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    han_hanmo

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    han_hanmo

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    深夜のお遊びで考えた学園パロ
    (泉と真、アイドルの面影はなし)

    (……暑い…)
     天高く上っている太陽の光が頭上から降り注ぐ。
     ジリジリと頭から焼かれていく感覚に、全身が燃え尽くされていくようだ。暑さによって、思考ごとドロドロに溶かされてゆく。陽の光を銀の癖毛がギラギラと反射している。少年の体がぐらりと傾きかけたとき、少年から遠く離れた前方から、銀髪の少年の名前を大きく呼ぶ声が聞こえる。
    『いずみおにぃ〜ちゃあ〜ん!』
     少年がその声にハッとして、手放しかけた意識を無理やり浮上させる。視界がボヤけている上に、やや暗くなってきているが、弟のように可愛がっている彼に弱さを見せるわけにはいかない、と一度深く深呼吸をして嫌な冷や汗を拭った。
    『はぁっはぁ…っ!ふぅ…ふぅ…!』
     遠くから急いで走ってきただろう少年が、その小さい肺で大きく息を吸ったり吐いたりしながら、さらさらの亜麻色の髪を揺らす。彼の髪は真夏の太陽に照らされて黄金色に輝いている。顔をあげた少年は、ほんの少し青い顔色をしている銀髪の少年とは異なり、健康的な肌色でほんのりと赤く色づいていている。銀髪の少年の様子を確認するかのように、大きな瞳が瞬く。綺麗な新緑色の瞳だ。銀髪の少年に向けて、にかりと笑いかけた。
    『ふぅ…!えへへ、お兄ちゃんが見えたから、急いで走ってきちゃったぁ〜!』
     陽の光にも負けない、キラキラの笑顔だった。
       *   *   *

     銀髪の少年は高校生になった。今は二年で、一年の頃から憂鬱な日々を過ごしている。
     以前の可愛らしい面影はなくなり、教室の窓辺、上から見て左端の座席にいる彼は、冷たい雰囲気を纏っている。ふいに彼の頭がかくり、と傾いた。
    (……うわ、寝てた)
     どうやら居眠りをしてしまい、夢を見ていたようだ。
    (さっきの夢…小さい頃のだねぇ…。俺は暑いのが大っ嫌いだから、あの真夏の日差しは本当に辛かったなぁ…)
     上を見れば眩しくて当然なのだが、空に浮かぶ太陽をよく睨みつけていた。網膜が焼ける前に目を逸らすことも、ずっと陽の光の残像が瞳の奥に写り続けていることも、何もかもが気に食わなかった。夏そのもの、その全てを恨めしく思っていた。ただ、"亜麻色の髪の少年"の眩しい笑顔だけは懸命に思い出そうとする。しかしもう何年も経ってしまったせいなのか、大切にしていたはずの唯一の記憶は朧げであった。それでも懐かしいその子の名前だけははっきりと覚えている。
    (…いつか、また会えるのかな。ゆうくん…会いたいよ)
     窓を通して桜の花びらが舞う空を見ていると、その隣で友人たちとふざけ合っていたクラスメイトが、銀髪の青年の肩にぶつかった。彼がじろり、とぶつかったクラスメイトを睨みつける。
    「あっ…!ご、ごめん、瀬名…」
     クラスメイトが申し訳なさそうに銀髪の青年の肩に触れようとした。しかし青年はその手を払った。教室に乾いた音が響く。彼はクラスメイトを氷のような視線で貫き、憎しみを込めるように一言言い放った。
    「…触らないで」
     そのまま、ガタリと勢いよく席を立つ。しんと静まり返った教室で、扉の開閉される音だけが残った。瀬名、と呼ばれた青年はぶつぶつと喋りながら廊下を歩いていく。
    「チッ…どいつもこいつも、本当にクソガキでうんざりする…チョ〜うざぁい!」
    (…また教室に戻り辛くなったじゃん。ほんと、チョ〜うざい…。屋上でも行こうかなぁ)
     夏の暑さは嫌いだが、春の温かな陽気は好きだった。日焼けしてしまうのが気になるところではあったが、どこも人が多く、他に行き先もない。屋上は本来立ち入り禁止だが、瀬名と今は不登校になってしまったその友人が、秘密裏に使っていた場所でもある。周りにばれることなく忍び込むのは、何度か出入りしていた瀬名にとっては容易なことであった。人目をくぐり抜けて淡々と屋上へ続く階段を登る。上に行くにつれ薄暗い道が続くが、今日はなぜか屋上の扉が開いているのか、少し明るくなっていた。
    (誰かいる…?)
     瀬名は足音をたてないようゆっくりと階段を登る。屋上の扉が見える階段に差し掛かったとき、誰かが階段に座っているのを見つけた。逆光で顔が見えない。学年だけでも見分けようと、上履きを見た。上履きはのラインは赤で、赤は一年生の色であった。瀬名は上級生じゃないことを確認し、階段に座り込んで、なにやらスマホのゲームをしているだろう人物に話しかけた。
    「ねぇ、邪魔なんだけど」
    「……」
     階段下から話しかけても、逆光に隠された人物は何の反応も示さなかった。瀬名は反応が返ってこないことに苛立ちを覚える。
    「ねぇ!あんた、一年生でしょ?上級生の俺が邪魔だって言ってるの」
     距離を少し詰めて、再び邪魔だと声をかける。すると、今、瀬名の存在に気づいたかのようにびくりと肩を震わせた。
    「ひっ…す、すみませんっ!すぐ、避けま…」
     逆光で見えないが、座り込んでいた一年生が勢いよく立ち上がった。それと同時によろけたのか、瀬名の方にぐらりと体制が傾く。
    「う、わぁ…っ?!」
    「!! ちょ…っ危ない!」
     瀬名は咄嗟に右手で階段の手すりを掴み、伸ばした左腕でよろけた人物を抱きとめた。ぎゅっと、手すりを掴む手に力が入る。間一髪で、階段から落ちずに済んだ。
    「この…っ」
     瀬名は落ちずに済んだことよりも、人の話を聞かず、さらにはよろけて転びそうになった落ち着きのない人物を叱責しようと抱きとめた方へ目を向けた。先ほどまでは逆光で見えなかった、彼の全てが見える。枝毛一つ感じられない亜麻色の髪が、屋上の扉から差し込む陽の光に照らされて黄金色に輝く。瀬名は、言葉を失い、思わず目を見開いた。抱きとめられた亜麻色の髪の青年がその体制を持ち直して、瀬名の方を見る。金糸のような睫毛に縁取られた新緑の瞳が、今は青縁眼鏡のレンズ越しに見えた。
    「…っ、ゆ、ゆうくん…っ?」
     瀬名は咄嗟に、その名前を呼んだ。顔こそ朧げだったが、太陽に照らされたこの亜麻色を、新緑色を、一度も忘れたことはなかった。ゆうくん、と呼ばれた人物もまた、その大きな瞳を見開く。
    「い、いずみ…お兄ちゃん…?」
     これが彼らの、二度目の出会いだった。
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    han_hanmo

