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    hasami_J

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    1:https://poipiku.com/1036413/4637765.html

    BJR二次創作。続きものなので1はリンク先をどうぞ。
    盤外視座より黒不浄、火霞羅州、真名鶴の話。
    公式よりとっても仲良しな空気になってしまった。でも公式のノベルも大概仲良しだと思う。

    #BJRportfolioDay さんのお題より「箱持公園」「命短きもの」を使用。
    もう1つ2つ続く予定です。

    箱持公園の首吊り死体(2) 午前四時から午前五時の間だけ、箱持公園の銀杏の下には死体がぶら下がっている。
     死体は毎日ばらばらで、男の時もあれば女の時もあり、子供の時もあれば老人の時もある。まっとうな人間の時もあれば、非合法な行いに手を染めている者もいる。それらは皆、午前四時から午後五時の間だけ、箱持公園の銀杏の下に、首を吊った状態でぶら下がる。
     それが実在する人物なのか、それとも公園が作り出した幻なのか。分からない。だって死体はどこにも残らず消えてしまうから。この街でどんな理由で人が消えるかだなんて、誰も調べる気にもならないから。
     本格的な騒ぎになっていないのならば、相応の立場ある人間はその中にはいなかったのかもしれない。あるいはそれすら分からないのか、誰も調べる気にならないのか。
     誰でもいいのだ。
     何でもいいのだ。
     つまるところ、それはそういう噂で。
     ここはそういう噂がまかり通る、そういう街というだけのこと。



    「む」
     時計が目に入った。
     炉端に停められた、放置された無人の車。その中に灯ったデジタル時計の表示は、午前三時四十分を示している。
    「どうかしましたか?」
     漏れた声が届いたか、真名鶴が振り返る。他意などまるで無いのだろうその語調に、些かの気まずさが募る。昼時に交わした奇妙な会話と空気が脳裏を過った。
     なので、羅州は茶を濁すことにした。
    「いや、何でもない」
    「ああ、時間か?」
     横から聞こえた、気遣いを台無しにする無神経な男の声に、じとりとした眼差しを向ける。だが能面の下から向けられたそれに当事者の人形雨はまるで気付かなかたと見えて、しげしげと車内のデジタル時計を眺めていた。
    「箱持公園ならここから十分ぐらいだな。充分間に合うと思うが、どうする?」
    「どうするも何も」
     馬鹿にしたように鼻を鳴らす。流石にこれでこちらの意図は通じよう。
    「今回の件に関係ないだろう」
     鐘馗から与えられた任務は既に終わっている。事前の支度にこそ時間を要したが、いざ対面すれば肩透かしなほどすんなりとことは終わった。あとは媒体の一つとなっていたこの車を廃棄すれば、この場にはもう用はない。それも間もなく終わる。この程度の相手であれば、あれほど時間をかけた準備をせずとも、自分一人でどうにでも出来ただろうとすら思う。
     若い世代を育てたいのか、はたまたただの不信か、まさか臆病ということはなかろうが、鐘馗は妙に真名鶴に甘い気がしてならない。羅州は少しだけ、それが面白くない。
     胸中を過った不穏な情は、どぼん、と車が池へと沈む異音によって遮られた。いくらかの水泡を上げながら、蝦蟇が池の玉虫色に濁った水は、鉄の塊をあっけなく飲み込んでしまう。車を押していた、式札で作られた鎧武者ははらりとその形を無くし、同じく水底へと沈み姿を消していく。
     水面はやがて静かになった。
     これで今宵の役目は終わり。
     あとは、各々勝手に別れればそれで仕舞い。

    「それなら俺が行こう。今日のはどうにも食い出がなかった」
     話をすっかりと打ち切ったつもりでいた羅州は、当たり前のように黒不浄が続けた話題に、今度こそはっきりと舌打ちをした。
    「お前、俺の話を聞いてたか?」
    「聞いてたとも。だが、任務は終わり。ここから先はプライベートだ、何をしようと勝手だろう?」
     ならば口に出さずに勝手に行けばよかったのだ。この人形は自分を人間だと主張する割に、人の機微に無頓着で嫌になる。こんな場所でこんな話をしていれば、当然…。
    「それなら私もご一緒させてください。何かのお手伝いが出来るかも」
     そう言うに決まっているのだ、この優等生の妹弟子は。
     烏天狗の能面の下、羅州は盛大に顔を顰めたが、その不機嫌は面に阻まれ表出しない。そうこうしている間にも、とんとん拍子で会話が進んでいく。
    「良いのか? 報酬は出せないぞ」
    「良いのです。自分の未熟はよくよく分かっておりますので、学んでいかなくては」
    「真面目なこって。じゃ、自分の身は自分で守ってくれよ」
    「はい、もちろんです!」
    「俺は行かんぞ」
    「誰も頼んでないだろ」
     火霞は声聞師の血統である。千四百年もの昔から、鬼の血と交わり邪を滅してきた。だがその代償として受けた呪いは根強く、羅州の身にも力の代償として脈々と引き継がれている。ならばこそ、有象無象の噂に対して無駄遣いできるようなものではない。そんなものに構っている暇などないのだ。
     視線の先では黒不浄と真名鶴が、スマートフォンを片手に箱持公園までの道順と時間について話をしている。
     ああくそ、面白くない。

    「あ、ルート出ました。五分で着くみたいです」
    「俺は行かんぞ」
    「だから頼んでないって」
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