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    ふう。

    @huu_ILO

    アカウントを作ってしまいました
    小説とか上げられたらな〜と思います。
    類司大好き!司最推し!よろしくお願いします!

    類司/成人済

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    ふう。

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    もともと類司ワンライ用に書いてたけど長くなってしまったので……!

    I fall in love with you again and again.「つ、司くん……」
    「るい……」

    司くんが僕をどこかとろんとした目つきで見つめている。司くんのシャツはいつの間にかはだけていて、僕の部屋のソファに隣合って座っていたはずの僕と司くんの距離は先ほどよりも近くなっていた。僕の手は僕と司くんの間を中途半端にさまよっている。一体どうしてこんなことになったんだっけ……?


    数時間前。
    今日のワンダーランズ×ショウタイムでの練習が終わり解散になった後、僕と司くんはお互いまだまだ話し足りなかったため、練習後に僕の家に行くことになった。司くんが僕の家に来てからは今日の練習の振り返りをしたり、僕が考えたショーの演出を司くんに聞いてもらったり、お互いの好きなショーの話をしたりといつもと変わらない過ごし方をしていたはずだ。司くんと話していると時間が過ぎるのはあっという間で、ふと時計を見ればそろそろ司くんが帰らなければいけないはずの時間になっていた。名残惜しいけれど司くんの帰りが遅くなってしまっては司くんのご家族の方も心配するだろう。先程まで話題の中心だった過去の名作のショーを頭の中で思い起こしているのか、どこか満ち足りた顔をしている司くんに僕はそっと声をかけた。

    「司くん、時計を見て。そろそろ帰ったほうがいいんじゃないかな」
    「ん?ああ、もうこんな時間なのか……」

    僕の声掛けに少し残念そうな顔をする司くんを引き止めたい気持ちに駆られる。本当は僕だってまだまだ司くんと一緒にいたい。司くんと一緒にいると話したいことも、やりたいことも無限に湧き出てくるのだから。けれど時間はどんな人にも平等だ。そして充実した時間を過ごしている人ほど時の流れは早く感じるものだ。僕は司くんの寂しそうな横顔をそっと見つめた。

    今日も何も出来なかったな……。

    ショー以外のことで何か司くんの気を引くことが出来たらと思っていたけれど。どうやら僕は自分が思うよりも恋愛に関しては奥手なほうらしい。


    突然だが、僕と司くんはつい一ヶ月ほど前に晴れて恋人同士となった。お互いが同じ気持ちだったと知った時の感情は言葉に表すことができない。とにかく僕が今まで生きてきた中で体験したことのない感情で埋め尽くされたのだ。しかしこれまで恋愛どころかまともな人間関係すら築けていなかった僕にとって、当然恋人としての関係性の進め方など分かるわけもなく。この一ヶ月、僕は司くんとまともな恋人同士の触れ合いが出来ていなかった。もちろん、手を繋いだり、軽いキスをしたりはしている。しかし僕と同じように司くんも恋愛方面はからっきしらしく、そのどれもが軽い触れ合いで終わってしまい、お互い恥ずかしさのあまり気を紛らわそうとすぐに違う話題に方向転換してしまうのだ。さすがの僕もこれには焦りが生まれ始めていた。一般的な恋人同士ならば、一ヶ月もあれば恋愛のABCの『C』までは行かずとも、『B』くらいは行ってもいいものだろう。それがどうだ……僕と司くんは恋愛のABCの『A』すらまともに出来ていないのだ。誤解されないように言っておくと、僕は決して性欲がないわけではない。僕にも一般的な男性らしい性欲はある。司くんとは気持ちだけではなく、キスやもっとその先……肉体的な繋がりもほしいと思っている。しかし思ってはいても実際にできるかというとまた別の話なわけで。僕はこの一ヶ月、司くんとの恋人関係を先に進ませたいという思うだけで、実際は司くんのいつもと変わらない無邪気な笑顔を前にして何一つ手が出せないでいた。司くんはそういった方面には疎いみたいだし、今はまだ焦らなくていい、お互いの気持ちは確かめられているのだから……。そう自分に言い訳をして……。


    今日もいつも通り、恋人というよりかは友人としての距離感で過ごしてそのまま解散になるはずだった。しかし、いつもなら僕が声をかければ素直に帰る司くんが、今日はどういうわけか思いつめたような顔をしながらその場から動こうとしない。僕はいつもとは違う司くんが少し心配になって司くんにそっと話しかけた。

    「司くん?どうかしたのかい?」
    「…………」

    司くんは僕の声掛けにも反応せず、依然として思いつめたような表情で膝の上で握りしめていた拳をじっと見つめていた。本当に一体どうしたというんだろう。もしかして司くんも僕とまだ一緒にいたいと思ってくれているのだろうか。そうだとしたらこの上ない幸せだけれど。しかしさすがに黙ったままの司くんもそれはそれでやはり心配だ。僕はソファに座ったまま、先ほどよりも少し司くんに近づいて優しい声で司くんに話しかけた。

    「司くん?」
    「類……」

    突然、司くんが体を僕のほうに向けて、僕の目をじっと見つめてきた。司くんの思いつめたような、でも固い意思があるような琥珀色の瞳と目が合ってしまい、僕は司くんの瞳に吸い込まれるように司くんの瞳から目を逸らせなくなり、先ほどまで言おうとしたことを忘れて司くんの目をじっと見つめ返してしまう。そのままお互い無言でじっと見つめあっていれば、どことなく司くんの雰囲気がいつもとは違うことに気がつき、僕は今更ながらにわかに緊張しだした。その時、膝の上で握っていた司くんの手が突然動き、司くんが来ていたシャツの一番上のボタンをプチと外した。目の前で起きた突然の出来事に僕は理解が追いつかず、呆然と司くんの手の動きを目で追うことしかできない。そうして僕が何も言えないでいると、司くんは無言のまま二つ目のボタン、三つ目のボタンと一つ一つプチプチとボタンを外していった。司くんのシャツのボタンが真ん中辺りまで外されたところで、僕はようやく司くんの手首を掴んでそれを止めた。心臓はバクバクとうるさく脈動しているし、手汗もかいている。今の僕はきっとひどく滑稽な顔をしているんだろう。僕が手首を掴んだ瞬間、司くんの瞳が揺れたような気がしたが僕にはそれを気にかけるほどの余裕はなかった。

