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    yu__2020

    物書き。パラレル物。
    B級映画と軽い海外ドラマな雰囲気になったらいいな

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    yu__2020

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    前書いた猫になるアズ(♀)のジェイアズメインイドアズとは別のネタ。
    こちらはフロアズメインのイドアズで、少女漫画風味。こんな感じの書けたら良いな

    ##フロアズ

    猫少女とつまらない世界の少年 子どものうちはまだ良かった。自分のしたいことをして、怒られたら……兄弟と一緒に頭を下げて、また忘れてちょっと冒険をして。やりたいことをやって、やりたくないことはしない。当たり前のことだ。
     なのに大人になるとどうやらやってはいけない、したくない事の方が増えていくらしい。
     息が詰まりそうな話だ。
     
    「あー……」

     寝転がって空を眺めて、思わず空気が抜けるような声を出す。
     暇だ。より正確には暇では無いけれど、それをしたい気分では無かった。
     フロイドはゆっくりと起き上がって、足下で部活に精を出す生徒達を見つめ、ふらりと歩き出した。塀の細い足場から階段の手すりに向かって飛び、一回転して床にしゃがみ込む。階段を下りて非常階段からそのまま外へ。
     ――結構うまく出来るようになってきたかも
     動画を見ながら練習してみた甲斐があったと言う物だった。正しいかは知らないが。
    「よっと」
     壁に片足を掛けてそのままジャンプしてよじ登り、誰も歩く事の無い塀の上を駆け、ジャンプで飛び越える。本来はやってはいけないと、親からも散々口を酸っぱくして言われたのだが、フロイドは気にすることなく駆け抜けて行った。
    「よっしゃ!」
     新しい技も良い具合に決まり、塀からどこかの建物の屋根に飛び移る。
     ――あ、流石にこれはまた怒られる?
     家の屋根からは丁度どこかのアパートの非常階段が見えた。そこに、一人誰かが立っていた。
    「……?」
     フロイドは、別に他人にそこまでの興味を持たない方だった。それでも、その人間はどうしてか目に付いた。随分苦しそうにしゃがみ込み、手すりに掴まって呼吸も苦しそうだった。
     具合が悪いのだろうか、とフロイドは今立っている場所からその非常階段の所まで、パルクールで移動できるかを瞬時に判断した。
     ――多分、いける
     フロイドは少し下がってから反動を付けて非常階段の手すりに掴まってよじ登り、側に近寄ろうとした。
     ――どこの制服だろ
     それはどう見ても女の子で、見たような気もする制服を着ていた。苦しそうにうずくまっている彼女に声をかけようとすると、それは突然起きた。
    「……は?」
     ふっと少女の姿がかき消え、服だけがその場に残された。
    「え?」
     思わず見つめていると、服がごそごそと動いて、灰色っぽい毛の猫がゆっくりと服の間から顔を出した。
    「え……猫になった……?」
    「……ニッ!?」
     文字通り、まっすぐ上に飛び上がったその猫は、一瞬だけフロイドの姿を見たようだったが、そのまま階段の手すりの隙間から身を乗り出して、ぴょんぴょんと逃げていった。
    「……ふーん」
     にやぁ、とフロイドは思わず笑みを浮かべ、先ほど跨いだ手すりから降りて、逃げた猫が通った細い塀の上を走って行った。
    「ねえー、待ってよー」
     声をかけると、ふうっと一息ついていた猫がびゃっと妙な音を立てて再び走り出した。
