「アルー、あれ貸してー」
「あれとはなんだ」
「はさみ」
「アーノルドの腕力で開かないものが……?」
「失礼なやつだな。で、どこ?」
「仕事部屋のデスクの上にある」
「取ってきていいのか?」
「どうぞ」
許可を得たので仕事部屋に入り、目的のデスクに近づいて、それに気が付いた。
「あれ、これ……」
どうにもデスクの上に似つかわしくないかわいらしいデザインの、空の瓶が置いてあった。ノイマンの記憶違いでなければ、まだ二人がカフェで時々会って話すだけの仲だった時にハインラインにあんたみたいだからと押し付けた、ラムネ菓子が入った瓶である。
あの時ハインラインは、ノイマンが言ったあんたみたいだからの意味はよくわからないと言っていたし、それは嘘でもなんでもないと思う。
1543