    「ちょっと、司くん」
    「…………」

    僕の声にも反応せず、司くんは無言のままボタンを外そうとして止まっている手元を見つめている。僕は中途半端に覗き見える司くんの胸元には目を向けないように必死に意識しながら再び司くんに声をかけた。

    「司くん、なにしてるの」
    「類、止めないでくれ」

    司くんが顔を上げて僕の目を見つめる。その表情があまりにも真剣で、僕は思わず掴んでいた司くんの手首を離してしまった。司くんの『止めるな』という意思を感じとった僕はあっという間に二の句が告げなくなってしまう。僕に掴まれていた手首を離され自由になった司くんは、再び一つ一つ上からシャツのボタンを外す行為を再開し始めていた。二の句を告げないまま、僕は呆然と司くんの指の動きを目で追っていた。僕の心臓はうるさいくらいに脈打っていて、もはや呼吸が苦しいほどだ。僕と司くんの間にプチプチと司くんがシャツのボタンを一つずつ外していく音が落ちる。

    「つ、司くん……」
    「るい……」

    シャツのボタンを全て外した司くんが僕の名前を呼びながら僕と目を合わせた。司くんの琥珀色の瞳はどこかとろんとしていて、普段の司くんからは想像もつかないようなその表情に僕は思わず息を飲んでしまった。僕の手は中途半端に僕と司くんの間をさまよって行き場をなくしている。僕が司くんの瞳から目を逸らせないまま黙っていると、司くんが僕に目線を合わせたままソファの上に片手をついて僕のほうに体を一歩近づけてきた。司くんが体重をかけたことでソファが少し沈み込んだ感覚をどこか他人事のように感じながら、少し体を持ち上げた司くんの動きに連動するように僕も司くんの瞳を見上げる形になる。目の前の出来事に「これはいっそ夢なのではないか?」と現実味のないことを考えていたが、司くんが着ていたシャツが司くんが少し立ち上がったことによってはだけておもむろに視界に司くんの胸元が入ってしまい、夢の世界に逃げようとした僕の現実逃避は叶わなかった。僕は慌てて司くんから目を逸らす。普段司くんが着替えている姿なんて散々見てきたけれど、今日の司くんはいつもとは雰囲気が違うのだ。僕は必死に理性を働かせようと僕の中の獣と闘っていた。


    司くんが僕との距離を詰めたことによって僕と司くんはお互いの膝がくっつくほどの距離になってしまった。相変わらずバクバクと脈打つ心臓の鼓動は収まる気配がない。司くんが何も言わないのでおそるおそるもう一度司くんのほうを見れば相変わらずシャツははだけたままで、その姿に再び僕の中の獣が暴れ出す気配がする。しかし司くんの顔を見れば先ほどよりも顔を赤くして僕を見ているものだから、僕の脳内はいよいよ大忙しだった。処理落ちしかけた脳内をなんとか整理したくて、僕は無理やり喉の奥から絞り出すようにして脳内の言葉を形にした。

    「司くん、本当にどうしたんだい……?どうしてそんなことをしているのかな……?」

    僕の言葉に、先ほどまで顔を赤く染めて僕をとろんとした目つきで見つめていた司くんは一瞬ムッとした顔をして突然立ち上がったかと思えば、僕と向かい合わせになるように僕の膝の上に乗っかってきた。僕の脳内はいよいよパニックで考える機能が働かなくなる。本能として備わっているブレーキ機能が『今ここで欲望に負けて手を出してしまえば司くんからの信頼を失うぞ』と警告していた。しかし僕が理性の瀬戸際で揺れていることなどお構い無しに司くんは僕の首元に手をまわし、僕の後頭部の髪の毛をサラリととかしてくる。その手つきは大切なものを撫でているように優しいものだったが、それが逆にいじらしくてじれったい。


    僕は八方塞がりだった。
    目線を上に上げれば顔を赤くした司くんの顔が、正面を見ればはだけた司くんの胸元が見える。司くんから顔を逸らしたいのに、どういうわけか司くんから目線を外せないためそれも叶わない。ただこの状況は色々な意味でまずいと僕の本能が告げていた。僕は焦りを含ませたまま、再び口を開く。音になった声は僕が思っていたよりも低くなってしまった。きっと表情も怖い顔になってしまっているんだろう。

    「司くん、冗談ならそれくらいにしておかないかい?」

    僕の声や表情、言葉を聞いた司くんは顔をかあっと赤くさせ、瞳にうっすらと涙の膜が張った。しばらくその状態のまま固まっているのであわや泣きだすかと先ほどとは違う意味で焦りが生まれたが、司くんは突然首をブンブンと横に振ったあと再び顔をムッとさせ僕に視線を合わせ口を開いた。その声は毅然としていて、普段の司くんの意志の強さを感じる真っ直ぐな力強い声と重なる。

    「……冗談だと思うか?オレは本気だぞ」

    司くんの言葉に僕は目眩がするような心地を覚えていた。まったくこの子は、一体どこでこういったことを覚えてきたのだろうか。それも問いただしたいけれど、今はそんなことよりも目の前の司くんだ。どうやら本当に意思は固いらしく、司くんは相変わらず顔を赤くさせながら僕のことをじっと見つめていた。


    僕は数秒思案する。目の前の状況に頭はまるで働かないが、それでもここで考えることをやめて司くんに手を出してしまえば僕は理性を失った獣と同じだ。そんなのは嫌だ。僕は司くんと対等な関係でいたい。

    目の前の司くんのはだけたシャツ、顔を赤らめた表情、ムッとしながらも僕を見つめている顔にはどこか期待の色が滲んでいる。ここまで全てが揃いすぎている状況で司くんが何をしたいのか察することができないほど僕は恋愛に疎いわけではない。

