張り切って行こう来週は近所の夏祭り。
釘崎が浴衣を着たいというから買い出しに付き合わされている。
「もうー、あとどこ見んの?」
「あと5件はみるわ。まだ何も見つけてないもの。」
「あと5件?!もう疲れたんだけど。浴衣選び悩みすぎじゃない?」
「はぁ?真希さんに見せるのに、かっわいい〜のにしたいんじゃない!妥協はできないわ」
「まぁ…そうか…」
釘崎は、真希先輩に浴衣姿を見せるために張り切っている。
でも、女の子の楽しみなんだろうとは理解できる。
男の俺が好きな人のために、浴衣を選んだところで、可愛いとはならない。しかも俺の好きな人は男だし、尚更女性の浴衣姿の方が良いに決まってる。
「まぁいいわ。一度休憩にしましょう。マックで良いわよね。」
「え、まじ?ラッキー!」
近くにあったマックに入って休息することに。
「あー今日もあちぃー」
「そうね。そういえば、あんたってあの変態と付き合ってるんでしょ。」
"あの変態"とは、五条先生を指すのだろう。
「うん、まぁね。」
「夏祭りの日は一緒に行くの?」
「あー、わかんね。その話はしてないな。先生、忙しいし。」
「へぇ、なら虎杖は浴衣着ないのね。」
「え?なんで?」
「なんでって、あんたも着ると思ったから、今日買い物に誘ったんじゃない」
「え?そうだったの?ただの荷物持ちかと…」
釘崎なりの優しさなんだと気づいた。
だから、まだ浴衣を決めずにお店を回っているのかとも気づいた。
俺が浴衣の類を全く買ってないから。
しかし盲点だったな。浴衣なんて着たことなかったし、誰と行くとか考えてなかったから、全く気にしていなかった。
「当たり前じゃない。荷物持ちは当然として、好きな人に一番綺麗な自分を見せたいでしょ。男でも変わらないでしょ、そこは。」
「いやー、まぁそうだけどさ。でも、俺の場合見せるの男だよ?着て、どう反応されるのが正解?可愛いとも違うしさ。」
「それが何よ。誰が相手だろうが、一番良い自分を見せたいと思うならそれで良いじゃない。」
釘崎はたまに確信をつく。
確かに、先生と休日に出かける時は、髪型変えたり、一番気に入ってる服とか選んでしまう。
「似合ってるね」って言ってもらうと、嬉しくなる。
「そして、いつもと違う雰囲気を見せて、さらに相手を惚れさせるのよ!」
釘崎はより一層張り切っている。それに自分も看過された。
「うん、そうだよな。分かった。俺もちゃんと探すよ!」
「よし、そうとなったら、買い物の続きよ!!」
ー尞、悠仁の部屋
買い物も終え、やっと自室に戻った。
買った浴衣を広げてみる。
釘崎に見立ててもらった、淡黄檗色(うすきはだ)の浴衣に、茶色に金の線が入った帯。
俺に似合うかはよく分からないけれど、友達に選んでもらったことが嬉しい。
先生に似合ってるって言われるかなとか、あんまりしない格好にドキドキしたり、更に夏祭り当日が楽しみになった。