視線③ 見ていたよ悠仁達が卒業して2年が経った。
今日もまた医務室で仕事をする硝子の後ろで、スツールチェアをぐるぐると回していた。
「もう三十路かー」
「そうだな。お前はいつまで、そうしているんだか」
「はぁ?どういう意味」
「お前がここに来るのは、虎杖の話をする為だろ」
硝子に悠仁のことが好きだと話したのは、もう5年くらい前になるのだろうか。
あれから医務室を訪れるたびに、つい悠仁の話をしてしまう。その所為で、医務室に来る時は悠仁の話をしたい時という認識になっているらしい。
「別にー。たまに、恵から連絡くるんだよね。呪霊のこと以外にさ、律儀に悠仁の近況伝えてくるの」
「そうか」
「もう、どうでも良いのにさ。『昨日会いました』とか『好きな歌手がいるみたいです』とか、何でわざわざ教えてくるかな。どうでも良いのに」
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