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    うず潮

    @uzushiono16

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    橙は箱推しなれど、ダイレオ強火勢。そしてダイもレオもポプも、それぞれが大好きな、小説書きです

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    うず潮

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    もちだぬさんハピバ企画で書いたSSです。
    でろずる、書いてて楽しかった~(*´▽`*)
    二人のあの恰好を思い浮かべるとドラクエって感じも出したくなり織り交ぜてみました。

    #でろずる

    めんどくさい二人のお宝探し「なんだい、さっきから。はっきりしないねえ」
     話しかけては何かを口ごもるでろりんに対して、ずるぼんは少し苛立ったように問う。それを受け、意を決したように、でろりんは話を切り出した。
    「…お前、誕生日だろ? なんか欲しいもんねえのかよ」
    「欲しいもの、ねえ……」
     あんたが一緒に過ごしてくれるなら、それだけであたしは幸せだよ──歯の浮くような台詞が彼女の脳裏をよぎるが、素直にそんなことを言えるなら二人の関係はとっくに進んでいただろう。ずるぼんの口から飛び出したのは、それとは裏腹の憎まれ口だった。
    「おや、なんだい? あんたが珍しいね。お宝でもくれるってのかい?」
    「お…おう。お前がそう言うなら、ダンジョンでも潜って来てやるよ」
    「……本気かい? じゃあ、破邪の洞窟ってあるらしいじゃないか。世界を救うきっかけになった呪文が眠ってたくらいだ。何かいいものがあるんじゃないかしらねえ」
    「おう、任せろ! さっそく今から行ってくるぜ」
     でろりんは、ぱあっと笑顔を見せると、すぐさま踵を返し洞窟へ向かっていった。

     それを見送ったずるぼんは、ふと後ろに気配を感じ振り返る。木の影にまぞっほとへろへろが潜んでいた。
    「おぬし、つれないのう……」
    「でろりん、大丈夫かな」
     情けない顔をして、まぞっほとへろへろが言う。
    「なんだよ、大げさに。戦い慣れしていないパプニカの姫様やら占い師やらが潜って、無事戻ったくらいなんだ。でろりんなら楽勝だろ?」
     破邪の洞窟をめぐる冒険は大戦後の世界で語り草となっていた。
    「そのパプニカのお姫さんはダイと一緒に大魔王と戦えるくらい強いんだってさ」
    「え」
    「占い師の女の子は予知が出来て、迷宮攻略もなんのそのだったらしいぞ」
    「カールの女王様も一流のムチ使いらしいし、そもそもあの武闘家の女の子が相当な強さじゃないか」
    「兄者から聞いたんだから、間違いないさ」
     まぞっほの兄弟子はあの大魔道士の師匠なのだから、それが情報源なら確かなことだろう。
    「そんなメンバーで行ってもやっとの思いで帰ってきたような場所なんじゃ。そんなところにでろりん一人を行かせちまって……」
    「あの勇者アバンだって、何ヶ月間もさまよってギリギリに帰還出来たくらいの場所なのに」
    「でろりん死ななきゃいいけど」
     涙ぐみながら口々に言うまぞっほとへろへろを見て、ずるぼんは途端に不安な気持ちが湧いてきた。
    「あたし、一緒に行ってくる!」
     ずるぼんは駆け出して行った。

    「あーあ、行っちゃった」
    「おぬし、大げさじゃのう」
    「まぞっほだって」
    「嘘は言っておらんからな。脚色はだいぶしたがのう」
     破邪の洞窟の深層は確かに危険な場所だ。しかし、モンスターは徐々に強くなっていく構造でもある。
    「浅い階なら大丈夫じゃろ。あいつだって偽とは言え勇者だ。それなりに強いんだし」
    「ずるぼんだって結構魔法力あるしねー。勇者と僧侶ならバランス悪くないな」
    「戦士と魔法使いのコンビよりよっぽどマシだの。二人で冒険を楽しんでくりゃええんじゃ」
    「誕生日デートだね」
    「それがワシらからのプレゼントになるかのう」
     好き勝手に語るまぞっほとへろへろだったが、これもめんどくさい二人を思うがゆえのおせっかいだった。

    「うぎゃ~!」
    ずるぼんが地下五階に足を踏み入れたところで、聞き慣れた叫び声が聞こえてきた。
    「でろりん?!」
     血相を変えたずるぼんが駆け寄ると、でろりんがミミックに襲われかけているところだった。咄嗟にずるぼんはマホトーンを唱える。その直後にミミックはザキを唱え不発となり、その隙をつき、でろりんは剣で攻撃をして難を逃れた。
    「大丈夫かい?」
    「お、おう」
     腰の抜けた様子のでろりんを見て、ずるぼんはくすりと笑った。安心した。どうやら大事無いらしい。
    「……ったく! 情けない勇者さまだねえ」
    「だってよ……魔法力尽きちまってインパス使えなかったからよ」
     だからあちこちの怪我もそのままになっているのか。得心がいったずるぼんはホイミをでろりんに向かって唱えた。
    「こんなところで魔法力が尽きちゃって、帰りはどうするつもりだったのよ」
    「それは……餞別だって、これを貰ってたからな」
     でろりんが見せたのは『おもいでのすず』だった。リレミトの効果を持つアイテムだ。
    「だから、ギリギリまでお宝探しと思ってたんだけどよ」
    「……くっだらない! 命が一番大事なお宝だろ?!」
    「それはそうだけど……約束したからな。お前の誕生日くらいカッコつけたかったんだよ」
    「…………」
    「ホイミ、サンキューな。やっぱりお前のホイミはよく効くわ~」
    「……アイテムあるんだろ? こんな危ないところからは、さっさとずらかるよ!」
     ずるぼんは、いつになく素直な言葉をかけてくるでろりんと二人で薄暗い洞窟にいるのが妙に気恥ずかしくなって、『おもいでのすず』を奪うように手にするとすかさずそれを使った。

