ひとくち、いいですか? 鼻先で鳥の串焼きが揺れている。鳥肉の油の香ばしい香りと、香草の爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。まだ湯気を上げている肉の表面の、てりてりとした焼き色が視覚にもおいしそうだ。これがセレストの好物であることを、目の前の二人は知っている筈であった。
(これは、私が食べてもいいのかしら……?)
セレストはちらっと視線を前にやった。
「ギャメル~、ひとくちくれよ」
「自分で買えよな。それくらいの小遣いは持ってきてんだろ」
「手が塞がっちまってるんだよ。見りゃ分かんだろ」
マンドランが、両手に抱えきれないほどのリンゴの入った紙袋を、これ見よがしに大事そうに持ち直す。ギャメルがひょいっと片眉を上げるのが、彼の肩越しにも分かった。
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