    これはつまり、ことわざで言うところの『据え膳食わぬは男の恥』……というやつなんだろう。しかし本当にそれを信じて司くんに手を出してしまっていいのだろうか。いかにも育ちが良いのだろう司くんのことだ。色々なことをすっとばして行為に及んでしまっては怖がらせてしまう可能性がある。それに司くんがそういった知識を持っているのかも甚だ疑問である。思い起こされるのは今までの僕の司くんに対するアプローチの数々。司くんに意識してもらおうとあの手この手を試したが、司くんはどんな時でも威勢が良くて、無邪気で、優しくて……とにかく司くんにどんなアプローチをしても今までは天然箱入り娘ならぬ箱入り息子の司くんに気づかれもしないまま僕の好意は無惨にも消え去っていた。恋人同士になってからは多少は意識してくれるようになったらしく、恋人らしい触れ合いを求めれば恥ずかしがっている様子も見せている。しかしやはり司くんが僕以上にこういったことに疎いのは事実だろう。そんな司くんならば恋愛のABCも何か他のものと勘違いしている可能性もある。実はこれは罠で司くんが僕に求めているのはただの恋人同士のイチャイチャかもしれない。

    僕は確信した。
    そうだ、きっとそうに違いない。危うく欲望に負けて司くんを押し倒しそうになったが、そもそも司くんは明確に何をしたいとか言っていないじゃないか。それにいまだにキスをするだけで小動物のように体をプルプルと震えさせている司くんのことだ。絶対にその先とか考えられるわけがない。危ない危ない、僕は目先の欲にとらわれて司くんからの信頼を失うところだった。


    一瞬でそこまで思案した僕は次に、この箱入り息子の司くんが思う『恋人同士のイチャイチャ』とは一体どこまでを指しているのだろう、なんてそんなことを考えだしていた。いずれにせよあまり時間は取れないだろう。帰りは司くんの家まで送っていくとしても、今の時点で外はもうだいぶ暗くなっているのだから。

    僕がそう考えていることに気づいたのか、気づいていないのか、司くんは先ほどよりもムッと口を尖らせて僕を見た。僕に中々動きがないからじれったいのだろうか。その顔もかわいいな、いきなりキスくらいはしても怒られないだろうか、なんて考えながら僕も恋人同士の雰囲気で司くんを見つめ返した。司くんの目を見て微笑みかければ何故か司くんが僕からバッと目を逸らしてしまったので、不思議に思って司くんの顔を目で追った。司くんの口がなにやらモゴモゴと動いているが、何を言っているのかは聞き取れない。そのまま司くんを見つめていれば、突然膝乗りだった状態から司くんが膝立ちの状態になり、司くんの手は僕の首元から僕の肩に移り、僕の視界いっぱいに司くんのはだけた胸元が入ってきたため、僕の脳内では再び獣が暴れだす。そうして獣と理性が闘っているために無言のままの僕にはお構い無しに司くんは僕を更に追い詰めるようなことをした。

    「類、聞いているのか?オレは本気だぞ……」

    そう言いながら司くんは僕のいまだどこに回せばいいのか分からずさまよっていた僕の手をとって、司くんのはだけた胸元に持っていった。僕の機械いじりで少しカサついている司くんよりも少し大きい手が司くんの胸元にペタリとくっつけられる。司くんの胸元は僕のカサついた手とは対称的にしっとりとしていて触り心地が良くて、僕は先ほどまでの心臓のバクバクが再開し出した。僕の手から伝わってくる司くんの体温が熱くて、僕の手は熱さからか緊張からかだんだんと汗ばんでくる。あまりの出来事に司くんが持っていった僕の手を呆然と見つめたまま動くことができないでいると、ふいに頭上の司くんの顔が動いた気配がした。驚いて顔を上げるとタイミング良く目が合った司くんが僕に顔を近づけて……チュッと軽いリップ音が鳴った。何をされたのかも理解できないうちに司くんは離れていってしまう。今度こそ僕の顔は滑稽に違いない。呆然と司くんの顔を見れば、司くんは耳まで真っ赤にしてもはや涙目で僕を睨んでいるから僕の理性が吹き飛んだ音がした。

    「分かったか類、オレの本気が」
    「…………」
    「もう家族にも類の家に泊まるって言ってあるからな」
    「………………」
    「明日は休みの日だし……」

    そこで司くんは一度言葉を切った。司くんの瞳が揺れた気がした。

    「類の好きにしていい。どんなお前でも受け入れてやる」

    その言葉を聞いた瞬間、僕は目の前の司くんをソファの上に押し倒していた。一瞬のことに驚いた司くんがわずかに身じろいだが、司くんが逃げないようにと司くんの体を僕の足で囲いこんで、司くんの投げ出された両手に僕の手を重ね合わせてギュッと手を繋いだ。いわゆる恋人繋ぎのような形になる。司くんが息を飲んで僕の顔を見上げた。司くんの瞳はキラキラと揺れている。

    「その言葉、僕に何されても文句言えないって分かって言ってる?」
    「……当たり前だ。オレに二言はない」
    「へぇ……ずいぶんカッコイイねえ……。さすがは司くんだ」
    「当たり前だ……!オレは未来の……!?」

    言いかけた司くんの口をキスで塞ぐ。既に開いていた司くんの口に「手間が省けたな」なんて思いながら舌を入れる。驚いた司くんが舌を引いたがもう遅い。僕は司くんの舌を追いかけ絡ませる。お互いの唾液が分泌されて、司くんが僕のものと司くんのものが混ざり合った唾液をコクリと飲み込んだ気配がした。


    しばらくそうして濃厚なキスを堪能した後に口を離せば、司くんは上手く息継ぎができていなかったのか大きく息を吸っている。顔を真っ赤にして僕を睨んでいる司くんを、僕は一周まわってどこか澄んだ頭で見下ろしていた。

    「るい……!いきなり何を……!?」

    僕に抗議しかけた司くんの口を再びキスで塞ぐ。今度は濃厚なやつではなく、唇と唇を触れ合わせるだけの軽いものだ。チュッ、チュッと一つ一つ丁寧に司くんの唇にキスを落としていく。時折司くんの唇をハムハムしてみたり、ペロリと軽く舐めたりすれば、先ほどよりも呼吸がしやすいからだろうか、司くんからたまらず吐息が漏れ出た。

    今はただ司くんをもっと深く感じていたかった。本能の赴くままに司くんに口づける。そうしてどれほど司くんを感じていただろう。僕がやっと顔を上げて司くんを見れば、真っ赤になった司くんは目を閉じてぐったりと呼吸をしていた。


    僕のクリアになった頭は目の前の司くんをどこか冷静な目で見つめている。
    きっと司くんは一ヶ月まともに手を出してこない僕を焚きつけようとしたのだろう。そして純粋で無垢なこの子には僕が心優しい草食動物か何かに見えていたのだろう。ならば教えてあげなければ。男はみんな獣なのだ。そしてこんなに美味しそうな獲物を前にして待てが出来るほど、獣には理性がないのだと。

    ね?司くん、君が僕に『好きにしていい』と言ったんだ。口から出た言葉には責任をとらなきゃね?


