君の瞳に恋はしない 〜a later story〜 つい先日まで、街中がクリスマスに浮かれていたというのに、過ぎてしまえば世は一気に正月ムードだ。シメナワ、カドマツ、カガミモチ。キャスターは今しがた覚えたばかりの単語を口にしつつ、興味深そうにきょろきょろと辺りを見渡している。直後、冷たい空気が鼻先をくすぐり、彼はくしゅんとひとつ、くしゃみをした。
「うー、さみぃさみぃ。昨日ここに落ちてきたときは暑いくらいだったってのに、今日はまたさっみぃなぁ」
身を縮めながら、ダウンのポケットに手を突っ込む元・死神は、鼻の頭を赤く染めている。本来ならばアーチャーの「卒業式」になるはずだったクリスマスまで、人ならざるものだった彼は、久しぶりの痺れるような寒さをどのように感じているのだろうか。
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