     フロイドは待ってー、と声をかけながらウキウキと猫の後を追いかけた。
     人間が猫になるなんて明らかに不思議過ぎる。そんなの、面白いに決まっている。
     それに、こうして塀の上や細い路地、見たことも無い場所を駆け回るのなんてもう随分やっていない。
     ――ジェイドもいたら良かったな
     片割れがいたらもっと楽しかったのに、とフロイドはあの灰色の猫を追いかけ、細い路地を抜けて知らない家の庭先を通り、坂を登って小さな林の奥を通り抜けた。
    「あれ……」
     見たことも無い閑静な住宅街にたどり着き、フロイドは辺りを見渡した。人の気配などもなく、静かな道路に夕日が差して、軒先にある花や植木を照らして長い影を落としていた。
    「……おーい猫ー」
     呼んだところで出てくるわけは無いのだが、思わず声をかけてフロイドは歩き出した。
     そもそもここはどこだろう。こんな場所、来たこと無かったはずだった。
     ――移動した時間考えるとそこまで遠くねえんだよなぁ
     スマホを出して位置情報を確認してみると、案の定自宅からもそう遠くない場所が表示されていた。
     隣町にこんな場所があるとは知らなかった。フロイドはぐるりと辺りに目をやって、ふと気付く。あの少女は人間だったときに服を着ていたはずだった。制服類はそうそう無くすと困るはずだ。ならばあの場所に戻るはずである。
     慌てて、元々居た場所を頭の中で立体地図を作ってトレースし、フロイドは最短ルートで急いで戻った。
     果たして、彼がたどり着いたときには、あの非常階段に散らばっていた服はどこにも見当たらず、フロイドはやられたーっと思わず頭を抱えていた。
    「ああーもう」
     久しぶりに走り回って動き回って、身体は疲れていた。それでも。
     ――すげードキドキしたな
     家に帰り、機嫌が良いまま部屋に入ると、先に帰っていたジェイドがおや、と顔を上げた。
    「何か面白い事でもありましたか」
    「んー。実は」
    「……それは良かった」
     ここの所あまり機嫌が良くなかった兄弟を心配していた彼は、機嫌が良さそうなフロイドを嬉しそうに見つめた。
    「ですが、なんだか随分埃っぽいですね」
    「ああ、あちこちパルクールで追いかけたからなぁ」
    「おや、それは?」
     フロイドは、女の子が猫になったという所は黙って――何しろ夢と言われてもおかしくはないので――、猫を追いかけて隣の町に行ったことを伝えた。
    「あ、でさあ、ジェイド。こういう感じの制服の学校知ってる?」
     一瞬見かけた制服のデザインを、フロイドはさらさらと紙に書いてジェイドに渡す。彼は少し考えて
    「確か、隣町のA高校の制服だったと思いますよ」
    「ふーん」
    「というか、今度の大会で隣町の高校もいくつか来るはずですが」
    「あれぇそうだっけ?」
    「ええ、確か。そこの生徒も来るはずですよ。何か気になることでもありましたか」
    「んー、ちょっとねぇ」
     ありがとう、とジェイドに手を振ってフロイドはシャワーを浴びに部屋を出た。
     廊下を歩いてバスルームに入り、フロイドはお湯を頭から被りながらじっと意識を集中させて記憶を呼び起こした。
     ぱっと一瞬だけ見えた、猫になる前の少女の姿をコマ送りのように記憶を巻き戻していく。覚えようとすればその時点を鮮明な写真として、或いはその気になれば立体物として俯瞰で見る事も出来る。やる気が無ければ全く使わないので普段は宝の持ち腐れとも言える。フロイドはぱっと少女の顔が見えた瞬間で巻き戻しを止めた。
     柔らかい髪、猫の時と同じ色味の薄い銀髪に、うっすらと青い目の、少女の顔。
     面白い事になりそうな予感がして、フロイドは思わず胸が高鳴るのを感じて鼻歌を歌い始めていた。

