箱持公園の首吊り死体(3) 桜の下には死体が埋まっている。
都市伝説として、数多の小説の題材として、多く用いられてきたこの一節は、元を辿れば明治から昭和にかけて活躍した文豪・梶井基次郎の短編小説である。この小説が文学史に残した影響は大きく、以後、桜を表す題材の一つとして、死体は度々物語や噂話の中で桜に添えられてきた。
……いや、それより以前から、人は桜の美しさの中に、死と衰退を垣間見ていたのは確かか。少なくとも、その下で死ぬことを選んだ歌人がその一人であったことは、疑いようがない。
実際は、桜は桜だし、死体は死体だ。紫陽花ではないのだから、桜の根の下に死体が埋まっていようといなかろうと、花の色に変化は生じない。そんなものだ。結局のところ、連想を共有し得る文化的教養の問題であろうと、黒不浄は思っている。
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