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    kurono_tor1

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    kurono_tor1

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    ・パロディ
    ・全部捏造
    ・イカタコ二次創作

    イイダちゃんとフウカちゃんが同期の魔女な世界線みたいとか言っていた時に書いたやつです。

    魔法学校パロしたかったやつ 帝国騎士団の養成校の生徒が、うっかりサラマンダーを討伐したなどと言う噂が流れてきたのは秋の月が一つと半分回った頃の話だった。最近では教室、廊下、お手洗い、あらゆるところで似たような噂を耳にする事ができる。この帝国魔法女学校の古くて分厚くて薄汚れの壁に染み付いて浮き出てきそうなくらい、ここ最近の鉄板ネタはこれだった。
     サラマンダーというのは、猛火でさえ焼き尽くせないほど強い鱗を持ったトカゲのことである。魔女の間では爪や鱗が強力な薬になることでよく知られている。そのサラマンダーが『うっかり』倒されたというのは、大変な事件、を通り越して快挙だった。とは言え、新聞の端から端__大見出しの看板記事からコラムの片隅まで__のどこにもそんな話は載っていないのだから、どうせ好き勝手に尾ひれはひれがついたホラ話だろう。学生の噂というのは大抵そういうものである。大元はイタズラ好きの悪童たちが大型のトカゲを焼き殺したとか、そういう小さな出来事であったはずだ。
     ここはアホらし話しかせんのやねぇ。フウカは心の底で毒ついて、廊下でたまっていたおしゃべり女たちの集団を横切った。瞬間、彼女たちの姦しい口がぴたりと止まって、フウカが通り過ぎるのを確認してまたヒソヒソと動き始める。それらを全て見なかったことにしてフウカは廊下を歩くことに専念した。背を向けた集団の、気遣ったような声色が自然と耳に入る。__あのヒト、変なとこ真面目だからさ。貴族のお嬢様の割には、まあ悪いヒトじゃあないんだけど。
     この学校に入学してからもう何年も経っているが、先程のような根も葉もない噂話は消えては産まれ、産まれては膨らみを繰り返している。そのどれもが真偽が不明なまま忘れられていくので、なんだかやるせ無いような気もする。もう少し意味のある話もしてくれへんやろか。いちお、ここもエリート校なんやけど。名門の証である重く厚いローブを翻して、フウカはため息をついた。
     帝国魔法女学校は、その名の通り魔法の教育を施す為に国が作った学校だった。古来から男は騎士を目指すもので、魔法は女が扱うものである。帝国魔法女学校では、魔女の軍事転用を目的とした専門機関としての機能をこなしつつ、現代魔法の発展を志し開校された__というのが、この学校の一応の歴史である。
     各地方からここに集まったティーンエイジャーたちは、その誰もが地元で神童と謳われたような天才児ばかりで、そうでなければ古くからの魔法使いの家系に産まれた貴族になる。フウカはどちらかと言うと後者だった。とは言っても、雪ばかりの痩せた土地を広く管理しているような家系なので、周りの貴族からの扱いはあまり良くない。元々の気質もあってろくに友達を作らないまま、今日まで一匹狼を貫いている。
     そんな彼女に突然、大声が飛んだ。
    「あ!フウカさん!お久しぶりです!」
     フウカは反射的に頬が引き攣ったのをどうにかおさめて振り返った。長い廊下の、かなり奥の方で長身の魔女がこちらに手を振っていた。浅黒い肌とウェーブのかかった黒髪に、長いまつ毛に縁取られた煌めく瞳。名前をイイダ・マリネと言う。彼女は孤立気味の学園生活を送るフウカに積極的に声をかける数少ない人物のうちの一人だった。
    「お元気でしたか?カゼひいてませんか?最近寒いですから、気をつけてくださいね!」
     イイダは廊下をグングンと進んで止まっていたフウカに追いつくと、挨拶もそこそこに一気に捲し立てた。フウカはうっかり嫌そうな顔をしないように過剰なくらいにゆったりと微笑み、首を傾げる。赤い瞳がきゅっと細まった。
    「おおきにイイダはん。おかげさまでウチは元気どすえ。あんさんはどうなん?」
    「ワタシも元気ですよ〜ご心配ありがとうございます!」
     まあ、風邪はひかなそうやんな。かなり失礼なことを思いながらフウカは考えをクルクルと巡らせる。とにかくこの人の天真爛漫な雰囲気は、皮肉に囲まれ嫌味で育ったようなフウカにとっては辛かった。はっきりと否定することのできないフウカは今まで何度も彼女に意地悪をしてきたが、どうしてか持ち前の天然と誠実さで鮮やかに跳ね除けられてしまうので今のところ効果は見られていない。
    「それにしても、学校一の優等生が悪童のウチと話しててもええんです?」
     フウカは今回の自分の意地悪に満足しながらニヤリと笑って言った。我ながら、良い感じに気まずくなってしまうような話題選びだ。何しろフウカが悪童なのは正真正銘丸ごとホントの話で、その悪名は校内の人間であればほとんど必ず知られているくらいである。
    「優等生がウチみたいんに構ってたら、なんや悪巧みでもしてはるんやろかって思われるんとちゃいます?」
     畳み掛けるように続けると、流石のイイダにもこの理屈は効いたのかキョトンとして大きな目を瞬かせた。フウカは魔法学校のローブに合わせて作らせたレース編みの扇子をばさりと開いて目を細める。今まで全くこのことが気になっていなかったのだろうか。そうだとするなら、これからは随分気楽になるだろう。
     イイダ・マリネは学校随一の頭脳の持ち主だった。
     平民出身であるのにも関わらず、何故かどこぞの大貴族の娘と親しくなり(彼女はその人物をセンパイと呼んでいる)その大貴族が持つ図書館の魔法書だけで基礎魔法の習得に成功し、その頭脳を見込んだ大貴族のご当主から莫大な支援を受けてこの学校へと入学してきた。入学当初周りより年上であった彼女は飛び級に飛び級を重ね、今のフウカとは4学年の差がついている。特に魔法構築論には強い関心を持っているらしく、教授の贔屓で学会にも参加していると聞いていた。一方でフウカと言えば新しいものを発明するよりも古い文献を掘り起こし、その中の魔法を勝手に覚えて勝手に使ってみる__当然バレれば毎回怒られる__のが趣味で、学校のあらゆる侵入禁止の札を乗り越える大問題児であった。こんなことをしているので成績は全く良くない。実家に怒られないくらいには収まっているので、まあよしとしている。
     本来なら交わることのない二人なのにこうして一方的に話しかけられているのは、単に入学早々親切をしてしまったフウカの落ち度であった。アレを親切と捉えるイイダの方にも、まあ全く問題がないとは言えないけれど。閑話休題。
     イイダは何か自分の中で結論が出たのか、一人でうんうんと頷くと胸の前で両手を組む。すごく嫌な予感がした。
    「でも、フウカさんほど古語に詳しい方はいませんから!ワタシ、尊敬しているんです!」
    「それは、どうも」
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    kurono_tor1

