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    yu__2020

    物書き。パラレル物。
    B級映画と軽い海外ドラマな雰囲気になったらいいな

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    yu__2020

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    シェフなジェのパソストに触発されて。
    幻覚見せるキノコをうっきうきで料理してアズに食べさせるジェと巻き込まれたアズの可哀想なSS

    トリップマッシュルーム 登山から帰ってきたジェイドはやけに機嫌が良く、それ故どんな仕事もひょいひょいこなしてくれる。確かに、ストレス発散後というのは仕事の効率は上がる。これは良いことだ。アズールはそう考えるようにして、食事に時折混ざるキノコは、嫌味は言いこそすれ、取り敢えず黙っている事にしていたのだ。
     だと言うのに。
    「ぐ……っ」
     今日のこれは相当にまずい。味の話では無く。
     アズールは飲み込んだ物をどうやって吐き出すかを考えた挙げ句、トイレに立とうとしたその手を勢いよくジェイドに掴まれて椅子に固定された。
     拷問というやつでは無いか?
    「美味しいですかアズール」
     元々この双子はは割と瞳孔が開いていた気がするが、今日のジェイドは更に輪を掛けて酷かった。
     呼吸は荒く、冷や汗か脂汗かが首を伝い、気のせいか自分を見る目が捕食者のそれだった。
     ――捕食者なのはそうなのだけど
     アズールは、一瞬浮かんだ考えに、そういう事なのかと顔を引きつらせた。助けを呼ぼうとしたがフロイドは察知したのかバスケ部の練習あったきがする! と逃げたのを思い出した。
     目の前には自分もニコニコと、よくわからないキノコがのった料理を食して気分がハイになっているジェイドだけだ。
     因みに寮生はとうに危険を察知して逃げた。どいつもこいつもそればかりだ。自己責任の寮なのだから、仕事のパフォーマンスを上げさせるために、自ら死地に赴いたのだからあまり文句は言えないのだ。それでも命の危険は流石に勘弁してほしい。
    「どうですアズール! 頭がふわふわして、目の前がキラキラしてきませんか!」
    「明らかに幻覚見せるキノコじゃないですか何考えてるんですかお前は」
     一息で罵り、アズールは水を飲もうとグラスを探した。
    「ぐらす……どこ?」
    「あはははは、アズールは面白い事を言いますね。目の前にあるじゃないですか」
    「目の前」
     出された物を掴み、口に当てると、ざらりと塩がいくつか口の中に入った。思わずむせてジェイドの顔に思い切り投げつけると、ジェイドはゆらりと何故か避けて
    「危ないですねえ。グラスを投げるなんて」
    「何がグラスだ、塩入れじゃないですか」
    「おやおや」
     キノコの幻覚にやられている二人ではとても埒があかない。アズールは立ち上がって部屋から出て、誰かを呼んで水を貰おうとした。
     がくん、と膝から力が抜け、床に倒れたアズールは目の前をグラスが歩いて行くのを見つめて、這ってそれを取ろうとした。更にその脇を水差しが足を生やして歩いて行く。
    「……なんで水差しが歩くんです?」
     眼鏡を外してもう一度つけて見ても、床の上をグラスは跳ね回って今の体力では追いつけそうに無い。幻覚なんだろうがもう何が幻覚なのかアズールには分からなかった。ぐったりと倒れ込んで呻きながら呟くと
    「水差しは歩きませんね。水を腹に入れてるから泳ぐんですよ」
    「そうか」
    「そうですよ」
     バクつく心臓を押さえて、どうにか起き上がったアズールは、ジェイドの皿を見つめて思わず呻いた。
    「全部食べたのか?」
    「ええ、だって、貴方がいつも言ってるでしょう? 自分の物には責任を持てと」
    「……いや、そう、ではあるが」
     このトリップマッシュルーム(仮名)を食べて本当に平気なのか? とアズールは呆然とみている前で、ジェイドはアズールに出した分の皿もとって、食べ始めた。
    「……お前、だ、大丈夫なんです?」
    「はい、別に? ちゃんと調べてありますし。ウツボの特性が効いているのか、毒にはつよ」
     ふ、とジェイドの手が止まって、アズールをじっと凝視した。
    「……ジェイド?」
     死ぬのか? と思わず不安になり、アズールはジェイドに声をかけた。彼は、瞳孔が開いたままぽーっとアズールを見つめ、そろりとアズールに手を伸ばして来た。
    「ど、どうしましたジェイド! しっかりしなさい」
    「ああ……いい匂いですね」
     アズールの伸ばした手を掴み、ぐっと引っ張ってテーブルに引き寄せると、ジェイドはため息をついてアズールを机の上に転がした。
    「ジェイド? しっかりしなさい。幻覚ならすぐ薬を」
     空いた食器をなんだかんだとどかして、ジェイドはニコニコと機嫌良くアズールの身体を押さえ込んでかぱっと口を開けて屈んできた。
    「は? え?」
    「美味しそう」
    「ひ……っ」
     咄嗟に顔を避けると、かちん、と歯の音がしてジェイドが首をかしげた。
    「変ですね。カルパッチョが動くとは。新鮮、と言う事でしょうか」
    「か、カルパッチョって」
     タコのか。
     アズールは思わず顔を引きつらせて、慌ててテーブルから逃げようと藻掻いた。正直魔法で吹き飛ばしてきりもみしてやりたいが、アズールの視界は未だに七色に輝いていて、おかしいことにジェイドがやけにキラキラしている。
     ――いや、なんでだ
     お互い肌が密着しているせいで、激しい脈拍が呼応するように響いてくる。
     トロンとした――瞳孔は完全に開いている――顔で、ジェイドはアズールをしっかり押さえ込んで、今度こそと皮膚に歯を立てた。


