世界木4 自ギルド 会話文のみ◆人物紹介
・レイシ 青ウロビト♂ /20歳くらい
ギルド水紋が第四大地の木偶ノ文庫に挑むあたりで参入する。真面目で騒々しくビビり。初めて入った酒場で緊張していたところを、江ガスミに声をかけられ、そのままお持ち帰りされた。
四角いものが好き
・江ガスミ 金長髪ルンマス♂ /34歳
捻くれているおじ、お兄さん。口も手癖も悪い。酒場で1人おどおどしているレイシが可愛かったので親切めに声をかけ、そのまま宿に連れ帰った悪い人間。
・ヤカタブネ 髭赤茶メディ♂ /26歳
ギルドのまとめ役。面倒見良く他人のこともよく気にかけるが、健やかに鈍感でもある。知り合いや仲間からは「ヤカタ」と呼ばれている
・マホ 赤ナイシカ♂ /22歳(自称17歳)
川から流れてくる以前の記憶はないが、体に染みついた暗殺技術で仲間を助ける。自由奔放。ヤカタのことが好き♡
・チドリモン 褐色ツインダンサー♀/15歳
踊り子として働いていたが、無理やり冒険者になった。背伸びがしたい。ヤカタのこと、別に嫌いじゃないし。仲間からは「チドリ」「チド」と呼ばれている
①
ヤカタ
「今日からウロビトのレイシさんがウチのギルドに加わることになった。世界樹ももう根元まで来て、戦いもより苛烈になってきた。このタイミングで人員が増えるのは戸惑いもあるかもしれないか、きっと彼は力になってくれる。レイシさん、では自己紹介を」
レイシ
「我はウロビトの里より参りました、レイシと申しまする!おととい江ガスミ殿に声をかけられ、一夜」
ヤ「ゔん!げほん!」
レ「風邪ですかな?とにかく過ごし、状態異常をかけられる職のものとしてお誘いいただいた。不束者にござるが、皆様これからよろしくお願い申し上げまする!」
マホ「わー、青ーい!俺は嬉しいかも。ヤカタんとこにはこないんでしよ?」
レ「うむ!江ガスミ殿と同室にございます!」
チドリ「ふーん。まあ人が増えるのは良いんじゃない?よろしく」
レ「是非に!」
江ガスミ「……」
レ「江ガスミ殿も、なにとぞ」
江「怠い」
レ「え!江ガスミ殿も風邪か⁈」
②
江「ウロビトはもっと大人しい方々だと思ってたんですけど」
レ「え?しかしこの野菜スープの美味なること!街行きの組について行ったのは正解でございました!」
江「言葉遣いも変だし」
レ「これはイクサビ卜が使われているものを真似たものにござる!失礼ですぞ!
江「内省も知らないか」
江「だいたい、一夜限りのはずだったのに居残り続けるのがおかしい。まあウロビトにその辺の常識を求めるのは酷だと分かっていますが」
レ「居残った、というよりも、体が動かなかったのですぞ。激しい夜でしたな!抱き潰す、と言うのでございましょう?」
江「貴方達って弱い種族ですよね」
レ「それに、傷を負った我を野に放つのは可哀想だと、隊に招き入れたのはヤカタブネ殿にございまする。ゆえに居座ったわけではござらん」
江「それでも空気とか読んで辞退するものだと思いますけど」
レ「ふふん、我は介抱してくださった江ガスミ殿のことをよく覚えてございますよ。手ずから粥を食わしてくださった」
江「だから?」
レ「照れ隠しをなさってしまうような、かわいらしいお方を見つけてしまったわけでございます。手放す道理などございますまい」
江「ハア。まあ私も馬鹿を見るのは好きな方ですから、利害は一致してますか」
レ「うむ。では江ガスミ殿、末長くお願い申したてまつりまするぞ!」
江「まともな話し方を早く覚えてくださいね」
③
レ「我は民族学的調査も兼ね、ここタルシスに参りました。フィールドワークは自らの足でやる派でございます」
江「民ゾク学ねえ。対象は人間と」
レ「左様!しかし江ガスミ殿はさすが人間だけあって街にお詳しい!道に埋め込まれたこのレンガというものは土を固めて焼いたものだとか。固い道を作るためにわざわざ…いやはや人間とは暇な種族ですな!」
江「まあそうかもですね」
レ「江ガスミ殿もいつも暇そうで、羨ましい限りですぞ!」
江「ハ?」
④
酒場で愚痴る江ガスミ
「ウロビ卜のレイシさん、純粋無垢で可愛らしいですよね。この間も公道のレンガを剥がしてきて、一個部屋に持ち帰っていました。なぜか同室という理由で私まで怒られました。こういう人間に頭が及ばないところとか、本当にかわいいです」
⑤
レイシ「江ガスミ殿は我の見張りに任命されたとか!大変ですな!」
