Untitled「……」
稽古を終えて汗をかいたあと、タルタリヤはダンスの特訓があるからとその場所をあとにして。残された蛍は湯浴みをしながら先刻のことを思い出して不貞腐れていた。
あれから何度も剣を交えたけれど、結局のところ蛍はタルタリヤから一本もとることはできなかった。簡単に剣を弾き飛ばされ、無力化させられる。少なくとも剣の腕ではタルタリヤの方が上で、これは不意打ち用の短剣でも忍ばせるべきかと本気で考えてもいいかもしれない。
ぶくぶくと泡を吐きながら、悔しいと本気で思う。三つも年上の、体も成年に近いタルタリヤに敵わないのは当然だが、当然を当然で済ませたくなかった。何故って己は王族で、仮にも王位を継ぐ資格がある人間で。自分の身ひとつ守れないのは情けないと思うのだ。
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