「お爺さんとお婆さんに、会ってくれませんか」
今思い出した、というように幻太郎が言ったので、俺はどう答えたらいいかわからず、右手に持ったガリガリ君を眺めながら、死ね、ということだろうか、などと思った。
「嫌なら別にいいですけど」
幻太郎はそう言って仕事に戻った。ガリガリ君を齧ると柔らかくて甘い。
「どういう意味」
「墓参りです。一緒に行きませんか」
「あー」
特に楽しいわけではないイベント、けれど幻太郎にとっては大切なことに誘われて嬉しかった。
「行くわ。どこだっけ」
普段あまり電車に乗らない幻太郎は、混み合った車内で不愉快そうにしていた。俺もあまり電車に縁がないので、ぶつかる他人の肩にイライラしたりしていた。
「次、降ります」
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