ルノーの誕生日 前編 貴方の誕生日に何かしたい事はあるか、とルノーがアレインから聞かれたのは、冬が目前に迫ってきている晩秋の頃だった。戦いを終え、二人が恋仲となり初めて迎えるルノーの誕生日である。アレインは楽しそうに聞いてきたが、ルノーはと言えばこの歳で誕生を祝うのも、と複雑そうな表情を浮かべていた。
特にありません、と答えようとしてハタと止まる。そうだ、一つだけ、ずっと心に残っていたことがある。
「陛下のお時間はどれほど頂けますか?」
「どれだけでも、と言いたいがせいぜい二、三日くらいだろうか。」
国王に就任してからまだ半年程のアレイン、忙しい身でそれだけもらえるなら僥倖である。
「十分です。恐れ入りますが二日頂けますか、共に行きたい所がございます。」
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