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    空のRYO

    @kara_no_RYO

    弊ワットを旅しながら、腐健全に字書きの真似事をしています。
    メインは義兄弟、他複数。
    左右非固定。相手は固定気味かな…気分です。
    ここはメモやら、先読みやら、仮置きする場所になりそうです。
    完成品はpixivに投げています。

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    空のRYO

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    ※妄想・捏造警報発令中※
    公式様とは一切関係ございません。
    こちら、ディルガイです。

    月刊ディルガイ企画参加作品となります。
    『約束』『共闘』をお借りいたしました。

    お楽しみいただけましたら幸いです。

    あの日の約束に答えをください 偶然にも、アビス教団がモンド侵略を企んでいるという情報を掴んだ。

     当然、闇夜の英雄も知らないわけがない。


     だが、敢えてあいつには何も言ってない。

     その情報を吐いた魔術師には「俺が相手をしてやる」と告げ泳がせている。そのまま素直に持ち帰るなら氷属性の軍勢が俺を叩き潰しに来るだろう。


     さぁ、どう出る?

    ----------

     同じ時刻、同じ場所に反対方向からやって来て互いの姿を認める。ついでに城門に向かって来る魔物たちの集団も視界の端に捉える。立ちはだかるのが俺一人だと思ったのか、氷元素を扱う魔物が多いように感じる。

     …まったく。素直で可愛い奴らだぜ。

    「君が居ても足手まといになるだけだ。」

    「そう言うなって。…たまには隣に居たっていいだろ。共闘ってやつだ。」

     モンドに襲い来る魔物たちは、決してここから先へは通さない。そんな固い決意を宿した赤と青の視線が静かに交わる。

     夢だったのだ。当時騎兵隊長だった義兄をサポートするために、背中を預け合うために、相性の良い水か氷の神の目を持って隣に立つことが。

     聖遺物は出張や休暇を利用しては璃月を訪れ、地元の冒険者に手伝ってもらいながら集めた庶務長当時のものだ。今でも己に合うものを求めて一人秘境に通い続けており、二つほどより良いものに更新されたが。

     ついに来たのだ。

     いつかを夢見て集めた装備一式を身に着ける時が。

     西風剣と旧貴族の聖遺物。元素爆発を撃ち続ける必要はあるが、これでディルックの火力を上げられる。溶解ダメージも与えられる。後は、俺の氷柱を纏って敵陣に突っ込んで行くディルックの背中を守ればいい。

     少年時代から夢見ていたその瞬間の訪れに、永遠を夢見たい。

    「俺がお前を完璧にサポートしてみせる。何も気にせず存分に暴れてこい。」

    「フン…昔の通りだと思うな。」

    「何度お前の後始末をしてきたと思ってやがる。それこそ、昔の通りだと思うなよ。」

    「フン…」

     不敵に笑って大剣を構える。その昔、揃いで作った西風騎士団の大剣を。

     つい、目頭が熱くなる。

     きっと俺が居ると信じてくれた。より己を強化するために、元素爆発を撃ちやすくする武器。きっと聖遺物は、昔俺が命がけで揃えてプレゼントした『燃え盛る炎の魔女』だろう。

     結局俺たちは義兄弟であることを辞められない。

    「さっさと終わらせるぞ。」

    「用意はとっくに出来てるぜ。」

     顔を見合わせニヤリと笑う。

     同時に駆け出し、魔物たちの前に躍り出る。

    「凍れ!」

     先に氷元素をばら撒き、ディルックのための下地を作る。

    「風邪ひくなよ。」

    「火炎よ、燃やし尽くせ!」

     同時に元素爆発を起こし、一気に敵の数を減らしていく。近接攻撃の敵はディルックに任せ、遠距離攻撃からディルックを守る。最悪、こいつさえ無事ならここは守られる。

     飛んでくる石礫を、矢を、剣で弾き飛ばし、間に合わないものは己の体を盾にする。細かい傷が増えていくが、俺は多少は自力で回復出来る。問題はディルックだ。大きな怪我をさせたら退かなければならなくなる。出来る限り俺が受け止める。しかしディルックの目の前で暴れる敵にまでは手が出せない。

