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    hasami_J

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    BJR二次創作。ものの見事にNPCだけの二次創作。
    盤外視座より黒不浄、火霞羅州、真名鶴の話。
    話転がしの都合で公式より多少仲良しな空気になってしまった。
    #BJRportfolioDay さんのお題より、「箱待公園」「命短きもの」を使用。
    まだ続く予定です。

    箱待公園の首吊り死体(1) 箱待公園の銀杏の木の下には死体がぶら下がっている。
     よくある光景だ。この街では特に。
     駅前に建ち並ぶ、取り壊し前の廃テナントにでも足を向ければ、森に潜む甲虫を見つけるぐらいの感覚で見つけられるだろうそれ。
     よくある光景なのだ。この世界では特に。
     その言葉の前に、「午前四時から午前五時の間だけ」という制限時間がつかなければ、だが。



    「カブトムシってそんなに見つけられますかね?」
    「そこなのか」
     蝉の声が煩い、よく晴れた七月の昼だった。
     思わず口から溢れた素朴な疑問が、随分と的外れな響きを持ってしまったことに遅れて気付き、真名鶴は恥じて口を閉ざす。
     日の高い内から、こうして荒夜髭神社に集うのは珍しい事だった。常ならば現地集合現地解散が殆どだったが、この日は狙う獲物の都合で、少しばかり長めに事前の支度が必要だった。
     外からはしきりに蝉の声が響き、神社の庭を照らす陽光と、能舞台に落ちる日陰のコントラストが目に痛い。夏の真昼を体現したような光景の中で、物々しい能面と、時代錯誤な和装を纏った者たちが集う様は、祭りかイベントごとの最中のようにシュールに見える。それは皆同じだったのだろう。物騒な生業を共にしてこそいるが、そうした感性自体は、常人に近い面子である。
     その話題を供したのは黒不浄であった。
     作業の手を止めぬまま、それに乗じたのは残る二人、真名鶴と羅州である。
     皆、この気まずい違和感から目を背けたかったのだろう。雑談としか呼べぬその噂の話は、存外に続いた。
    「酔っ払いか薬中の見た幻覚に尾鰭がついたんじゃないか」
    「それが、見たという輩は複数人居てな。警察沙汰になったものもあるそうだ」
    「この街で警察が仕事を?」
    「だから噂になった。ただの首吊り死体なら、それこそこの街じゃ広がらない」
    「どこかの組織の見せしめとかじゃないですか? あの公園、そんな話もありましたよね」
    「現実的な路線で考えるなら、それが一番あり得る線だとは思う。だが何の為に? 話によれば死体は毎日別のものらしい」
    「それは随分とまめなことだ」
    「あ」
     思わず溢れた小さな声に、黒不浄と羅州が揃って訝しげな顔を向ける。思いのほか注目を集めてしまったことに真名鶴は焦った。仕様のない気付きと一笑に伏される程度のものと分かっていた故の焦りである。
    「どうした」
     しかしその焦りは通じなかったとみえて、黒不浄がカタリと首を傾げた。
     ええいままよ、今更言葉はしまえぬと、真名鶴はその仕様のない気付きを口に出す。

    「今日の任務が終わるのが、ちょうどそのくらいの時間になりそうだなあと……すみません、おかしなことを言いました」
    「あー…」
    「…………」

     男性陣が顔を合わせる。気まずい。皮肉のつもりでの追及であれば嫌味の三つ四つは返されるだろう相手だが、互いにその気がなかった故に、不意をつかれたそれに気まずい沈黙が落ちてしまう。
     何か。何か話題を変えねばなるまい。真名鶴は慌てて思考を巡らせた。何かないか。
    「……ちなみに俺も」
     沈黙を破ったのは火霞羅州であった。
    「野生のカブトムシはあまり見たことがない」
    「え、マジで?」
     誤魔化しは下手だったが、話題は流れたので、真名鶴は兄弟子に心の中で感謝した。
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    hasami_J

    DONE(1)はタグ参照。
    タイトル通りの自PCの小話。

    ■ローンシャーク
     超人的な瞬間記憶能力と再現能力を持つ傭兵。瞬間記憶によって再現した武装と、トレースした他人の技を使って戦う。能力の代償に日々記憶を失い続けている男。
     金にがめつく、プライベートでの女遊びが激しい。
     セカンド・カラミティ以後はヒーローサイドの仕事を請け負うことも多い。曰く、多額の借金ができたからだとか。
    『ローンシャークの隣で女が死んでる話(2)』 例えば。
     切符を買おうとして、券売機の前で手が止まったとき。
     そうして考える。──『今、俺はどの券を買おうとしていたんだ?』
     東へ行くのか? それとも北? リニアに乗りたかったのか、それともメトロ? 疑問はやがてより根本的なものになっていく。つまるところ──ここはどこだ?──俺はどこから来た?──俺は誰だ?──そういう風に。
     振り返っても何もなく、前を見ても行く先は見えない。雑踏の中で立ち止まって泣き喚いたところで意味はないので、ただメモを開く。考えがあってのものではない。ただ手にした銃の銃口を自分に向けることのないように、空腹の満たし方を忘れないように、体に染みついたルーティンに従うだけ。
     メモの中には、今までのセーブデータがある。それをロードし、新しいセーブデータを残していく。その繰り返しで、ローンシャーク──あるいはシャイロック・キーン──少なくともそう名乗る誰か──は出来ている。
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