江「誰かが街のレンガ引っ剥がして盗んでこなければねぇ」
レ「そういえばなぜ人間は棲家を高く積むのでございますか?」
江「地震が起きないかつ狭い土地なんじゃないですか。または要塞か」
レ「江ガスミ殿は賢い個体ですな〜」
江「で、何でレンガ盗ってきたんですか?」
レ「良くぞ聞いてくださった!調査のためですぞ!資料集めの一環なのでございます!」
江「レンガは役に立ちましたか?」
レ「はい!取り上げられてしまいましたが…あの形と固さ。素晴らしいの一言に尽きる…!」
江「それはどのような観点から?」
レ「物としての良さといいますか、最高に興奮いたしました」
江「ふむ、学者名乗るのやめなさい」
⑥
江「今度は植木鉢を盗んできたんですか。元の位置に戻しなさい」
レ「いやでもこれは個人のものではなく街のものでしたぞ、ほら!」
江「私に室内で印術を使わせるつもりですか」
レ「もう、江ガスミ殿は大人気ないですなぁ。仕方ありませぬ。戻してきま、え、冷たい冷た!ヒィー!」
⑦
ヤカタ「例えば、人間がウロビトの里からフィールドワークとか言いながら、ザルとか壺パクったり、柱の塗装剥がしていたらどう思うんだ?」
レ「え?別に」
ヤ「1人だけじゃなくて大勢でやってきて物というものを盗まれたらどうだ?」
レ「あー、一部の怒りっぽい連中が殴りに行きそうですな!」
⑧
江「レイシさん、あなたにこれを」
レ「ネックレス?飾りがタグになっていて…これはギルド情報…もしやドッグタグというものですかな⁈」
江「あー?まあ街中で死ねばそうなるのかも」
レ「江ガスミ殿……我は、やっとギルドの皆さまの、一員にっ。ズビッ。うれぢいでずぞ!より精進を!重ねてまいりまする!」
江「気に入ってもらえたなら何よりです」
・前日
ヤ「レイシのやらかしで他のウロビトに風評被害がおよびかねない…。なんとかウチのギルド内の問題で抑えないと」
江「そんなら迷子札を持たせるとかは?」
ヤ「なるほ、迷子札?」
江「犬猫の首輪につけて保健所に連れて行かれないようにするためのタグです」
ヤ「タルシスに保健所は無いだろ。…でも万が一施設があった場合、レイシなら……あり得る…」
江「なかなか疲れてますね」
○9
戦闘
レ「方陣展開いたします!」毒!
・敵3体中1体毒!
レ「ふう、だんだんと我の方陣も効くようになってきたでござろう!」
江「そーですね。私の方で陣を張り直します」
・敵追加で2体毒!全員毒状態!
レ「……」
江「あ、印術使うターン減っちゃった。ねえ、レイシさん」
戦闘後
ヤ「レイシ、お前はちゃんと成長してるから、生きていてくれさえいれば大丈夫だから」
レ「は、はひ、理解じて、おりまず」ズビッ
ヤ「いきなり第4大地はきついよな。お前はよく頑張ってるから」
レ「ちり紙、ぐだじいっ」ズビーッ
○10
酒場
レ「我のサブクラスは江ガスミ殿と同じルーン使いにごさる!」
江「ウロビトも酔っ払うんだよな」
レ「聖印で江ガスミ殿のサポートをしておりまする!」
江「今のところのあなたの取り柄って、それくらいですもんね」
レ「江ガスミ殿の印術をぴこぴこ言わせておりますのは、この我!我なくして江ガスミ殿はぴこらん!」
江「雷の印術」
レ「い⁈いたー!」
○11
江「原始の印術ってそんな使い勝手良くないですね。これなら普通に属性の方を強化したほうが良さそう。というわけで休養します」
ヤ「敵も強くなってきたし、そういう積極的な目的なら構わん」
レ「江ガスミ殿の今のサブクラスは我と同じ方陣師でありましたよな」
江「んー?そうでしたね」
レ「今回も方陣師ですかな?」
江「いえ、インペリアルにしました。なんか強そうなので」
レ「え、方陣は」
江「元々ルーン文字使ってるんで、別にってかんじです」
レ「ほ、方陣」
○12
酒場で江ガスミに語るレイシ
レ「江ガスミ殿はもう少し協調性を学んだ方がよろしいですなー。我らウロビトはもっと皆に親切ですぞ。江ガスミ殿は自由奔放な人間の中でも、特に欲望に忠実で浅ましいので、滑稽で面白く大変趣深いのですが、時たまに心配になることもござりまする」
江「言いたいことはまだありますか?」
レ「あとはー、あの時陣を張ったのは江ガスミ殿の責任というかぁ。でも我に責任なすりつける言い方もしましたな?」
江「それで?」
レ「そういうとこ!いつかバチがあたりィっ⁈」電気!
