主人とメイドなアシュラズ(サク)「ねえ、本当に行くの?」
身支度を済ませ鞄ひとつ分の荷物を持った私に、ナタリアは不安をにじませた声でそう問いかけた。
「もう決めたの。こんなチャンス二度と無いかもしれないし、ナタリアだってそれを分かって協力してくれたんでしょう?」
「……何も貴女自身が行動しなくても良いじゃない。危険よ」
そんなもの承知だ。でも、誰かに危険を押し付けて自分だけ安全な場所でのうのうと結果だけを待つなんて出来ない。
「大丈夫よ。いざとなった時の切り札もあるから」
まだ何か言いたそうなナタリアに別れを告げ、この地での活動拠点にしている隠れ家を後にした。
私、皇サクヤはこれから、父の命を、友を、この地──ホッカイドウを奪った張本人、ノーランド・フォン・リューネベルクの屋敷へと向かうのだ。
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