     

     ジェイドの言っていた大会というのは、近隣の学校の運動部を集めた記録会のような物だ。何しろスポーツが盛んだとか言う街なので、箱物は沢山ある。ようはそれを使う必要があるのかもしれないが、フロイドにはどうでも良い事だった。
    「……はあ」
    「ちょ、ちょっとフロイド先輩ー」
    「なぁに、カニちゃん。おれ今ちょーっと機嫌悪いんだけど」
    「見りゃ分かりますって」
     赤茶の元気よく跳ねている髪を押さえ、エースははあ、とため息をついた。
    「ここまで来ただけマシとは思いますけどー……。どうしたんすか一体」
    「んー……」
     フロイドはスマホを弄りながら壁により掛かってぼんやりと客席の方に目をやる。
    「ねえカニちゃんさぁ、色々他の学校のこととか詳しいよねぇ」
    「え? あ、まあ兄貴とかがよく合コン? してたし、友達学校跨いで多かったから何となくは」
    「ふーん、じゃ、あの隣町のA高校ってどこら辺にいる?」
     エースはフロイドの意外な問いかけに思わず、えっと声を上げた。
    「え、せ、先輩が他校のこと気になるって……?」
    「良いからさぁ、教えろよおら」
    「あ、止めて首は絞めな……いやマジで締まっ……! しまってますフロイド先輩!」
    「んー、締めてるから当たり前じゃん」
    「しぬー! コロされるー!」
    「殺さねーよ。カニちゃん締めてもつまんねーし」
    「つ、つまらないでオレの命助かってるの……」
     エースはフロイドの筋肉の付いた腕をたたき、一方向を指さした。
    「あっち、あれ見てください先輩」
    「……んお。マジじゃん。あの制服。すげー! カニちゃんやっぱこういうとき便利ー」
    「べんり……?」
     ぱっと手を離して、フロイドはエースが指さした先に向かって歩き出した。
    「え、ちょっと先輩! 次! オレたちそろそろ試合っすよ!?」
    「適当にやっててー」
     軽やかに階段を駆け下りて外に出ていくフロイドの背中に、エースの悲鳴が聞こえてくる。
    「いやああ! うそでしょー!? ちょ、ちょっとジャミル先輩ー!」
     フロイドは果たして目当ての相手が居るか、わずかにドキドキしながら走り出していた。
     いくつかある出入り口の一つに向かうと、その制服の生徒達からの視線がばっとフロイドに向けられ、ひそひそと囁き越えが聞こえてきた。煩わしい物が大半で、フロイドは面倒だなと考えながら制服の一段の中に目当ての姿がいるかをぱっと探した。
    「いねえし……」
     思わず呟いて、彼はため息をついて外に出ようと、きびすを返した。
    「C組はこちらに集合してください」
     中から声がして、生徒達がざわざわと体育館の中に入っていくらしい音がした。何となく振り返り、フロイドは、あっと声を上げた。
    「あー!」
    「は……、っ!?」
     フロイドは長い足でぽんぽんと一気に距離を詰め、その生徒の前に立って見下ろした。
    「見付けたぁ。この間のね」
    「――っ! あ、あああお久しぶりですね! ちょ、ちょっとすみませんが代理お願いしても良いですか!」
    「え、あ、はい。アズールでも、もうすぐ……」
    「すぐ戻りますので!」
     近くに居た別の生徒に声をかけ、アズールと呼ばれた少女はフロイドの手首を掴んでぐいぐいと外にフロイドを連れ出そうと引っ張り出した。
    「えー、オレ外に出たい気分じゃねーんだけど」
    「……では中でも構いませんが、とにかく人の居ないところで話をしましょう。それと、僕のことをその、ねのつく生き物の名前で呼ばないでください」
     ひた、と冷たい目で彼女はフロイドを見上げ、フロイドは少し考えてから、良いよー? と笑みを浮かべた。
    「でもさぁ、オレ、ね~ほにゃほにゃのしかわかんねーし。なんて呼べばいいの」
     少女はあからさまに顔を引きつらせたが、眼鏡を押さえて息をついて、フロイドを見上げて答えた。
    「僕はアズール。アズール・アーシェングロットです」
    「ふーん、アズール、ねぇ」
    「さあ良いからさっさと歩く!」
     ずるずるとアズールに引きずられながら、フロイドはアズール、と彼女の名前を反芻するように唱えていた。