江「印術って便利ですね。おやレイシさん、どうしました?急に。足攣りましたか?」
レ「うぐぐぐ〜っ」
○13
レ「だーれだ?」背後から目を手で覆う
江「…ウロビト」
レ「名前名前!え⁈逃げるでござるか!」
江「誰から教わったんです?」
レ「酒場で踊り子と客がやっておられるのを」
江「2度とやらないでください。化け物かと思いました」
レ「さ、差別!人間の本能の代表例!まさかこの目で見ることが叶うとは…」
○14
レ「ま、まさ、ま」
江「まさかホロウがウロビトの死体を傀儡にして遊んでいるとは思わなかった、ですか?まあー、衝撃的でしたが、それこそウロビトなら動じないのでは?」
レ「……おべっ」吐
江「そんな骨みたいな体でも吐き出せるものが入っているんですね」
ヤカタ「空気最悪だからやめてくれ」
○15
レ「江ガスミ殿〜、見ておりましたぞっ。街で困っていた我ら同胞を助くとは!あんなにウロビト風情と煩わしがっておられたのにぃ」
江「ああ。あの方は薄茶色い肌でしたから。青い肌ってホロウみたいで不気味なんですよね」
レ「あのような者が好みと」
江「あなたが気持ち悪いんです」
レ「ええ⁈」
別の部屋
レ「ヤカタ殿…」
ヤ「どうした」
レ「人間は好きな者に意地悪をするとお聞きします。感情が強まるほど、度合いも比例、ござるか?」
ヤ「無くは…ないのか?良くないけど」
レ「で、では、気持ち悪い、とまでいうのは…ぷ、プロポーズ…うひひひっ」
ヤ「…え、江ガスミ!またあのオッサンは!」
…
レ「江ガスミ殿!新居…あ、愛の巣、キャ♡は、どどこにしますかな?」
江「え?なに?アイス?」
レ「あ、愛す⁈だぁー!積極的すぎますぞ!そ、それにぃ、に、人間と?ウロビトとの?ここ、婚っ礼!はまだ未聞というかあ〜」
江「やっぱコイツ気持ち悪い」
○16
ヤ「部屋割かえようかな。江ガスミと一緒の部屋だと辛くねえか?」
レ「収集物に文句を言われるのは寂しいですな」
ヤ「あ、やっぱこいつを1人部屋にすんのはダメだ。いっそおれらの部屋にくるか?」
レ「そうすると今が2人3人で分かれているので、江ガスミ殿が1人残される、と?」
ヤ「そうなるな…」
レ「それは、それはダメでござる」
ヤ「レイシ」
レ「確かに江ガスミ殿はいい歳の大人で後は老いるだけなのにまだあんなに子供っぽくて距離を置きたくなるのは分かりますが、だからこそ1人にしてはならないのです!」
ヤ「そ、そうなんだけど」
レ「クズになるのはそれなりの理由が」
ヤ「レイシ!」
・
レ「そういえば、我らのギルドの唯一女子であるチドリ殿はヤカタ殿とマホ殿のお部屋で過ごされてますよな」
ヤ「はいそうです」
レ「ほう!」
ヤ「違うんだ!1人部屋だと逆に不安だって話になって!知り合いのところに行けばって話もしたけど!ギルドで固まってる方が何かと楽だって!」
ヤ「へー!」
○17
レ「今日は気球のジャンク!」
江「うーわ、錆だらけ。いい加減にしなさいよ」
レ「でも今回のは許可はいただきましたぞ」
江「そうですか。まあその辺にしておかないと、ホロウがやってくるかもしれないですし。こちらとしてはもう連れて行ってほしいくらいですけど」
レ「え、え…」ゴトン!ジャンクを床に落とした音!
江「ちょっ、床に穴!」
○18
ストーリーボス撃破
レ「皆で巨人を……。いまだ信じられませぬ。しかしあれは…偉業でありましたよな?」
江「筋肉痛が、ひどい」
レ「瓦礫をどかすのは一苦労でしたな。めんどくさがりで人嫌いな江ガスミ殿もよくご活躍された!ご褒美の湿布ですぞ!」
江「あんなの柄じゃないんですよ。でも帝国騎士もいるし、亜人も集まってるし、あの場で行動しなきゃ多分殺されてましたから」
レ「んふふ」
レ「そういえば、我の陣もそれなりに頑張っていましたよな?」
江「ああ、マホさんがばしばしやれてましたね」
レ「はい!マホ殿もお強いですなあ。チドリ殿も皆を鼓舞し、ヤカタ殿は場を見張りつつ、足止めに徹していらした」
江「あーはい」
レ「江ガスミ殿もですぞぉ。あなたの電光が止まないことが、どれほど皆の支えになったと思われますかな」
江「あの、そういう話、本当無理なんで」
レ「そ、そうでしたか。すまぬことを申しました」
江「口は災いのもとですからね。今後はあまり余計な口はきかないでください。湿布、どうも」
レ「江ガスミ殿」
江「雑談程度なら黙っててほしいです」
レ「……」
…
江「そういえば」
レ「はい!はい!なんですかな!」
江「うるさ。あの巨人を倒さなければならなかった理由、知ってましたか?」
レ「街が踏み潰されるからでござろう?」
江「ハ、馬鹿。でもあの会談のときにはまだ居ませんでしたっけ、あなた」
レ「それで、真の理由とは?」
江「亜人を供物にしないためだそうです。良かったですね、死なずに済んで」
