ギアステーションの長い廊下を歩いている時。ノボリはこの数日で、一番と言っても過言ではない憂鬱に苛まれていた。
外の天気は雨で肌にまとわりつく湿気が不快だし、気圧の影響で断続的な頭痛がする。眠気が前頭葉の付近で停滞して思考も回らない。
それらに加えてもう一つ。片割れであるクダリは今日に限って非番なのだ。
ノボリは常日頃から「愚弟」だの、「お前は全く」だのと口を酸っぱくしているが、心の奥底ではクダリのことが好きで堪らなかった。それは彼と同じで。気付いた時には、生涯を誓い合っていた。
そんな心を許せる相手が居ない。全く何も良いことがない、と震える米神を押さえつつ足を引き摺って執務室を目指す。
とりあえずこの休憩時間で少しでも寝なければ後が保たない。
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