    「ジェーイド。アズールぅ、飯終わったぁ?」
     逃走していたフロイドは、もうあらかた終わった頃だろうと機嫌良く部屋に入って、思わず一瞬動きを止めた。
    「……うう、ウツボが増えたぁ」
     ぐすぐすと、恐らくキノコの幻覚によるものか情けない声でアズールがジェイドの身体の下から声を上げ、ジェイドも音に気付いて顔を上げた。
    「ああアズール! うわっ、ちょっと大丈夫?」
     とても寮生達に見せられる物では無く、咄嗟にフロイドは部屋の鍵を掛けて、慌ててジェイドからアズールを引き剥がした。
    「おやフロイド。フロイドも食べます?」
     アズールの腕を掴んで手を振るジェイドに、いや、と顔を引きつらせ
    「それアズールだから。あーあ、ジェイドどんだけかじってたわけ?」
     噛み跡はまあそう無い物の、肩やら首やらに食んだり吸い付いた跡が出来ているアズールを、フロイドは可哀想にと思わずジェイドから離して呟いた。そもそも自分だけ逃げたのは都合良く忘れている。
    「ふろいどぉ……」
    「あーまだなんか幻覚見えてるなこれ……」
     めそめそと、出会った頃くらいのしょげ返った顔でフロイドにしがみつくアズールに、フロイドはしょうがない、と自分の少しばかりくしゃくしゃなベッドに移動させて布団をかぶせた。
    「はいタコちゃん、蛸壺だよー」
    「うぐぅ……」
     ずるずると中に潜って小さくなったアズールを、フロイドははあとため息をついて眺めて、ジェイドの方に向き直った。
    「はい、取り敢えずジェイドは幻覚解けるまでそこで謹慎でーす」
     落ちていたアズールのペンを使ってジェイドを動けなくすると、ジェイドは不思議そうに首をかしげた。
    「酷いですフロイド。僕何もしていないのに」
    「それはさぁ、幻覚切れてから聞くから」
     フロイドはそう言って、疲れたぁと呟いた。
     