レ「えっと、…江ガスミ殿も無駄口多い上に言葉選びがど下手くそ、あ、あ〜!痛っ!」
●19
闇国の殿
江「はあ、血糊ばっかりで嫌んなります。病気になりそう」
レ「江ガスミ殿がぁ病気?ご冗談が面白い!」
江「特にこんなことろでガリガリの骸骨みたいなのは不吉で見たくありません」
レ「そんな魔物おりましたか?あ、ラフレシア?…江ガスミ殿?無視しないでくだされ〜」
江「おやホロウですよ。だるいですね。ほら早く陣張りなさい」
レ「…ハひ」
江「何腑抜けてんですか」
レ「…」
江「さっきからなに?」
レ「ホ、ホロウ。また、やってきましたな…我を裁くために?」
江「ハ?自分をそんな特別に思えるなんて幸せな頭ですね」
レ「と、ということは、つまり彼らは皆を咎めるため」
江「なんでそっち……妄想でも巻き込むなよ」
レ「…ふふ、江ガスミ殿、ありがとう」
江(うわ、何笑ってんだコイツ…)
●20
江「つまりレイシさんはホロウが怖いんですね」
レ「そうでございます!」
江「自分と似ているから?色とか」
レ「びゅひっ、ぢがいますぞ!ウロビトは皆ホロウを恐れているのです!」
江「へー、じゃあ今度他のウロビトの方にも聞いてみます。本当なら探索の仕方も変えなければなりませんよね」
レ「わあー!やめー!!」
●21
江「イクサビ卜を作った人達は何もわかってない。ウ口ビ卜をみてみなさい、こんなに中身がみえる。こんなに中身が…」
レ「江、江ガスミ殿、今回は夜通しの探索で疲れましたよなっ。あと普通に気色悪いですぞ!」
江「ほら!骨!筋!う、ううぐう〜!ギィー!」
レ「ひ、ひいぃい〜っ」
●22
赤いブヨブヨ
マホ「美味しい!」
ヤ「食うな!」
レ「へえー!……確かに美味!ささ江ガスミ殿も!」
江「ウロビトに言われても説得力がありません」
マ「じゃあ俺が食う!」
レ「あ、ダメですぞ!これは江ガスミ殿の分〜!」
ヤ「愛されてるじゃねえか」
江「だから?この世には『お節介』という言葉があります」
ヤ「ホントあんたって大人げねえな」
マ「ヤカタも食えよっ」
ヤ「え、ゴブッ」
チド「ちょと、マホ!いきなりすぎ!ありえない!」
マ「うるせえな。ヤカタぁ、どう?」
ヤ「ゲホ、ゲホっ、あ、ああ、結構いける」
江「……」
レ「江ガスミ殿?もしや腹が痛いでござるか?」
江「いいえ。私も状況に応じた行動くらいはできます。それ、よこしなさい」
レ「…もし無理をしているのであれば、その…」
江「なんですか?同情のような仕草をされるのは不快です」
レ「そ、そうでごさいますな。無礼な発言、お詫びいたしまする」
ヤ「マホ、も、もういらないかな」
マ「大丈夫だ!もっと食え!」
ヤ「ほ、ほんと、お腹はち切れる…」
●23
ヤ「……この本」
江「これに登場する2つの使徒はイクサビトとウロビトのことですね」
レ「我らのことが載っていましたか?」
ヤ「ああ、うん。でも情報を振り返るのは帰ってからにしよう。ここじゃ落ち着いて考えらんないし」
レ「承知した!」
数日後、別階層
ヤ「なんてこともあったが…また別の使徒のことが書いてある本だ」
江「へえー、これは興味深いですね」
レ「他の使徒?我ら以外にも作られた種がおられるのですか?はっ、もしかして、帝国の彼ら…」
江「あっはっは、ちっがいますよぉ。もっと面白い方。いやあ、まさかね。ふふふっ」
レ「?」
宿 個室
江「ふふ、ふふ。面白いですねえ。レイシさん」
レ「うむ!して何がですか?」
江「第3の使徒、ホロウなんですって。あなたが嫌いなあの」
レ「へ」
江「ウロビトを参考にして作られたそうです。だから似てたんだ。それに後継なだけあって優秀で、あなた達より頼られていたみたいですよ?でも従順なのであれば、あちらの方が役に立ちそうですよね。ねえ?」
レ「そ、そうであったか。ならば似てるのも、無理はない」
江「手記を残していた人はね、ウロビトなんて弱いから本当は使いたくなかったそうです。でも上からの命令で渋々の運用。ああ、ホロウのほうには、研究の大事な成果物を守らせていたみたいです。あの森のホロウクイーンがいた場所、あそこに何がありましたっけ?」
レ「えっと…」
江「巫女でしょ?あなた方が大切にしていた子。神木の心でしたっけ。でもウロビト達は彼女を守ることが己の使命と考えていましたが、本当はホロウにこそ、その役割が与えられていた。つまりこれってどういうことだと思いますか?」
レ「で、でも、我は、巫女派では」
江「個の話はしていませんよ。ウロビト全体の話です。ウロビトって、本当は間違った役割を盲信していた。そんなことができるくらい暇なほど、役割なんてなかった。もしかしたら実は、捨てられた種なのかもしれませんね。ふふっ」
レ「我が、同胞のことを貶すのは、やめてくだされ……。皆、己の信ずる道に真っ直ぐ生きておりまする。それに、此度の一件でも皆尽力いたしました」