    MOURNING深夜のお遊びで考えた学園パロ
    (泉と真、アイドルの面影はなし)
    (……暑い…)
     天高く上っている太陽の光が頭上から降り注ぐ。
     ジリジリと頭から焼かれていく感覚に、全身が燃え尽くされていくようだ。暑さによって、思考ごとドロドロに溶かされてゆく。陽の光を銀の癖毛がギラギラと反射している。少年の体がぐらりと傾きかけたとき、少年から遠く離れた前方から、銀髪の少年の名前を大きく呼ぶ声が聞こえる。
    『いずみおにぃ〜ちゃあ〜ん!』
     少年がその声にハッとして、手放しかけた意識を無理やり浮上させる。視界がボヤけている上に、やや暗くなってきているが、弟のように可愛がっている彼に弱さを見せるわけにはいかない、と一度深く深呼吸をして嫌な冷や汗を拭った。
    『はぁっはぁ…っ!ふぅ…ふぅ…!』
     遠くから急いで走ってきただろう少年が、その小さい肺で大きく息を吸ったり吐いたりしながら、さらさらの亜麻色の髪を揺らす。彼の髪は真夏の太陽に照らされて黄金色に輝いている。顔をあげた少年は、ほんの少し青い顔色をしている銀髪の少年とは異なり、健康的な肌色でほんのりと赤く色づいていている。銀髪の少年の様子を確認するかのように、大きな瞳が瞬く。綺麗な新緑色の瞳だ。銀髪の少年に向けて、にかり 2531

    han_hanmo

    TIREDいずみさんがぬうくんを取りたくてウジウジする小話 暇を持て余して歩いている時、「彼」を見つけた。
    「…うそ。もう期間終わってたんじゃないの?」
     黄金色に近いふわふわ毛並みの髪、大きくぱっちりと開かれた瞳は綺麗な緑色。彼のチャームポイントと言われている青い縁取りの眼鏡によって、彼の綺麗な二重がほんの少し遮られている。
    「相変わらずこの眼鏡、チョ〜邪魔なんだけどぉ…」
     こんな野暮ったい眼鏡なんて捨てて、ゆうくんの綺麗な顔をもっと出せば良いのに、と思うが、あの綺麗な顔を巡る、数々の大人たちの"たくらみ"のせいで、ゆうくんの心が砕けてしまったことを俺は知っている。俺はこの性格だからそうなることはなかったけど、だからこそ守ってあげるべきだったのだと今でも思っている。一度はモデル業から離れた遊木真くんも、今は少しずつ復帰しているようだ。いつかまた、二人で撮影に入る日が来るのだろうかと思うと、楽しみで仕方がない。が、ゆうくんの本業は俺と同じアイドルであり、彼はTrickstarの一員だ。今、俺が立っている目の前にはクレーンゲームがある。中に横たわっている"ぬいぐるみ"があるのだが、なんとTrickstarのユニット衣装を身につけている。以前か 1280

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