    僕は繋いでいた司くんの手を離して、押し倒したことで中途半端にはだけていた司くんのシャツの襟元を掴んで脱がそうとした。司くんがわずかに息を詰めて僕を見上げる。僕はそのまま司くんのシャツを脱がそうとして……出来なかった。司くんの肩がわずかに震えていることに気づいてしまったから。司くんのシャツの襟元を掴んだままピタリと動きを止めてしまった僕を、司くんが不思議そうな顔で見上げている。

    「……るい?」
    「……司くん、やっぱり今日はやめよう」
    「…………え?」

    僕の言葉に司くんから気の抜けた声が出る。僕の言葉を聞いた司くんは一瞬ポカンとした顔で僕を見つめていたが、その顔はすぐに悔しそうな顔に変化した。そんな顔をされると僕も自分の選択に自信がなくなってしまうな。だけど僕にとって司くんを怖がらせることは本意ではない。僕は司くんを自分が出来る限りの優しい表情で見つめ返した。

    「……なぜだ?」
    「司くん」
    「だって、おまえ、さっきあんなに強引なキスをオレにしておいて、今更そんなことを言うのか!?」
    「うん、それに関してはごめんね。司くんが僕を焚きつけるようなことを言うから理性を飛ばしちゃって」

    僕の言葉に司くんは目を見開いて、再び悔しそうな顔をする。そんな顔をさせたいわけじゃなかったんだけどな……。

    「そこまで……」
    「うん?」
    「そこまで理性を飛ばしたならそのままオレを襲うなりなんなりすれば良かったじゃないか!オレは類の好きにしていいって言った!」
    「うん。でもやっぱり出来ないよ」

    僕は司くんの頭をやさしく撫でる。司くんの頭を撫でていれば司くんの瞳に涙の膜が張っていき、司くんの瞳がキラリと揺れた。司くんは悔しそうな顔から一転して今度はしょんぼりと悲しそうな顔をした。

    「なんで……。やはり今のオレではお前の恋人として不足か?」
    「司くん」
    「何が足りないんだ?すまん、類、オレはこういったことには疎くてな……。お前の恋人として相応しい男になりたいが、何をどうすればそうなれるのか分からないんだ……」

    司くんの言葉に胸が痛む。僕は先ほどよりも強く司くんの名前を呼んだ。

    「司くん」
    「だが!約束しよう!役者としてだけじゃない!恋人としても必ずお前の期待に応えてみせると!!」

    そう言う司くんの瞳は真っ直ぐに僕を見据えている。司くんの言葉に僕は胸がいっぱいになってしまった。やっぱり司くんはかっこいいね。司くんはいつだって僕の一番欲しい言葉をくれて、僕を笑顔にしてくれる。そんな司くんに僕はあんな顔をさせてしまったんだ。今更後悔しても遅いけれど、僕の気持ちが少しでも伝わるようにと僕は司くんの頭を思いを込めて撫でた。

    「司くん。僕は君のことを恋人として不足だなんて全く思っていないよ」
    「……じゃあどうしてさっき手を出してくれなかったんだ?」

    少し拗ねたような口調に、こんな状況なのに「かわいいな」なんて場違いなことを思いながら僕は涙が溜まった司くんの目尻を親指でそっと撫でた。司くんが反射で目を瞑るとポロリと一粒涙がこぼれ落ちる。司くんのこぼれ落ちた涙を僕はそっと掬い上げた。

    「司くん、怖がってるみたいだったから」
    「怖くなんて……!オレが好きにしていいって言ったんだぞ?怖がるわけがないだろう」
    「でも肩が少し震えていたよ?」

    僕はまるで小さい子供を宥めるような優しい口調で司くんに話しかける。今は対話がしたい。司くんを怖がらせたり、焦らせたりしたら本末転倒だ。

    「それは……!それは……お前と違ってオレはそういうことに慣れていないんだ……。不安な気持ちが無いといったら嘘になる……」
    「司くん」
    「しかし!だからといって遠慮されるのは気に食わん!!言っただろう?遠慮するなと!お前の好きにしていいと!オレはお前に何をされても受け入れる覚悟はできていた!!」

    「だから遠慮をするな!類!」
    そう言って両手を大きく広げる司くんの肩は相変わらず少し震えているけれど、その瞳は先ほどのように揺れてはいない。真っ直ぐに僕を見据えている瞳には司くんらしい意志の強さを感じる輝きがあった。僕はそんな司くんを見て思わず笑ってしまう。不思議だな……。僕が司くんを笑顔にしたいと思っていたはずが、気づけば僕が司くんに笑顔をもらっている。いや、何も不思議なことはないか。きっとこれが司くんなんだろう。司くんはいつだって僕も含めた多くの人を笑顔にしていて、僕はそんな司くんを好きになったんだ。そして同時に、多くの人から笑顔をもらっている司くんに僕にしかできない特別な笑顔を僕があげたいと思ったんだ。

    「何を笑ってるんだ、類」と僕をムッとした顔で見てくる司くんに「ごめんごめん」と内心では「やっぱりかわいいな」なんて思いながら返事を返す。

    「じゃあ何で笑ってるんだ?……オレがこういうことに慣れてないからって、バカにしてるのか?」

    口を尖らせて拗ねたような口調で話す司くんがやっぱりかわいくて、僕は司くんへの愛おしさが溢れ出るような気持ちになった。

    「まさか。やっぱり僕は司くんのことが好きだなぁって思ったんだ」

    右手で司くんの髪の毛を耳にかけてあげながらそう言えば、司くんは途端に顔を赤くして僕を見上げる。その表情が司くんも僕のことが好きだと雄弁に伝えていて、僕は再び胸がいっぱいになった。