江「そうですね。大いに助けられました」
レ「では、なぜこのようなお話を」
江「なんででしょうね。面白くって。見た目だけじゃなくて、役割も虚だなんてね」
レ「そな、ことは……」
江「でも」
レ「え、江ガスミどの、もう」
江「ホロウって掟を破ったウロビトを襲うんですよね。掟さえ守っていれば襲われることはないとすれば、レイシさんは何か良くないことをしたんですね?」
レ「あ、や…」
江「罰当たり。いらないって、判断されてしまったんですかね?」
レ「ッ、ご、ご!ごめんなさい!」部屋から出る
江「あーあ、夜も遅いのに。わんぱくですこと」
翌朝
江「おや、レイシさん」
レ「お、おは、おようござ、」
江「戻ってたんですね。昨日は夜分遅くに飛び出してしまわれたんで、心配しました」
レ「は、はは。あり、がと、ごまっごっざす」
江「眠れてない?」
レ「は、はい。その通りにござ、ございま、す。て、てつ、つ、よなべ、」
江「大変ですねえ」
レ「あハ、アハはっ……」
●24
ヤ「レイシ、お前最近物盗むのやらなくなったらしいじゃん」
レ「はい!」
ヤ「成長し…まともに…成長したな!」
レ「はい!」
ヤ「でもなんか疲れてないか?」
レ「全く!」
ヤ「…本当にか?」
レ「はい!」
ヤ「……」
●25
マホ「レイシー、お前やなことあったの?」
レ「え、なにも」
マ「でもヤカタがなんか変だって」
レ「変、なのは…これが今のムーブでして。ほら、物集めよりも、今はゆっくり観察する時期なのでござる」
マ「昔のやなこと思い出した?」
レ「や、えと、多少?でも大したことではないでござるよ」
マ「震えてるー。おもしろーい」
レ「ふふ、ふふ…」
マ「ねえ、江ガスミのこと殺しちゃう?」
レ「ダ!ダダメ!ダメ!ぜぜぜった、ヤヤメテ!」
マ「いてて、肩痛いって。そんな力で物、掴めんだ」
レ「え、え、江ガスミ殿をいい今のまま!ひひひ1人にさせては、ダ、ダメ!」
マ「なんで?」
レ「き、ききっと寂しい人だからです。ダ、ダメ…」
マ「その根拠は?」
レ「……ちょくせつ、語られたことは…ござりません。でも、あんなに同胞を拒絶しているのは、きっとそうしなければならぬほど」
マ「自分が酷い目に遭わされてることから目を背けたいだけ。こじつけじゃない?」
レ「そのようなことはありませぬ」
マ「フーン。でもそうだったとして、あの人はそんなすぐに変わらない。お前が思い描く理想像にはならない」
レ「そうでございます。そうでございますよな。」
マ「あと案外想像よりそいつは孤独じゃないかもしれない。それでもいいなら、今まで通り肉穴でもやってればいい」
レ「はい」
マ「肩放して」
レ「も、申し訳ありませぬ」
マ「俺ね、ヤカタが一番大事。だからもしアイツが変なことするようなら実行する」
レ「それは、どうかご勘弁を」
マ「ならちゃんと見張っといて?今のレイシはさあ、頼りない。皮をかぶるならもっとちゃんとやって」
レ「承知しましたぞ」
マ「一応、頼りにしてるから」
●26
暗黒の殿
チ「探索も進んできて、薬の情報も集まってきたよ」
ヤ「でもまだ明らかに行けてない場所があるんだよな」
マ「氷のギミックかなあ」
江「あれから意外と何事もありませんね」
レ「え、へへ。良いことですな」
江「だといいですけど」
レ「ハハハ…」
…
ヤ「まずい、よりによって蛾型foeの近くで対峙とか」
レ「ホロウ、メイガスですな。陣を、陣を張って」
チ「ライデンジュウは消えたよ!」
マ「チッ!ライオンの首、とりきれなかった!くるぞ」
ヤ「焦るな、確実にやれ」
レ「確実に、確実に」
●27
数日後 街 宿
ヤカタの部屋で5人は寝ていた。
マ「はあ、死んだかと思った。ヤカタぁ、生きてる?」
ヤ「マホ、おはよう。俺も生きてるぞ。我ながら、不思議で仕方がないけど。チドリ、ケガはどうだ」
チ「う、う、うえっ」泣
ヤ「わかるわ、俺も泣きたい」
マ「ヤカター、オレのも診てよ」
江「ヤカタさんが一人あの噛み散らしを耐えて、動けない人を抱えながらも運よく逃げ道確保に成功。糸を使って帰りました」
レ「そ、そう、ですぞ」
江「本当に?そんなことが叶いましたか?私はそんなことは起きていないと思います。私たちはあの場で全員死んだ。今は、そうですね、夢でも見ているのでしょう」
レ「我が、捕縛しきれず」
江「今更なにを。弱音なら誰にだって吐けます。それとも全ての原因をあなたが背負ってくれるのですか?」
レ「元々そうでございましたので」
江「責任はどう取りますか?」
レ「ギルドを抜けるつもりにございます」
江「なにも補填しないわけですか。まあ、あなたらしいです」
チ「なに、あれ!なんで私生きてるの!」
ヤ「人は頑丈な生き物なんだよ」
レ「ヤカタ殿」
ヤ「なにレイシ、今ちょっと」