     次から次へと襲い来る魔物を斬り伏せながら背中合わせに立って問う。

    「大丈夫か?一旦引くなら…」

    「君の元素爆発が保つなら問題無い。君こそ大丈夫なのか?」

    「お前の背中を預かる以上、決して絶やしはしない。この膝をつくこともない。任せてくれ。」

    「無茶はするな。何かあれば声をかけろ。」

    「りょーかいっ!」

     再び元素爆発を起こす。ディルックの炎はまだまだ衰えを知らない。モンドを守る、たったそれだけでこれだけの力が出せる。きっとこいつはまだまだ戦える。この程度の怪我は怪我の内にも入らないのだろう。もっと苛酷な戦いを強いられていたはずだから。
     それに、昔から痛みには強かった。

     モンドへの強い思いを知っているから。ディルックが膝をつくことはあり得ないと信じている。俺さえ持ち堪えることが出来れば、ここは切り抜けられる。


    『いつか本物の騎士になって、一緒にモンドを守るんだ!』
    『約束だよ、にいさん!』

    『いつかこの武器を手に、二人で戦えたらいいのにな。共闘ってやつ。』
    『ガイアとなら絶対に負けないね!約束、僕は忘れてないよ。』


     子どもの頃の約束。騎士になった時の誓い。一瞬たりとも忘れたことはない。例え遠くで同胞が呼んでいようとも。

    「俺は、西風騎士団の騎兵隊長だ。決してここは通さん!」

     耳障りな呼びかけに、氷の刃を投げ付ける。

    「ガイア!」

     俺を呼ぶカーンルイアの言葉に気を取られ、注意が逸れていた。顔のすぐ脇を西風大剣が飛んでいき前方の魔物が崩れ落ちる。

    「何をしているっ!」

    「すまん。」

     しっかりしろ、とでも言うように俺を怒鳴りつけ、言葉が分からないなりに状況を察したディルックは俺に声をかける。

    「…行かせない。君は、モンドの騎兵隊長だ。僕の弟だ。忘れるな。」

    「…っ!……分かってる。忘れてないさ。」

     手元の片手剣をディルックに投げ渡し、氷元素で剣を作り出す。元素爆発を撃ちにくくなってしまうが、無いよりマシだろう。

     スキルを多用し、必死に元素粒子を作り出す。凍結反応を起こせればいいのだが、雨なんぞ降ろうものなら俺たちも危ない。何せ相手は氷元素を扱う者たちなのだ。

    「ディルック、少し離れるぞ。背中に気を付けろ!」

     声をかけて、離れる。

     俺が大剣を取りに行くのが手っ取り早いだろう。

    「戻ったら武器交換な!」

    「承知した。気を付けろ。」

     魔物たちだって知能が無いわけじゃない。ディルックの投げた大剣がそのまま放ってあるわけがない。

     単身、ヒルチャール暴徒に向き合う。斧をディルックの大剣に持ち替えてやがる。

    【返してもらうぜ、そいつは兄さんの剣だ】

     元素で作った剣では武器の耐久力が足りない。体格差を考えても、まともに打ち合っては分が悪い。どうしたってパワー負けしてしまう。

     …さて、どうしてくれようか。

    【お前は何故あの男の隣に立つ?あの男は敵だ。お前を殺そうとした。忘れたのか。】

    【何故そう言える?】

     …こいつ、なんでそれを?