    「司くん、僕だってこういうことに慣れてはいないし、怖い気持ちも不安な気持ちも君と同じだよ」
    「そ、そうなのか……?だが……さっきのキスは……その……き、気持ちよかったし……オレはてっきりお前がこういうことにも慣れているのかと……」

    司くんから思いがけず「さっきのキスが気持ちよかった」なんて恥じらいながら言われてしまい嬉しい反面、僕もつられて先ほどの自分が恥ずかしくなってくる。

    「それは……あの時は無我夢中だったんだよ……。改めてそう言われると嬉しいけれど恥ずかしいね……」

    二人して顔を赤くして見つめ合う。僕も司くんも二人の間に流れる甘い雰囲気を感じていた。

    「そ、そうか……。類もこういったことには不慣れだったのか……」
    「そうだよ。だから司くんが目の前でシャツのボタンを外し始めた時は内心心臓がバクバクしていたよ」
    「そ、それは……!」
    「司くんがどうしてそんなことをしたのかの予想は大体ついているけれど、良ければ理由を聞かせてもらってもいいかな?」
    「予想がついているならわざわざ言わせるな……」
    「司くんの口から聞きたいんだよ。教えて欲しいな、司くん」

    僕が理由を聞けばサッと目を逸らしながらゴニョゴニョと言う司くんに、耳にかけた髪の毛を指でとかしながら僕は自分でも驚くくらいの甘い声を出した。僕の声に「うっ……」と反応した司くんはゆっくりと僕に視線を合わせてくる。

    「おまえ……意外と意地悪なんだな……」
    「今更だよね。それに安心してよ。僕が意地悪しちゃうのは司くんの色々な顔を見たいからであって、司くんにしかしないからね」
    「それは素直に喜んでいいのかわからんぞ……」
    「それに、司くんが本当に嫌がることはしないよ。ね?司くん」

    意味ありげに司くんを見つめれば司くんは「やっぱりいじわるだ……」なんて言いながら顔を赤らめて僕から目線を逸らした。そのまま手櫛で耳にかけた髪をとかしていれば、僕にされるがままの司くんは目を閉じて「うーん……」としばらく唸っていたが、やがて再び僕の方に視線を戻した。

    「色々と言いたいことはあるが……まぁその点に関しては信頼している。そんなお前だからオレはお前になら何をされてもいいと思ったんだ」
    「それは……光栄だね」

    司くんの真っ直ぐな言葉に素直に嬉しい気持ちになる。ちゃんと僕の気持ちは司くんに伝わっていて、司くんもそんな僕に応えようとしてくれたんだ。

    「言っただろう?役者としてだけではなく、恋人としてもお前の期待に応えたい、とな」
    「ありがとう。やっぱり司くんはかっこいいね」
    「フ……。当然だな」
    「それで?」
    「……うん?」
    「それで司くんはどうして突然僕の目の前でシャツのボタンを外し始めたのかな?」
    「うっ……お前……」
    「誤魔化そうとしたって無駄だよ、司くん」
    「別にそんなつもりは……」

    再び僕から視線を逸らした司くんを目で追う。
    分かっているとも。君の素直な気持ちも、君がそれを変に誤魔化したりせずに真っ直ぐ伝える人だということも。そんな素直な司くんだからこそ僕も素直な気持ちを伝えたし、もっと司くんのことを知りたくなるのだ。

    「司くん?」

    あくまでも優しく名前を呼ぶと、僕の声におそるおそる目線を合わせた司くんはやがてゆっくりと口を開いた。

    「せっかく恋人になれたのに類が一ヶ月間、ほぼオレに手を出してこないからそういうことに不慣れなオレに遠慮しているのかと思ってだな……」
    「それであんな大胆なことを?」
    「うっ……。他に方法が思いつかなかったんだ!とにかく類にオレを意識させようと思って……」
    「なるほど……。司くんは僕に襲われたかったってことかな?」
    「なっ……!?お前、言い方ってものがあるだろう!」

    「別にそんなつもりは……。むしろオレが類をリードしてやろうと思っていたくらいで……」とか、「類と付き合う前はそういうことをすることすら考えたことがなかったから勉強しようと思っていたら気づけば一ヶ月も経ってしまって……」とかゴニョゴニョと言っている司くんに、僕は思わず笑みがこぼれてしまう。そんな僕を目ざとく見つけた司くんがムッと口を尖らせてかわいい顔で僕を見上げた。

    「何を笑っているんだ、類!」
    「フフッ……。ごめんね、司くん。ただお互い相手のことを思いやるあまり臆病になってしまったのは同じだなと思ったんだ」
    「……?どういうことだ?」

    僕を不思議そうな顔をして見上げる司くんに僕は微笑み返した。

    「僕も司くんとそういうことがしたいという気持ちはあったけれど、あまりがっついては司くんを怖がらせてしまうと思って強くは踏み込めなかったんだ」
    「……やっぱりオレに遠慮していたのか?」
    「うーん……。それもあるけれど……。僕自身も臆病な気持ちがあったんだ」
    「臆病な気持ち?」

    司くんと付き合い始めてからの一ヶ月を思い出す。恋人どころかまともな人間関係すら作れていなかった僕はずいぶん恋愛に関して奥手になってしまった。

    「恋人としての関係の進め方が分からなくてね。もし何か間違えて司くんに嫌われてしまったらどうしよう、とか無意識にそんなことを考えてしまっていたんだと思う」
    「類……」
    「もちろん司くんが僕と同じ気持ちなことはよく分かっているよ。それに君の気持ちはその程度で変わらないことも、ね」
    「当然だ!オレの類のことが好きな気持ちは何があっても変わることはないぞ!!」

    司くんの真っ直ぐな気持ちに「眩しいなぁ……」なんて思う。司くんへの愛おしさが溢れてやまなくて、もう一度司くんの耳にかけた髪の毛をとかした。

    「うん。ありがとう、司くん」
    「感謝をされるようなことではないと思うが……」

    さも当然のような顔をして僕のことをずっと好きだと言ってくれる司くんがやっぱり愛おしくて。好きだ、なんて言葉では言い表せないくらい僕の心の中は司くんへの想いでいっぱいだった。