    「で、いくら欲しいんですか」
    「はあ?」
     外に出たアズールは、ずるずるとフロイドを引きずって体育館から少し離れた灌木の植え込みまで来て、そこで立ち止まって開口一番そういった。
    「何それ」
     不満を顔に出してフロイドは呟くが、アズールは爪を噛みながら
    「僕が普通じゃ無いと分かった上で、こうして探してきたのなんてそれ意外に何があるんです? 一応言っておきますが、金を受け取ったら二度と僕の正体の話は」
    「別に金なんて要らねーし。つか、他人から無心してまで金無いように見えるわけ?」
    「……」
     アズールは、思わずフロイドを上から下まで見つめてから、うう? と首をかしげそうになって、慌てて睨み付ける。
    「そ、そんなの。お金があるかどうかでやる物でも無いでしょう」
    「まあ確かに」
     物のカツアゲはそれこそ部活の後輩相手にしょっちゅうやっていた気がする。一々覚えてはいないが。
     しかし、とフロイドはアズールを見つめてわずかにもやっとした気持ちで彼女を見下ろした。
     何となく、この猫娘にそういう風に思われるのは癪だった。あんなにドキドキして楽しい事があるかもしれないと弾んだ気持ちはどうなるというのか。
    「なら、一体何が望みですか」
     胸の前で腕を組むのは、相手に対して戦いを挑んでいるのと同じ、とかジェイドが言っていたような気がする。フロイドは、胸を反らせて自分を見上げてくるアズールを、じっと見つめた。柔らかくウェーブした銀髪、一房だけ長いサイドの髪に、編み込んでいるらしい髪型は楚々としている。多分、そう見せたいのだろう。さっきの生徒達への態度から、生徒会か何かしらに所属している可能性もある。
    「……口の所ほくろあるんだ」
    「は……?」
     黙りこんでいたフロイドが突然そんなことを言ってきて、アズールは思わず瞬きをして口元を手で覆って
    「何を訳の分からないことを言ってるんです」
    「だって、この間はちゃんと顔見れなかったし。ずーっと猫ちゃんだったしねえ」
    「……っ」
     ぐうっと呻いて、アズールは俯いた。
    「何、猫嫌いなの?」
    「好きとか嫌いとかじゃ無い。馬鹿にするのも大概にしろ」
     ぐすっと若干涙声になったアズールに、フロイドは思わず狼狽え、アズールの肩に手を掛けて顔を覗き込んだ。
     ――なんでびっくりしてるんだろオレ
     泣いてはいないものの、わずかに赤くなった目がフロイドを睨み、ふくれっ面でフロイドの手を払おうとする。
    「僕を強請るのか」
    「なんで? ていうかさっきから、なんでオレがそういう事する流れな訳?」
    「なんでって」
     顔を上げたアズールは、怒りや苛立ちが引っ込み、困惑した顔でフロイドを見上げていた。
    「他に何があるんです? サーカスに売るとか、研究所に売るとか……?」
    「いや、なんでそういうのしか思いつかないわけ……? もうー! オレは」
     ぐっと両肩を押さえてアズールを見つめ、フロイドは思わず言っていた。

    「アズールと付き合いたいって思っただけなのになんでそういう話に持ってく訳?」
     
     あれ、何か違う?
     ……いや、やっぱりそう違うと言うわけでも無いな?
     フロイドは己の口から思わず飛び出た言葉に自分でも驚いてから、まあでも間違ってないな? と考え直した。
     だってあんなに面白かったのだ。アズールを追いかけていたときは。猫のアズール、ふわふわで柔らかそうで、目の前のアズールもやはりふわふわで柔らかそうだった。
     今はなんだかゆでた蛸みたいに真っ赤になっていたが。
    「は、え……?」
     今にも血圧の上がりすぎで倒れるのでは無いだろうか。フロイドは、真っ赤になって口をパクパクさせているアズールを見つめて思わず吹き出しそうになって口を押さえた。
    「そんなに驚くこと?」
    「だ、だって……僕は!」
     ふ、っとアズールは黙りこんでゆらりと前に倒れ込んだ。
    「うわっ! え、ちょっと!」
     ばさ、と倒れ込んできたアズールを抱えようと手を伸ばすと、服がばさっとフロイドの手に落ちてきて、そのまま地面に滑り落ちる。
    「あー……」
     服の中でもぞもぞ動くそれをつまみあげると、フロイドは腕の中に収めてふわふわの毛を撫でた。
    「大丈夫アズール?」
    「なあああ!」
     微妙に不満! という声のようだが余り気にしないことにして、フロイドはアズールの服を拾い集めて体育館の方に目をやった。
    「……猫じゃぁ体育出来ないし、代理居るからいいよねぇ」
    「なー!」
     そんなわけ無いだろ! と言っている気もしたが、フロイドは鼻歌を歌いながらひなたぼっこに良さそうな場所が無いかを求めて歩き出した。
    「なあに? ひなたぼっこしたい? いいよぉ」
     フロイドは上機嫌のまま、アズールを撫でながら猫の鳴き声に返事をしていた。
     
     
     
    +++++++++++++++++++
    ジェイアズからのイドアズネタとは別の猫アズ(にょた)。
    フロアズからのイドアズ?な予定。
    冒頭のイメージは耳をすませばのムタさん追いかける雫ちゃん
    ジェイアズと違ってこっちは何故か少女漫画になりそうな予感。何しろフロアズなので
     

      
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