     翌日、ジェイドはすっきりとした気分で目が覚め、ベッドから起き上がるとはて? と首をかしげた。なんだか部屋の中が酷いことになっている。自分の記憶をたどってみるが、アズールと昼間食事をしていた頃からどうにも曖昧だった。
     ――あのキノコにそういう効果があったと言う事か
     あとで記録に残そうと、考えながら部屋の反対側に目をやり、思わずジェイドは固まった。靴が、どう見ても二足。一つはフロイドの。もう一つは、アズールの物がフロイドのベッドの脇に並べられていた。
    「フロイド?」
    「なぁに?」
     やけにもこもことしたシーツの中から、フロイドが顔を出し、ついでアズールがひょこっと顔を出してきて、ジェイドは動揺のあまりベッドから転がるように立ち上がった。
    「アズール? なんでここに?」
    「ジェイドが幻覚キノコ食って、カルパッチョと思い込んで囓ってたんじゃん。アズールもちょっと幻覚キノコ食べたから、なんか変な感じになってたせいで、囓られてヒイヒイ泣いてたんだよー? どうすんの」
     むすっと不機嫌そうにジェイドを見上げて、アズールはベッドから降り、仁王立ちでジェイドを睨み付けた。
     ジェイドは、はあ、とため息をついてしばらく考えてから思わず
    「そんな面白い事に」
     と呟いた。
    「ジェイド、お前しばらく山へ行くのは禁止です」
    「そんな!」
    「自業自得じゃん……」
     フロイドはアズールの肩に腕を回してため息をついたが、じろっとアズールはフロイドに目を向けた。
    「フロイド、僕はお前が僕をスケープゴートにして逃げたのは忘れてないですよ」
    「……あれぇ? そうだっけ」
    「……二人とも今週のシフトフルでぶち込みます」
     部屋の鍵を開けて大股で、怒り心頭という顔で出て行ったアズールをジェイドとフロイドは見送った。
    「僕、そんなにアズールに噛みついてましたか?」
     思わず呟いたジェイドに、フロイドは思わず視線を逸らし、
    「……あー……どっちかというとあれ。スルメみたいな感じというか」
    「スルメ……」
    「なめたり甘噛み的な……」
    「は……」
     血の気が引いて、ジェイドは思わず顔を覆い
    「そんな、僕は何てことを……」
    「変なキノコ食べるからじゃん」
    「もっと段階を踏んでこう」
    「まだキノコの影響出てんのかなぁ」
     ペンを手に威嚇するフロイドに、ジェイドはしょんぼりと肩を落して
    「……分かりました。もう幻覚系の物は出しません」
    「……いや、キノコ自体要らないんだけど」
    「何のことです? まだ舌が痺れるキノコとか、口の中で弾けるキノコとか……沢山あるんですよ」
     こんなに楽しいのに! とさながらマッドサイエンティストの如く、真空の保存容器を並べ始めたジェイドに、フロイドは思わずそれを壊そうと魔法をぶつけた。
    「……ふふ、アズールや貴方が壊そうとするのを織り込み済みで強化しました」
    「いや本当にいい加減にしろよ?」
     凄むフロイドに、ジェイドは悲しい、と言いながら机の隅に置かれていた食器を片付け始めた。

     部屋に戻ったアズールは、大きく息をついて、噛まれた肩を押さえた。
    「くそ……」
     舌打ちして、幻覚も見なくなったはずなのにバクつく胸を押さえ、アズールは訳が分からないと首をかしげていた。


    まだアズールが山から帰ってきたジェイドのご飯を食べてくれた頃の話。
     二週間警戒されるようになったからきっとそのうち保存の仕方を工夫しだして二週間経ってから二人にシェフジェイドがお見舞いするんだろうなって。パイ食べさせそう
     スルメの如く味わいつくされたアズは肩とかほっぺちゅうちゅうされただけなのでまだセーフです。
    ねずみーのダンボで酔っ払ったダンボの見た夢がイメージ。あれは割とトラウマなんだぞ
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