    「しかし……オレも類もお互い考えていることは同じだというのに、この一ヶ月全く関係が進んでいなかったんだな……」
    「フフ、僕たちお互いに恋愛に関しては不器用みたいだね」
    「うむ……。オレがもう少しスマートに類をリードしてやれれば良かったんだがな……」
    「いいんじゃないかな、司くん」
    「む?どういうことだ?」

    不思議そうな顔をする司くんに、胸の中に溢れ出てはやまない僕の司くんに対する愛おしい気持ちをそのまま言葉にする。

    「僕は嬉しいんだよ」
    「嬉しい?この一ヶ月何も関係が進まなかったのにか?」
    「うん。だって司くんと同じ世界を見れるんだから」

    僕の言葉を聞いてもなお相変わらず不思議そうな顔をする司くんに僕は思わず笑ってしまいながらも「つまりね」と言葉を続ける。

    「僕と司くんの恋人関係も一歩ずつ一緒に進めていこう、ってことだよ」
    「一歩ずつ一緒に……」

    僕が司くんに微笑みかければ司くんも笑顔になってくれて、その笑顔にもキュンとしてしまう。

    「ああ、そうだな!これからもよろしく頼むぞ、類!」
    「うん。こちらこそ……よろしくね、司くん」

    さっきから何度頭の中に『好き』の言葉が浮かんだだろうか。いつだって僕が一番欲しい言葉をくれる司くんは一体何度僕を惚れさせれば気が済むのだろうか。きっとこれから先も僕は司くんに何度も惚れ直すんだろう。もう既に十分すぎるくらいに好きだというのに司くんがそれをどんどん更新してくるから、僕はこれから先も一生司くんから離れられないし、一生司くんを離さないと思った。

    「それはそれとして……」
    「ん?」
    「司くんは僕に襲われたかったみたいだからねえ……。司くんは僕の期待に応えてくれるみたいだし、僕も司くんの期待に応えてあげなくちゃね」
    「んん!?る、類……?」
    「安心して、司くん。ちゃんと一歩ずつ、ね。分かっているとも!」
    「その顔は全然安心できないんだが!?」

    僕の言葉にいつものように大声でツッコミを入れた司くんが腹筋を使って起き上がり、ソファの上から、正確には僕の腕の中から逃れようとしたが、僕が司くんの肩を押して再びソファの上に押し倒す。

    「おわっ!類!」
    「フフフ……。司くん、僕この一ヶ月で司くんと一緒にやりたいことを沢山考えていてね!一歩ずつ一緒に進めていこうね!」
    「まてまてまて!お前、オレに何をするつもりだ!?」
    「フフ……」
    「フフ……じゃないが!?なんだその不穏な笑みは!?せめて何か言ってくれ類!!」
    「大丈夫。司くんが嫌がることは絶対にしないから、ね」
    「いや、恋人としてお前の期待に応えたいとは言ったがそれにも限度というものが……!?」

    ゴニョゴニョと言っている司くんをキスで黙らせる。キスだけでプルプルと小動物のように体を震わせている司くんが一体どうやって僕をリードしてくれるというのだろうか。それはそれで気になるけれど、これからも恋人として長い時間を過ごすのだ。それもいつか司くんにやってもらいたいことの一つにしておこう。今日はとにかく司くんに僕の愛を伝えたい。いくら恋愛下手だったとはいえ、司くんを不安にさせてしまったぶん伝えさせてほしい。言葉には言い表せない司くんへの感情をキスに込めて、僕は深く深く司くんに口付けた。


    そうして僕の溢れ出る感情を司くんに伝えようと長いことキスをしていれば、さすがに息が続かないらしい司くんが僕の背中をトントンと叩いて「早くやめろ」と訴えてくるので僕は渋々口を離した。

    「ぷはっ……おまえ!さっきから強引だぞ!?」
    「僕に何をされても受け入れる覚悟ができていたんじゃなかったっけ?」
    「なにっ!?い、いや確かにそんなことも言ったが……。というかおまえ、何か怒ってないか!?」
    「まさか!司くんが僕の目の前で突然シャツを脱ぎだしたことなんて全然怒ってないよ」
    「それはもう時効じゃなかったのか!?んむ!?んんー!!」

    一度やめたのは司くんの呼吸が苦しそうだったからであって、もう一度キスしないとは一言も言っていない。呼吸を整えることよりも僕に抗議することを優先していた司くんの呼吸はまだ整っていなくて、先ほどよりも苦しそうに早々に僕の背中を叩いた。

    「はぁ……はぁ……。おまえ……!せめて……理由を……ちゃんと説明しろ!!」
    「本当に怒ってないよ?ただ僕だから良いけど絶対に他の人の前であんなハニートラップみたいな真似はしないでね?」

    僕がニコリと微笑みかければ先ほどは笑顔で返してくれた司くんが今度はブルリと体を震わせて僕を見上げた。

    「る、類以外にはしない……」
    「うん。いい子だね、司くん」

    司くんの頭を撫でれば司くんは頬を染めて素直に目を閉じた。その姿はかわいいけれど、僕の前であんまり無防備な姿をさらさないほうがいいよ、ってことも教えてあげたほうがいいだろうか。しばらくそうして司くんの頭をなでなでしていると、突然司くんが何かを思い出したようにパッと目を開いた。

    「類……」
    「うん?」
    「その……言いにくいんだが……」

    言うべきか言わないべきかウロウロと視線をさまよわせている司くんに続きを促す。もう僕たちの間に遠慮はなしだ。

    「その……ああいうキスは……全然一歩ずつじゃなくないか……?」
    「司くん、キスは恋愛のABCの『A』だよ!つまり基本中の基本。何もおかしいことはないんだよ」
    「なにっ!?そうだったのか!?まてよ……?あのキスが恋愛のABCの『A』ならこの後のお前がしたい沢山のことってなんだ……?」

    司くんがおそるおそる僕の顔を覗き見る。どうやら司くんは本当に恋愛のABCを他のものと勘違いしていたらしい。僕と司くんは同じ世界を見ていると思っていたけれど、どうやら司くんは僕が思っているよりも箱入り息子だったようだ。しかしそれならそれで問題はない。僕がこれから司くんを育てていけばいいだけの話だ。司くんのお父様、お母様。ご安心ください。お宅の息子さんをこれからは僕が大切に育てていきますから。

