ちょっと自動サぐ♀『雨宿りホテル編』「やみそうにないね」
嵌め殺しの広いガラス窓から外を見ながら、ぽつりと呟いた。
室内にはわたしとサリエリさんの二人きり。小さな特異点で、元々同行サーヴァントが少なかったせいでもある。聖杯の持ち主の目星がない一方、大きな動きがないのは不幸中の幸いだ。
「依然通信も不調だ。やはり今夜はここで明かそう」
「そうだね……」
そうなると何より気にかかるのは、わたしたちが置かれている現状、具体的には建物だ。サリエリさんが現代日本の建築や施設に明るくないのは仕方ないとして、わたしの方は、ここがビジネスホテルとは異なる場所だということは、エントランスに掲げてあった看板の内容からも察していた。
一人でそわそわしてしまうけど、わたしたちが恋人同士だというのが幾らか救いにはなっている。もし過ちが起こっても何も変じゃない――いや、任務中なのは問題だけれど、緊急事態だし。うん。
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