ほこらパロ ニョロパロ 何戸科湾を南に、西には隆々とした山脈があり、遠く東の平野まで裾を伸ばしている。西の大山脈の裾は低くなるにつれてだんだんとちぎれ、小山となって東の平野に点々と散らばる。その間を何本かの河が流れ、ぬかるんだ土地は耕されて田んぼになった。小山に登ればあたり一帯を覆う田畑を眺められたので、この平野を夕比礼江野(バタヒレエヤ)という。
さて、平野を流れる河のうちの一本、下流にとある村がある。この村には昔、外れにオウミという名前の若者が一人住んでいた。たいそう器量の良い男であったが、ある時から古い空き家に勝手に住みつき始めた流れ者でもあった。
この若者は始めこそ仕事を手伝おうと村の衆に寄ってきていたが、若者はあまりに畑仕事ができなかったのでそのうち相手にされなくなったのであった。
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