    「フフ……」
    「楽しそうにするな!まてまてまて!オレにも出来ることと出来ないことがだな……!」
    「ちょうどいいじゃないか!僕がやりたいことを司くんが出来るかどうか一つずつ確かめていけばいいのさ!」

    「一歩ずつ一緒に、だろう?」
    そう言いながら司くんを見れば、司くんはこれから何をされるのかと戦々恐々としながら身構えているようだった。『絶対に無理だ』とは言わずに受け入れようとしているところがいかにも司くんらしい。司くんをこんなふうにしたのも僕のせいだと思うと所有欲が満たされるような心地がした。

    「無理なものは無理だと言うからな?」
    「それでいいとも」
    「よし、何でもやってみろ、類!お前の期待に恋人として応えてやろうではないか!!」
    「さすがは司くんだね!さて、夜はまだまだこれからだ。ゆっくり進めていこうじゃないか……」



    「お前、本当にこういったことに不慣れなのか……?」
    「もちろんだとも。僕が嘘をつく理由がないだろう?」
    「それは……いやしかし……」
    「ひどいよ司くん!僕のことを信じてくれないのかい……?」
    「おわっ!泣き真似をするな!」


    翌日の朝。
    僕のベッドの上で寝ぼけ眼で僕に問いかけた司くんにわざとらしく泣き真似をしながら僕は司くんに後ろから抱きついた。司くんの髪の毛からは僕の家のシャンプーの匂いがして僕は朝から上機嫌だ。それに今日は休日で、もっと司くんと一緒にいられる。目が覚めたら横に恋人が寝ていることがこんなに嬉しいことだったなんて、これも司くんと付き合いだしてから初めて知ったことだ。僕は嬉しい気持ちのままに司くんの肩口に顔を押し付けた。スンスンと匂いを嗅げば司くんの匂いがして僕の気分も高まる。

    「る、類!あんまり嗅ぐな……」
    「司くん……」
    「耳元で話すな!」
    「司くん、あれもするな、これもするなって、禁止してばっかりじゃないか……。寂しいよ……」

    「よよよ……」とわざとらしく付け足せば、司くんは「うっ……」と唸ってから肩口の僕の頭を撫でてくれた。僕はそれに満足して司くんに抱きつく力を強める。司くんは最初こそ気にする素振りを見せたが、振り解けないことを知っているからか途中から諦めて僕の頭を撫でることに専念したようだった。僕はそんな司くんに改めて「好きだなぁ……」なんて思いながら、ここぞとばかりに司くんに話題を振る。

    「昨日の司くんは僕のやりたいことを全部叶えてくれたのに……」

    僕の言葉を聞いた司くんが僕の頭を撫でていた手を止めて僕の方に一瞬で振り向いた。司くんの顔はみるみるうちにかあっと赤くなっていく。そんな司くんの顔を見て、こんな司くんの顔が見られるのも僕だからなんだと思うと再び所有欲が満たされる心地がした。

    「それは……!おまえがやりたいこととやらをオレに全部実践で確認するからだろうが!!」

    僕の手を振りほどいて僕に向き直った司くんは真っ赤な顔で抗議をする。「オレは『無理だ』って言ったぞ!」とか、「そもそもあんな破廉恥なことをどこで覚えてくるんだ!」とか。僕はそんな司くんのかわいらしい抗議をうんうんと全て聞いてから再び口を開く。

    「えー?でも実際にやってみないと出来るかどうかも分からないだろう?やる前から自分の限界を決めてはダメだよ、司くん」
    「ぐぬう……。上手いことを言いおって……!昨日もそうやってお前の無理難題を押し通しただろう!」
    「無理難題じゃないよ。実際司くんは全てに応えてくれたじゃないか」

    僕の口車にまんまと乗せられてしまう司くんが愛おしくてしょうがない。こんなのは屁理屈でしかないし、上手いことを言っているわけでもないのだが、司くんが素直に流されてくれるため僕がそれを司くんに教えてあげる理由もない。僕は司くんが僕と向かい合うように体を動かしたため少し開いてしまった距離を詰めて、司くんの耳元に口を近づけて「それに……」と言葉を続けた。

    「司くん、ちゃんと全部気持ちよさそうにしてたしね?」
    「……!」

    僕の言葉に耳まで顔を赤らめた司くんはポカポカと僕の胸元を叩いてくる。全く痛くないから手加減してくれているんだろう。そういう優しさにも司くんに愛されていることを実感して僕は幸せな気持ちになる。

    「あはは!ごめんね、司くん。ちょっとからかいすぎたかな?」
    「全くだ……!恋人のおまえがこんなに意地悪だとは知らなかったぞ!」
    「本当にごめんね。……怖がらせてしまったかい?」
    「……いいや。怖がるわけがないだろう。類だからな」

    答えが分かりきった質問をするのは意地が悪いと思ったけれど、それでも真っ直ぐ僕の目を見て答えてくれる司くんがやっぱり好きだ。いいや、『好き』や『愛してる』なんて言葉では言い表せない!

    「フフ……。ありがとう、司くん!」
    「おわっ!まったくお前は……犬みたいだな……」

    感情が自分の中で抑えきれなくて司くんに抱きつけば、そう言いながらも微笑みながら僕の頭を撫でてくれた。『犬みたい』とは言い得て妙だなと思いながらも、こんな僕を見せるのも司くんだけだ。お互いに相手にしか見せない顔があるのもきっと恋人同士だからこそだろう。司くんが愛おしいという感情に浸りながら、僕の頭を撫でている司くんの名前を呼ぶ。僕の声に反応した司くんの声が優しくて、温かい。

    「司くんは飲み込みが早いからこれから先もどんどん成長していけるよ!」
    「ん?これから先も……?」
    「うん。昨日やったことは全部僕のやりたいことの中では序の口だからね」
    「まてまて……!昨日やったことが序の口……!?」
    「そうだよ?まだまだ司くんとやりたいことは沢山あるけれど……。でも大丈夫!ちゃんと一歩ずつ一緒に進めていこうね!」
    「類、一応聞くがオレに何をしてほしいんだ……?」
    「え?聞きたいのかい?そうだなぁ……例えば……」
    「ま、まて類!やっぱりやめておこう……。今日一日に影響を及ぼしそうだ……」
    「そうかい?」