レ「お世話になりました。この御恩、一生忘れはいたしませぬ」
ヤ「ああうん。チド、ほらあの時取れかかってた俺の腕もくっついてるし、」
チ「うう、うー!ヤカダァ!うわーん!」
ヤ「ごめん、ごめんて」
●28
翌朝
レ「んーむ、ひもじい。少しお金分けてもらうべきでしたな!しかし我とて一介の冒険者、魔物討伐で素材入手くらい朝飯前にござる。ここはチョチョイと近くの廃鉱に行って、金稼ぎとまいりましょう!」
夜
レ「ひ、ひいー、疲れた!1人で魔物を倒し、解体し、運ぶ!普通に重労働でしたぞ!しかもあのあたりの素材はあまり高値では売れんのですな。まあ、一食分はゆうに賄えましたが!街で買った果物が、美味じい!」涙
レ「しかし我はその辺の草で生きながらえることも可能。ボッチの悲しきサガではありますが、今後は活用すべきでしょうな。近いうちに気球をいただけるように申請もしてみましょう。ウロビトにもこの街の人なら渡してくれるのではないでしょうか」
レ「星空は美しいですな。江ガスミ殿もよく窓や気球から空を見上げておられました。意外とロマンチックな方でございました」
レ「夜空といえば、濃紺はあの時のことを思い出します」
レ「まだ、巫女様が産まれて間もない頃でしたか。ホロウというものらと我らが対峙するようになってまだ日が浅い時期でしたから、まだ対策もあまり取れず、呑気に里の外を歩く者もおりました。それが我だったわけですが」
レ「それで、御神木の間までの道をフラフラと歩いているときに、運悪くホロウと出くわしてしまったのでしたな」
レ「ええ。幸いにも我は骸とはなりませんでしたので、大した出来事とはならずにすみました」
レ「あのう、暗い話はよろしくありません」
レ「そうですな。明日も早いでしょう。月ももう帰ってしまわれたようですから、我ももう寝ましょうね」
レ「寝付けませぬ〜」
レ「だって勝手に抜けてしまったのですよ。ぬわーっ、無責任だったかもしれませぬ!あと着る物も杖も、持ってきてしまって、ギルドの皆の財産なのに」
レ「それにこの首飾りまで…。なぜ我はこれを持ってきてしまったのか。ギルドを抜けたのだから、これを持っていては皆に迷惑をかけてしまいますぞぉ…」
レ「どうしよう」
レ「ん?あれ、は」
●29
ヤ「江ガスミ、レイシっている?最近見てないんだけど」
江「え?出ていきましたけど。3日前くらい?」
ヤ「え?え⁈な、なんでそれ言わねえんだよ!ってか、俺らまだ怪我も治りきってねえのに、あいつだって」
江「レイシさん本人がご挨拶なさってましたよ」
ヤ「聞いてねえよ!えっと、くそ探さねえと。マホ、手伝ってくれ!チドも動けそうなら協力頼む!」
数時間後
マ「いたよ。っていうか居場所が分かった」
ヤ「よ、よかったー!」
マ「ただ、なんか治療院にいるって。怪我してるらしい」
ヤ「いやま、そりゃあな…….」
チ「ねえ、血まみれで倒れてた青いウロビトの話が、一部の人の間で噂になってるみたいだよ。これってレイシなんじゃない?」
ヤ「え、そんなことになるような怪我だったか…?なんで」
治療院
ヤ「……話、聞いてきた。あいつの持ち物にドッグタグ、迷子札だったんだけど、があったのと、俺の話が合致することで知り合いだって認めてもらえた。ちゃんと街で情報管理してもらえてると、こういう時に助かるな。ハハ…」
マ「それで」
ヤ「声が出せないらしい。血の量は尾鰭だな。ただ怪我はそこそこ、派手だったって。自傷の可能性もあるらしいけど」
チ「レイシの怪我って、出てく前からそんなかんじ、だったの…?」
ヤ「いや、会話はできてた。逃走の時もあいつは走ることはできてた」
マ「今はできないんだ」
ヤ「ああ…。でも寝ていれば治るらしいから。ほら世界樹の恩恵も受けた土地だし。俺たちも治ったわけだし」
…
マ「ヤカタ、レイシの容態ってほんとうはどうだったの。チドの手前、話してなかったこと教えて」
ヤ「あー、高いとこから飛び降りたらしい。本人は、面会した時ひどく怯えてて話せるような状態じゃなかった。こないだパーティ崩された時より酷かった」
マ「何かから逃げてたとか?怯えに関しては、押さえ込んでいた感情が今になって表出しただけかもしれないけど」
ヤ「そうか、そうだったのかも。多分もう少し前から歪み始めてたのかもな」
マ「でもみんな精一杯だった」
ヤ「ちゃんと目を配ってればよかった。ごめん。悪かった。すまない…」
●30
ヤ「江ガスミ。最近、レイシの様子変だったよな」
江「そうですね」
ヤ「何でそうなったのか教えてくれよ」
江「私にも何がきっかけなのかは分かりません」
ヤ「俺もさあ、信用できないやつに命預けたくないんだが」
江「解雇します?」
ヤ「はン、お前って出会った奴の中で一番最悪だわ」
ヤ「レイシ、今話せないらしい。お見舞い行ってみれば」