     会話が出来るなら、そこから俺を落とせるとでも思ったか。

    【あの日、あの男はお前に火を放った。剣を振り下ろした。お前は同胞だ。我らが守る。こっちへ来い。】

    【そんな何年も昔の話は記憶に無いな。あいつは俺に遺された唯一の家族だ。】

    【違う。お前を殺そうとした敵だ。】

     奴らの言葉は理解出来るし話しも出来る。しかし。残念ながら、俺の心はもう、モンド人なのだ。何者にも奪われたくない居場所を、見つけてしまったのだ。

    「お前たちに何が分かる。あいつは!俺の!!兄だっ!!!」

     全力で突進してバランスを崩させる。

    「この瞬間、お前は…」

    「伏せろガイア!」

     元素を爆発させた瞬間、ディルックの声が飛んでくる。結局こうなるんだ。あいつは決して俺から目を離さない。一番のタイミングで最も欲しいものを与えてくれる。しかし日頃使い慣れない武器故かパワーが足りない。

     燃え盛るヒルチャール暴徒にもう一発スキルをお見舞いして大剣をもぎ取った。

    「ディルック!」

     奪い返した大剣を、渾身の力を込めてディルックに投げる。ディルックから投げられた片手剣は俺の背後を狙っていた。ひらりと躱してヒルチャールシャーマンを倒し、引き抜いた勢いで周りのヒルチャール共を斬り伏せる。大剣を受け取ったディルックは勢いそのままに重撃を放つ。

     互いに随分と傷が増えている。それでもこの氷が絶えることはない。ディルックの炎が消えることなどあり得ない。

     背中を預かる以上、決して心も膝も折れることはない。



     二人で満身創痍になるまで戦い続けた。何しろ数が多い。先に心が折れた方が負ける。そんな戦いだった。

    「これで、終わりだ!」

     残りの数体をディルックが一気に叩き斬った。その背中を狙う最後の一体に、氷の刃を叩き込んで、ようやく戦闘が終わる。

    「ハハ、俺たちの、勝ち、だな…」

    「ガイア!」

     少々、血を流しすぎた。少々、元素力を使いすぎた。

     俺は膝から崩れ落ち、そのまま意識を失った。

     しばらく地面と仲良く出来そうだ。

    ----------

    『俺たちの勝ちだな…』

     そう言って笑ったガイアは膝から崩れ落ちた。

    「ガイア!」

     咄嗟に抱き止める。ぬるりと手が滑った。随分と血を流したようだ。僕の背中はほぼ無傷。その分をガイアが引き受けてくれたのだろう。折れた矢が数本刺さっており、これはまだ矢尻が体内に残っているはずだ。早く処置をしなければ。

     ガイアをそっと抱き上げて、額に口付ける。

    「君のおかげで勝ったんだ。…ありがとう、ガイア。」

     多少の自己回復が出来ると言っても、それ以上の怪我を負っているのだ。元素爆発を撃ち続けると言う無茶をしたのだ。しばらくゆっくり眠るといい。

     ようやく訪れた黎明に、戦いの終わりを知り、もう一つの終わりを悟る。僕たちの、黎明の訪れを信じたい。



     ガイアのサポートは本当に完璧だった。

     気付かない内にガイアに観察でもされていたのだろう。昔と変わってしまったものも、今も変わらないものも、全て。

     僕が火力を出しやすいように氷元素をばら撒き、元素爆発でサポートし、飛んでくるものから僕を守るように立ち回っていた。欲しいタイミングで、欲しいものを渡してくれる。本当に戦いやすかった。


     そこに、あの子の真意を見出しても構わないだろうか。僕の炎を下地にして、自分で火力を出すことだって出来たはずなのに。あの子が選んだのは僕のサポート。

     昔と同じ、僕への献身。否、昔からずっと続くものだ。ただ、僕のために。役に立ってみせるから傍に居させてくれと、そう願ってくれたあの日のまま。



     もう一つの約束を、互いに忘れたふりをしている約束を、果たしにいってもいいだろうか。

    『もしも大きくなっても二人の気持ちが変わらなかったら、その時は…』



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