    「もちろんお前のやりたいことには全力で応えてみせるぞ!ただあれ以上となると、オレの体とメンタルが心配だな……。いや決して嫌というわけではないんだがな!?むしろ、昨日のあれは、き、気持ちよかったしな……。ただ恥ずかしすぎて耐えられないというか……。いやいや弱気になってどうする、天馬司!今こそ日々の特訓の成果を見せる時なのではないか!?そうだ……最近は体力もついてきたしな……!よし、類!この調子でお前のやりたいことを叶えるぞ!このオレがお前のどんな要望にも応えてみせようではないか!!」

    司くんの長い長い独り言は仕上げに「ハーハッハッハッハ!」という高笑いで締めくくられた。ほんのりと赤く染まった司くんの耳を見ながら僕は司くんの独り言をニコニコと聞いていた。

    「フフ……。そうだね、司くんは体力があるからもしかしたらもっと色々なことが出来るかもしれないな」
    「い、色々!?」
    「うん。僕も司くんがどこまで応えてくれるのか楽しみだな」
    「ぐぬう……!いや、未来のスターの辞書に不可能の文字はない!この天馬司!!お前を必ずや満足させてみせよう!!」

    気がつけばベッドに膝立ちになってかっこいいポーズを決めている司くんに僕はパチパチと拍手を贈る。もはや僕が乗せなくても勝手に乗ってくれる司くんがあまりにもチョロすぎてさすがに少し心配になるが、それも司くんのいいところだろう。はなから否定するという選択肢がない司くんがやっぱり愛おしい。そう思いながら司くんを見つめていれば、先ほどまで自信満々な顔をしていた司くんが急に不安そうな顔になって膝立ちの体制からペタリとベッドに座り込んでしまった。

    「……類、お願いがあるんだが」
    「……?どうしたんだい、司くん?」
    「その……出来れば優しくしてくれないか……?お前の期待には応えてやるつもりだが、やっぱり少し不安でな……」
    「……!もちろんだよ。君のペースでゆっくり進めていこうじゃないか」

    滅多にない、というか初めてかもしれない司くんからの恋人としてのお願いに嬉しくなる。言われなくとも最初からそのつもりだ。絶対に司くんが嫌がることはしたくない。僕たちはお互いに恋愛に対して不器用で、二人で一歩ずつ一緒に進んでいこうと言った僕の気持ちに嘘偽りはないのだから。


    僕の言葉にホッとした顔になって「ありがとう」と言う司くんを抱きしめる。司くんは驚きながらも僕を抱き締め返してくれた。

    「類……?」
    「好きだよ司くん。好きなんて言葉じゃ表せないくらい司くんのことが好き。これから先も司くんとずっと一緒にいたい」
    「……!ああ、オレも類のことが好きだ。こちらこそ、これからもよろしく頼むぞ、類!」
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    ふう。

    DONE🎈🌟ワンライより
    演目『不安』

    不安で色々考えすぎる🎈とそんな🎈を無自覚に包み込む🌟の話。
    ※未来軸&同棲
    ※付き合ってる
    吐き出したため息が白くなるほどの寒空の下、時刻は夜の23時を少し過ぎた頃。きらびやかなネオンとは対称的に、僕はどんよりと暗い顔をしながら夜道を歩いていた。こんな時間だから僕以外に歩いている人もいなくて、僕の暗い思考は誰に気づかれることもなく加速していく。いつもならすぐに僕の変化に気づいてくれるはずの仲間であり恋人は、今日ばかりは僕がこうして悩むきっかけだった。


    悪いのは僕だ。行為の最中、盛り上がりすぎてしまった僕は司くんが静止の声を上げていたにも関わらず、ついやりすぎてしまったのだ。僕の悪い癖。司くんへの好きが溢れすぎると止まれなくなってしまうのだ。今までも何回もこういうことはあった。そしてその度に優しい司くんに許してもらっていた。僕は優しい司くんに甘えてばかりじゃダメだったのに。さすがの司くんも今日は我慢ならなかったらしく、息も絶え絶えに僕を睨みながら「コンビニの1番高いアイスを買ってこないと許さないからな!」と怒られてしまった。ほっぺをぷくっと膨らませながら涙目で僕を睨む司くんがかわいくて、思わずキスをしようとしてしまったのも司くんの怒りに火を注いでしまったんだと思う。明確にキスを拒絶された。別になんてことはない恋人同士のよくある一場面だ。だけどそれが思いのほか僕の心につっかえてしまったらしく。後悔と罪悪感でいっぱいになりながらコートを羽織り、財布とスマホだけを持って外へ出た。司くんの顔は見れなかった。
    4013

    ふう。

    DONEもともと類司ワンライ用に書いてたけど長くなってしまったので……!
    I fall in love with you again and again.「つ、司くん……」
    「るい……」

    司くんが僕をどこかとろんとした目つきで見つめている。司くんのシャツはいつの間にかはだけていて、僕の部屋のソファに隣合って座っていたはずの僕と司くんの距離は先ほどよりも近くなっていた。僕の手は僕と司くんの間を中途半端にさまよっている。一体どうしてこんなことになったんだっけ……?


    数時間前。
    今日のワンダーランズ×ショウタイムでの練習が終わり解散になった後、僕と司くんはお互いまだまだ話し足りなかったため、練習後に僕の家に行くことになった。司くんが僕の家に来てからは今日の練習の振り返りをしたり、僕が考えたショーの演出を司くんに聞いてもらったり、お互いの好きなショーの話をしたりといつもと変わらない過ごし方をしていたはずだ。司くんと話していると時間が過ぎるのはあっという間で、ふと時計を見ればそろそろ司くんが帰らなければいけないはずの時間になっていた。名残惜しいけれど司くんの帰りが遅くなってしまっては司くんのご家族の方も心配するだろう。先程まで話題の中心だった過去の名作のショーを頭の中で思い起こしているのか、どこか満ち足りた顔をしている司くんに僕はそっと声をかけた。
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