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    『無』

    @mu07k2

    好きなものは好きだけどあかんもんはあかん

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    『無』

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    まおりつ♀
    同棲中
    まおはアイドル、りつはアイドルじゃないです。

    #まおりつ

    「うわぁん…お兄ちゃんどこ?」
    「泣いてないでさ、ほら、外で遊ぶか?」
    「お外はいや…」
    「日陰で遊ぼうぜ?天気も良いしさ」
    「日が出てるならもっといや」
    「だから日陰でって言ってんじゃん。そうだなぁ…四つ葉のクローバーでも探すか?」
    「いらない。そんな物あったって…お兄ちゃんはいないもん…」

    …………
    妄想の域がとんでもないことになってるな。
    寝起きで疲れている。
    地方の撮影でホテルに泊まってるから、正直ベッドも固くてあまり休まってない。
    しかも個人の依頼でTrickstarの他のメンバーもいないし、それなりに心細さはあるのかもしれない。

    朔間先輩は凛月の話が出来る人が限られてるのもあるかはか、この前小さい頃の写真持ってきてて謎の自慢大会を繰り広げていた。
    小さい朔間先輩の後ろに更に小さな凛月が立って、ぎゅっと服を掴んでいた。
    可愛かったけども…そこから発展させた妄想の夢を見てしまった。
    想像上の凛月はベッドの上で縮こまって、兄を探して泣いてた。

    ……いや、妄想なんだけどさ。

    まだ寝てるだろうけど、とりあえず起きたメッセージ入れとくか…
    横に誰もいないのも久々だし調子狂うな。
    今日の夕方帰れるから頑張ろう。

    仕事が無事に終わって、新幹線と電車を乗り継いで最寄り駅から走って帰る。
    泊まりだったから荷物が邪魔だ。

    マンションのエレベーターで息を整えようと思っても駄目だな。久々な全力疾走だった気がする。

    「た、ただいま!」
    「ま~くん!?汗すごいけどどうしたの?」

    帰宅して玄関に立つ俺を見るなり、凛月は目を丸くしてタオルを取りに行った。
    慣れ親しんだ光景にほっとして、玄関でそのまま力尽きて転んでしまった。

    「体調悪い?」
    「いや」
    「あ、おかえり。びっくりして言いそびれたよ」
    「ふ~…帰ってきた…駅から走って疲れた…」
    「おうちは逃げないよ?」

    普段は俺に膝枕をせがまれるが、今日は俺が凛月の膝に頭を乗せた。
    頬に触れられる手が冷たくて気持ち良い。
    凛月のおかえりは落ち着く。お前もそう思っててくれてれば良いけど。

    「りつと離れて寂しかった?」
    「そうかもなぁ…」
    「走って帰ってくるくらいだもんね」
    「なんだよ、お前は一人を堪能してた訳?」
    「え~ひどい。寂しかったよ。でもお仕事頑張ってるなら言えないじゃん。
    それにお留守番は慣れてるからねぇ」
    「……あのさ、寂しかったら寂しいって連絡くれよ?」
    「何でそんなに今日優しいの?」
    「なぁ、一瞬寝ていい?疲れた…」
    「いつもと逆なんだけど」

    玄関で寝るとか普段しないけど…あまり肉付きは良くない膝枕で目を瞑る。
    この家での空気感や生活臭っていうのかな?そういうものがもう身に染み付いてしまっていて、安心感がすごい。


    「俺、いつもいい子にしてるのに面倒なこと押し付けられるんだ」
    「へぇ。信頼されてるってことじゃない?」
    「違うよ、俺が断らないからってだけ。それに、家でもお父さんもお母さんも妹の方が可愛いみたいだし。なら、せめて言われたことやって褒められたい」
    「ふぅん…でも嫌なことは嫌って言わないと。平気なんだって逆に放置されちゃうよ?」
    「何でそんなことわかるの?」
    「実体験」



    「……どのくらい寝てた?」
    「30分くらい。そろそろ足痺れてきたから起きて欲しいんだけど」
    「悪い」

    また変な夢見たな…今回は小さいのが俺だったけど…
    今はもう他人に構うのも頼まれ事を断れないのも性分になってるけど昔は嫌だけど褒めてくれる!っていうのはあったなぁ。
    俺達は根本は違うし寂しい…の種類は違うかもしれないけど、お互い昔は寂しい気持ちを持ちつつ過ごしてたんだろうな。
    俺はまぁ、遊んだり楽しいこともあったから凛月からしたら一緒にされたくないだろうけど。

    「ま~くん?」
    「はは…俺、寂しかったっぽいわ」
    「そう?…ふ~ん…嬉しい」
    「寂しいの感想が嬉しいってやばいからな」

    作ってくれていた夕飯を一緒に並んで食べてテレビを見て…
    なんてことない日常がすごく安心する。

    「俺さ、変な夢見たんだよ。小さい凛月と会ったり、逆に俺が小さくて今の凛月と会ったり」
    「なにそれ」
    「だから変な夢っつったじゃん。でも、年齢差が流石にヤバイから今の方が良いな」
    「ほ~んと今日は変なの。そうだ、お土産は~?お留守番寂しいの我慢して頑張ったりっちゃんをもっと甘やかして」
    「荷物開けてなかったな。お土産はちゃんとあるから」

    洗濯物が多いから今回は俺が回すか…
    甘やかせと文句を言う凛月も、俺の中で安心する要素になってるなぁ、と実感する。
    ぼんやりそんな事を考えてると本格的に「もう!」と拗ねだしたので、普段はしないが横に座る凛月の肩に自分の頭を置く。

    「え、何?」
    「今日お前、何って何回言ってんだろうな」
    「答えになってないから」
    「…凛月も留守番寂しかったかもだけど、さっき言ったけど俺も寂しかったから俺だけ甘やかしたらフェアじゃないじゃん」
    「散々帰ってきて早々に膝枕とかしたのに…」
    「それは別。疲れを取るために…的な」
    「…ま~くんがそんな屁理屈言うのも珍しい」
    「とりあえずゆっくり風呂入って、慣れたベッドで一緒に転びてぇかなぁ今は」
    「嬉しいけどほんとに調子狂うんだけど…!」

    珍しい表情で少し戸惑わせてしまってるかもしれないけど、俺も自分がこんなこと言うなんてなぁ…
    夢の中では二人とも寂しかったから、現実くらいたまには俺も甘えたってバチは当たらないだろう。
    もっと小さい頃に出会えてたら…なんて叶いもしないたらればを言うくらいなら、今出来るだけ楽しく過ごしたいし、今の話を沢山したい。未来の話も勿論。

    「俺、今楽しいよ。寂しかったとか柄にもないけど口に出しちまうくらいにさ。
    凛月もさ…もっと言ってくれよ?お前肝心な事は言わないからさ。俺も言われなきゃ気付かない事だらけだし」
    「…うん。でも、今ま~くんといるから。もう寂しくない」
    「そっか、俺も」
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