江「私に行かせるんですか?一番最悪な奴に」
ヤ「ああ。行ってこい」
治療院
江「レイシさん、おやあ、たった数日でずいぶん変わりましたねえ」
レ「……う」
江「なんでも崖から飛び降りたとか?思い切ったことをしましたね。でもおかげで皆さんの気は引けたみたいで。いい具合の怪我ができて、良かったですね」
レ「……」
江「それにしても、罰って与えられると、こんな感じなんでしょうか」
レ「っ、ヒッ」
江「んー?あなたのことじゃないですよ。本当に自意識過剰ですよね。いやあなたのことではあるんですけど。所在が違うって話」
レ「ハ、ハア、ハッ」
江「いや、でも、あっさりしすぎてますかね?まあそれでも、大切なものはなんなのかは、お天道様は見抜いているのでしょうね」
レ「う、うぇえ…」
●31
さらに数週間後
江「レイシさん、復帰するそうです」
ヤ「復帰…」
レ「……」
江「陣は書けますね?」
レ「はい」
ヤ「物静かな人だとすればおかしいことはないが、でも」
江「レイシさんなんて最初からおかしかったでしょう。それなら今の状態でも、必要に応じて行動するなら変わりありません。それとも捨ててしまいますか?」
ヤ「いやしねえよ」
江「ですってレイシさん。よかったですねえ」
レ「……ふふ」
●32
ヤ「久々の暗黒殿だ。別にこんなとこ来なくてもいいんだけどな」
マ「薬の混ぜる順番のメモ、分散させてあちこちにおいてるの本当頭悪い」
チ「それで、あとはこの毒ガス部屋の奥だけ行けてないんだよね」
ヤ「ああ、ただいくつか抜け道になりそうなとこは見つけたから、あとは行けそうなルートから攻めて行けばよさそうだ」
マ「この部屋も全然歩けない。キッショ。いっそぶっ壊して煙の元消さない?
ヤ「い、いやそれは」
マ「この部屋にもメモあったら俺この建物燃やす」
ヤ「お……、ほら、仲間とこんな無駄なことすんのも人生の楽しみなんだって。な!」
翌日 暗国の殿
ヤ「そんなこんなでおそらく薬全種類とメモを見つけたな!」
マ「燃やす」
ヤ「やめろ油を撒くな」
●33
ヤ「今日は土地を荒らしてるとかいう青い竜に挑むぞ。タラバガニ美味かったな」
江「ここ最近は大物と戦ってばかりですね。自分達が世界を守らなくてはならない、という高慢さが生まれたのか。あの巨人を倒してから、皆少し気がおかしくなってしまったようです」
…
マ「解剖水溶液!早く!」
チ「じゃああんたが待ちなさいよ!ねえだから!ちょっとマホ、待って!」
マ「おっせーよ!斬っちまったじゃねえか!」
チ「あー!!なにぶっ殺してんの!!!」
江「冒険者って強欲で嫌んなりますね。ね、レイシさん」
レ「んー?」
●34
マ「なんだあの黒いドラゴン」
ヤ「封印が解かれたってアレのことか…」
チ「頭に響いた声といい、絶妙なダサさがマホみたい。夜に隠れる〜とかだっけ?」
マ「なんだと?テメェだっていつも貧相な体のくせに下品な格好しやがって、クソだせえ」
ヤ「おい2人やめろ」
マ「ハ?ヤカタだっておっさんのくせに瓶のフタ、口に咥えてて痛々しいんだよ」
ヤ「癖だよ悪りーな!戦闘時のことなんだから、仕方ねえだろ!」
チ「それこそ戦闘の時のマホって、カッコつけすぎててキモい!」
マ「殺すぞ」
江(醜いなー)
レ「我は、あの黒龍、江ガスミ殿に似ていると思います」
江「へ」
マ「なになに、どの辺?」
チ「知りたい、詳しく」
レ「皆から除け者にされているところ、とても、痛々しいところ。見ていて辛い気持ちになります」
マ「ほーん」
チ「へー」
江「こ、この…。スラングに侵されてるそこの2人は言葉通りに受けとってみなさいよ!」
マ「それでもボッチなんじゃん」
江「黙りなさい」
●35
江「レイシさん、この服あなたにどうですか。ウロビトの職人に仕立ててもらったものだそうです」
レ「え、はい。…良い品ですね。いただいてもよいのですか?」
江「迷惑料です」
レ「江ガスミ殿。ふふふっ、大切にいたします」
江(わ、笑ってる…。ホロウクイーンの目玉が使われていることは伏せとこう……)
レ「江ガスミ殿」
江「は、はい」
レ「あ、あと、ええと、大したことではございません。以前もこのようにドッグタグをいただいたと思いまして」
江「そういえばそうでしたね」
レ「あれを、いつか、その」
江「焦ったいですね、なんですか」
レ「ごめんなさい!あれもいつかお返しします!」
江「ハ?」
レ「なんでもないです!どうかご放念くださいませ!」
江「ねえレイシさん」
レ「は、はい……」
江「そのドッグタグ、本当はただの迷子札です。あなたの奇行が他のウロビト方に迷惑をかけるから、せめて責任の所在はうちのギルドにあると強調するためのものでした」
レ「ぅ…」
江「でもそれはずっと持っていなさい。それがあったからまたあなたはここに戻れたわけでしょう」
レ「……その、建前ならば、我は今すぐにでも」
