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    kikhimeqmoq

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    イガと真夜 2024/11/13
    ポッキーゲームじゃないけどポッキー食べながらキスするやつです。

    #真夜
    #イガ

    ポッキー「真夜さん、お菓子食べます?」
    「……………食べる」
    最近、陽が落ちるのが早くなってきた気がする。自主練を終え、着替える頃には薄暗くなっていた。昼でも夜でもない時間だ。影で暗くなった鞄の中から、赤い箱とピンクの箱をそっと取り出す。雑に運んじゃったから、中身が折れてないか心配だった。今さら丁寧にしても仕方ないんだけど。
    「真夜さん、普通のと、いちごのと、どっちがいいですか?」
    「普通って?」
    いつの間にか隣にいた真夜さんが、俺の手元を覗き込んだ。涼しい風にのって、真夜さんの汗の匂いが微かに香る。なんだか風がくすぐったい。
    「ポッキーか」
    「ポッキーです。どっちがいいですか?」
    両手に一つずつ箱を持ち、改めて彼に尋ねた。少しふざけて箱をカチャカチャ踊らせると、ふふふ、と彼が小さく笑った。最小限の力で笑う真夜さんは可愛い、と思うのだけど、それを伝えたら、また小さく笑うのかな。
    「俺は普通のやつが好きだけど」
    「オレも!普通のやつが好き!ですけど……真夜さんに譲りますよ……えっ?」
    真夜さんは俺の手からポッキーの箱を素早く奪った。
    そんなことしなくても、普通のやつをあげるのに?

    驚きで固まっているオレの前で、彼はバリバリと音を立てて箱を開けた。乱暴ではないけど、丁寧とも言い難い手つきで箱を開けた真夜さんは、内袋も雑に斜めに開き、中から数本、チョコの棒を取り出した。
    「分けて食べたらいいから」
    差し出されたポッキーの束と、真夜さんの顔を交互に見つめる。あまり変わらない表情には、少しだけ呆れたような雰囲気があった。ひたいには「早く食べろ」と書いてある、気がする。
    バフ。ポッキーを折らないように、彼の指を齧らないように、気をつけ、そっとかぶりついたつもりだったけど、思ったよりも大きな音がした。でも、ポッキーは無事だ。一本も折れずにオレの口と彼の指を繋いでいる。
    上目遣いで真夜さんの顔を見ると、目を丸くして驚いていた。嬉しい。成功した。こうして驚いている顔が大好きだ。
    しばらくすると、ポッキーにかかる力が弱まった。屈んでいた背中を伸ばし、ゆっくりと頭を上げた。周りはもう暗い。
    咥えたままのポッキーを、上下にぴこぴこ動かすと、いい感じにコミカルに動いた。反対側が濡れていて、街灯の光でキラキラ光る。ここにいるのが綾だったら「新種の生物!」って笑うところなんだけど、真夜さんは。
    向かいの人を眺めると、さっきまで丸まっていた瞳はいつもの穏やかな形に戻っていた。じっとこちらを見つめている。何を考えているのか、何も考えていないのか。この人が黙っている時は、本当になにも考えていないこともあるし……。
    ふふ、と小さく笑った声がした。あれ?真夜さん笑った?
    訝しむ間も無く、真夜さんは棒の反対側を咥えた。顔と顔がぐっと近づく。彼のアホ毛がオレのデコをくすぐる。やばい。近い。
    サクサクサク。クッキーを齧るリスみたいな音と共に、彼の鼻が、口が、唇が近づいてくる。サクサクサク。おでこはもうくっついた。サクサクサク。真夜さんの鼻息が頬にかかる。サクサクサクサクサク。やわらかい……。
    オレの唇に触れた彼の唇は生き物みたいにうねうねと動き、ちゅ、という音と共にチョコ菓子の欠片を吸い込んだ。オレには溶けたチョコだけが残った。ぬるぬるとした甘い液を彼の唇に押しつけると、柔らかく、甘く、気持ちよく滑った。
    あ、ちょっと、だめ。
    離れようとした真夜さんの頭を咄嗟に抱え、口に口をぎゅっと押しつけた。口端から唾液がはみ出るのが分かった。ちゅるり。なんだか頭の奥がぼんやりとする。
    唇の隙間から舌を割り込ませた。中から彼の舌が迎え入れてくれる。絡めるとさっきよりも甘く、心地よかった。
    気がつくとふたりとも口周りがよだれ塗れになっていた。上手くできない。もっと格好よく、気持ちよく、したいのに。
    「言い訳みたいですけど、初めてで……その……」
    「大丈夫」
    真夜さんがオレの頭を抱え、囁いた。耳たぶがくすぐったい。笑いそうになって、我に返る。数秒前のことが夢のように思えた。
    しばらくはそのままにしていた。ふたりとも、ちょっと汗をかいていた。それから、そっと頭をあげた。目の前に真夜さんがいる。
    彼はいつも通りの表情の薄い、感情の読めない顔をしていた。
    「真夜さんあの」
    「ん?」
    「オレ、さっき言ったみたいに初めてだったんですけど」
    「うん」
    「真夜さんは……」
    真夜さんはずっと同じ顔をしてオレを見つめていた。
    もう、日は沈んでいた。彼の向こうに見える空は、目の前の人の瞳と同じ色だ。
    ふふ、と彼は小さく笑い、背を向けて荷物の方に歩いて行った。

    え!真夜さん!
    どっちなんですか?




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    「ちょっとー!」
    「目ぇ覚めただろ?朝飯作ってあるから早く顔洗ってこい」
    「うん」


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