そうだな……。なぁ、類。一つ聞きたいことがあるんだが」
    「……どうしたんだい?」


    さっきまでニコニコとしていた司が急に真剣な顔になり、類の目を見つめる。身長差もあり、司が類を見上げる形になり、先ほどのキスをされるのかと勘違いしてしまった時の状況と奇しくも重なってしまい、類は急に心臓が早鐘を打つのを感じる。なんだろう、今日の司くんの演技を見てから、ずっと胸の辺りが変な感じだな……。


    「その……だな……。類の役から見て、オレの役はどうだった?」


    司がもじもじとほんの少し顔を赤らめながら聞くので、類も釣られて顔が赤くなってしまう。類は自分がいつもとは違うことを少しずつ自覚しだしていた。


    「どうって……。うーん……。改めて言われると難しいね……」
    「類の役はオレの役に惚れ込んで仲間になるという設定だろう!?準主役だしな!類の率直な感想が聞きたいんだ!!」


    どう答えればいいのか考えても良い回答が思い浮かばない。その上、司に真っ直ぐ目を見つめられれば、これ以上考える時間を伸ばすのも良くないだろう。さっきよりも司くんの顔が赤くなっているような気がするのは気のせいだろうか?そう思いながら類は頭の中に思い浮かんだことをそのまま口に出してしまった。


    「感想として正しいのかは分からないけれど、綺麗だったと思うよ」


    言い終わってから類はしまったと先程の言葉を後悔する。ここで司の言う「どうだった」とは恐らく演技力の話だったのだろう。僕は一体何を口走っているんだ……。そう思っても口から出た言葉は消すことができない。何となく顔が赤くなったような心地がしながら、司の顔を見れば、司がぽっと顔を赤らめ「そうか……」と普段の司からは考えられないほど小さく呟いたので、類は呆気にとられてしまった。


    「その……それはつまり、惚れた、ということか?」
    「……え?…………まぁ、惚れた……のかな?」
    「そ、そうか!それなら良いんだ!それでは!オレも楽屋に戻ってメイクを落としてくる!今日の夜ご飯が楽しみだな!」


    たったったっと足早に去っていってしまった司に「何が良かったんだい?」とは聞くことが出来ずに、類は呆然とその場に立ち尽くす。去り際の司の顔が今度こそ赤くなっていることに気づいてしまい、類にも移ったのだろうか、顔が熱くなっているのを自覚する。もうさっきまでの演技をしている司ではないのに、胸がムズムズするこの感覚に、類は何気ない日常が変わり始めたことを自覚して、大きく深呼吸をする。


    まずはこの感情の正体が一体何なのか、突き止めなくては。これから約1ヶ月間。ほぼ毎日司くんと一緒にいるわけだけど。





    1ヶ月とは言わず、すぐにこの感情の正体に気づいた類が本番中に司に本気でキスをして、怒られたとか怒られていないとか。この二人が1ヶ月後にどうなっているのかは神のみぞ知る。
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    Replies from the creator

    ふう。

    DONE🎈🌟ワンライより
    演目『不安』

    不安で色々考えすぎる🎈とそんな🎈を無自覚に包み込む🌟の話。
    ※未来軸&同棲
    ※付き合ってる
    吐き出したため息が白くなるほどの寒空の下、時刻は夜の23時を少し過ぎた頃。きらびやかなネオンとは対称的に、僕はどんよりと暗い顔をしながら夜道を歩いていた。こんな時間だから僕以外に歩いている人もいなくて、僕の暗い思考は誰に気づかれることもなく加速していく。いつもならすぐに僕の変化に気づいてくれるはずの仲間であり恋人は、今日ばかりは僕がこうして悩むきっかけだった。


    悪いのは僕だ。行為の最中、盛り上がりすぎてしまった僕は司くんが静止の声を上げていたにも関わらず、ついやりすぎてしまったのだ。僕の悪い癖。司くんへの好きが溢れすぎると止まれなくなってしまうのだ。今までも何回もこういうことはあった。そしてその度に優しい司くんに許してもらっていた。僕は優しい司くんに甘えてばかりじゃダメだったのに。さすがの司くんも今日は我慢ならなかったらしく、息も絶え絶えに僕を睨みながら「コンビニの1番高いアイスを買ってこないと許さないからな!」と怒られてしまった。ほっぺをぷくっと膨らませながら涙目で僕を睨む司くんがかわいくて、思わずキスをしようとしてしまったのも司くんの怒りに火を注いでしまったんだと思う。明確にキスを拒絶された。別になんてことはない恋人同士のよくある一場面だ。だけどそれが思いのほか僕の心につっかえてしまったらしく。後悔と罪悪感でいっぱいになりながらコートを羽織り、財布とスマホだけを持って外へ出た。司くんの顔は見れなかった。
    4013

    ふう。

    DONEもともと類司ワンライ用に書いてたけど長くなってしまったので……!
    I fall in love with you again and again.「つ、司くん……」
    「るい……」

    司くんが僕をどこかとろんとした目つきで見つめている。司くんのシャツはいつの間にかはだけていて、僕の部屋のソファに隣合って座っていたはずの僕と司くんの距離は先ほどよりも近くなっていた。僕の手は僕と司くんの間を中途半端にさまよっている。一体どうしてこんなことになったんだっけ……?


    数時間前。
    今日のワンダーランズ×ショウタイムでの練習が終わり解散になった後、僕と司くんはお互いまだまだ話し足りなかったため、練習後に僕の家に行くことになった。司くんが僕の家に来てからは今日の練習の振り返りをしたり、僕が考えたショーの演出を司くんに聞いてもらったり、お互いの好きなショーの話をしたりといつもと変わらない過ごし方をしていたはずだ。司くんと話していると時間が過ぎるのはあっという間で、ふと時計を見ればそろそろ司くんが帰らなければいけないはずの時間になっていた。名残惜しいけれど司くんの帰りが遅くなってしまっては司くんのご家族の方も心配するだろう。先程まで話題の中心だった過去の名作のショーを頭の中で思い起こしているのか、どこか満ち足りた顔をしている司くんに僕はそっと声をかけた。
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