    CAN’T MAKE⚠︎注意
    ・パロディ
    ・全部捏造
    ・イカタコ二次創作

    イイダちゃんとフウカちゃんが同期の魔女な世界線みたいとか言っていた時に書いたやつです。
    魔法学校パロしたかったやつ 帝国騎士団の養成校の生徒が、うっかりサラマンダーを討伐したなどと言う噂が流れてきたのは秋の月が一つと半分回った頃の話だった。最近では教室、廊下、お手洗い、あらゆるところで似たような噂を耳にする事ができる。この帝国魔法女学校の古くて分厚くて薄汚れの壁に染み付いて浮き出てきそうなくらい、ここ最近の鉄板ネタはこれだった。
     サラマンダーというのは、猛火でさえ焼き尽くせないほど強い鱗を持ったトカゲのことである。魔女の間では爪や鱗が強力な薬になることでよく知られている。そのサラマンダーが『うっかり』倒されたというのは、大変な事件、を通り越して快挙だった。とは言え、新聞の端から端__大見出しの看板記事からコラムの片隅まで__のどこにもそんな話は載っていないのだから、どうせ好き勝手に尾ひれはひれがついたホラ話だろう。学生の噂というのは大抵そういうものである。大元はイタズラ好きの悪童たちが大型のトカゲを焼き殺したとか、そういう小さな出来事であったはずだ。
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