     あっという間に地上にふたり降り立つ。
    「あーあ。せっかく五階まで行ったのに。勿体ねえな」
    「いいんだよ! これ以上危ない目に遭ってまで誕生日を祝ってもらいたくなんてないよ」
    「ずるぼん?」
    「あたしは……! あたしは、あんたが一緒にいてくれれば、それでいいんだよ!」
    「……!!」
     でろりんは、虚をつかれたような表情となり、ぱあっと顔を赤らめる。それを受けて、ずるぼんもはっと気づく。紛うことなき本音とはいえ、とんでもないことを口にしてしまった。
    「…………」
    「…………」
     二人で真っ赤な顔をして押し黙る。やがて、でろりんがポケットからごそごそと何かを出し、ずるぼんに差し出した。
    「……これ、やる」
    「え?」
     でろりんから渡されたそれは、青い石が光る小さいけど美しい───
    「……祈りの指輪かい? これは」
    「たぶんな。洞窟で見つけたんだ」
    「これがあれば魔法力を回復できたじゃないか……!」
    「お前にこれをやるって決めてたから、使いたくなかったんだよ。オレはともかく、僧侶のお前は魔法力尽きたら大変だろ。だからずっと身に着けとけ!」
    「ばか……」
     素直にありがとうと言えない自分が、ずるぼんはもどかしかった。顔が緩むのがどうにも抑えられない。頬が熱を持っているのがわかる。嬉しくて胸が締めつけられるようだった。悔しいけど、やっぱりあたしはこいつが好きなんだ──そんな思いが溢れてきて堪らない。

     ありきたりのアイテムとはいえ、でろりんから贈られた祈りの指輪は特別な輝きをしているように見えた。
    「どの指につけようかねえ?」
     へへへ、と頬を染めながら笑い、ずるぼんはでろりんに問う。
    「好きなとこにしとけ!」
    「じゃあ、ここにしちゃうよ?」
     そこは特別な人から指輪をもらった時にそれを嵌めるための指。冗談めかしつつも潤んだ瞳で微笑みかけるずるぼんを見て、でろりんは再び顔を赤くしながらボソッと答えた。
    「……お前がいいなら、オレは構わねえよ…」
    「えへへ……ありがとう」
    「お……おう」
     いつになく甘ったるい雰囲気となった二人が、そこにはいた。忘れらない誕生日になると、ずるぼんは思った。

     でろりんが見つけたお宝は確かに祈りの指輪だった。
     ただし、どこぞの勇者が鍛冶で強化し、さらにそれを手に入れた別の勇者が錬金術を施したいわく付きの代物だった。このようなものが手に入ってしまうとは、さすがは破邪の洞窟とでもいうべきか。

     どのような効果があるのかは、はてさて、このさきのお楽しみ───
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    Replies from the creator

    うず潮

    PAST高校生の頃に書いたドラゴンボールの二次小説です。
    セルゲーム直後のチチさんのお話。カプ色は濃くないですが悟チチです。
    Xでのフォロワさんとのやり取りから過去の作品が懐かしくなり掘り起こしてしまいました。
    取り繕ってもしょうがないので、あえて表現はほぼそのままです(分かりにくいところやおかしな表記は直しました)。
    高校時代の作文という観点で、拙さはお目こぼしいただけますとありがたいです😅
    LAST WISH ──最後の伝言── 初夏の風が木々の葉を揺らし、さやさやと音を立てている。そんな戸外の様子を、チチは窓からぼんやりと眺めていた。
     まだ本調子に戻り切らない身体をソファーに埋もれさせながら。今は亡き人のことを想いながら。

     悟空の死から、早や半年以上の時間が過ぎていた。
     もう悟空を想うとき、彼女の心に哀しみはない。その代わりに、懐かしさと愛しさによって満たされていくのが彼女自身にもわかる。

    ​ しかし、こう想えるようになるまでに、一体どれくらいの涙を流したことだろう──。


      *  *  *


     悟空の死を悟飯から聞かされた瞬間、チチの頭の中は真っ白になった。

    「……うそだろ? 悟飯ちゃん……何、嘘言ってるんだ……?  悟空さが死んだなんて、そんなバカなこと……」
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