江「レイシさん、私言いましたよね?その飾りはずっと持っていろと。それともまた勝手に抜け出して皆んなに迷惑をかけるのですか?」
レ「ちがっ、ごっ、ごめっ、ごっ」
江「はあ、全く。謝らなければならないのはこちらの方なのに。こんなにほっそいのに震えてしまって」
レ「んぶっ、ぐむむ」ハグされている
江「レイシさん、私に抱きつかれてしまえばドッグタグとやらも返せませんし、出て行くこともできませんね」
レ「ぶは!江ガスミ殿」
江「ならずっとここにいなさいよ。ギルドが嫌なら私の懐でもいいですよ」
レ「……江ガスミ殿」
江「逃げても、あなたは青くて目立ちますから、すぐに情報が集まって追いつけてしまうでしょう」
レ「では薄茶色になります」
江「なれませんよ、ばーか」
●36
歪んだ豊穣の木を倒した!翌日
レ「……」
江(一応再び厄災を払ったのだから、以前の彼なら「偉業でした!」などと騒いでたかもしれない)
江「レイシさん、昨日の戦いについてどう思っていますか」
レ「え?」
江「…」
レ「えと、江ガスミ殿……が、格好良かった。ふふっ」
江「……ほ、本当に頭大丈夫ですか?打ち付けていませんか?」
●37
江「ウロビトは一度人に捨てられた種だと思います。だから名に“虚”の文字がつく」
レ「はい…」
江「ただ、ホロウ達も捨てられた種なのでしょう。現在はモンスターとして扱われていますし、彼女らの名前も虚ろを意味しますものね」
レ「……」
江「今のタルシス近辺は、ホロウではなくウロビトを選んだ人間が勝利し、形作ったものだと思われます。だから世界樹の心を守る役割はウロビトに与えられている」
レ「え?」
江「一方ホロウ達も、研究者達からは成果物である世界樹を守るように指示されていた。それでウロビトと同じく心を守るために動いていたのではないでしょうか。ただそうなるとイクサビトのところに現れなかったのが…」
レ「待ってください、でも江ガスミ殿は以前、ウロビトが捨てられたのだとおっしゃられました。役割もなく、ただ勘違いしているだけとも」
江「あれはいじめたかったから言っただけですよ」
レ「ええっ。……江ガスミ殿…」
江「なんですか」
レ「さすがに、呆れました。この件に関してはしっかり謝ってくださいませんか」
江「えっ。……お、おこってる?」
レ「江ガスミ殿」
江「あ、あー、申し訳ありません。お詫びの品を用意してきますから…」
レ「ええ、どうぞよろしくお願いいたします」
江「え…っ⁈」
レ「何を驚かれていらっしゃるのですか?まさかまたご冗談だったのですか?」
江「いいえ!買ってきます!」
宿の外 街
江「お、怒ってた……。いや当然なんだけど……」
ウロビトが通りかかる
江「あ、そこのあなた!少しつかぬことをお聞きしてもよろしいですか!どうか人助けだと思って聞いてください!」
江「その〜、仲間のウロビトの方をとても怒らせてしまいまして、それのお詫びの品を選びたいのですが、ウロビトの方達にとって失礼に当たるものは渡したくないので……」
江「人間は謝る時、食べ物を渡すことが多いですかね?もちろん個人間の話です。消え物って残らないから処分にも困りませんし」
江「買える物でどうにかするのが間違い……その観点はありませんでした……。いやあ、それでも私が取ってこれるのはせいぜい平野の花とか、それこそ雑草と変わらないような……」
江「やはり私は人間なので詫びの品は買います!となると、もうだいぶ時間がない!長々とおつきあわせしてしまいすみませんでした!」
いつのまにか集まっていたいたウロビト達に江ガスミは別れを告げる。
夕方 宿
江「ヒ、ヒィー、疲れた!はあ、ええと、レイシさん」
レ「あ、江ガスミ殿、も、申し訳ありませんでした……詫びの品を買いに行かせてしまった上に」
江「私が!謝るんです。なんであなたが謝ってんですか。……レイシさん。あなたの種を貶したこと、あなたの存在を否定するような発言をしたこと、本当に申し訳ありませんでした。改めて自分の口で言ってみると本当に酷いことをしてしまいましたね。簡単に許されることだとは思っていません。ですから」
レ「違います!ごめんなさいっ!我が必要ないのは本当のことなので」
江「だから人の話は最後まで聞きなさいよ」
レ「でも我は要らないモノなので!」
江「人の話は聞きなさいって」
レ「でも我は!」
江「聞きなさいよ!!」
レ「でもっ!」
江「聞け!!!」
ヤカタ「うるさい」
江、レ「ごめんなさい」
…
江「では改めて。私はあなたに酷いことをしました。だからせめて謝罪をさせてください。許すかどうかはあなたが決めることです」
レ「我は、おそらく仲間を貶されたことが嫌でした。ですがこの饅頭が、あなたがウロビト達に訊ねた上で選ばれた品であるなら、もう水に流そうと思います」
江「そうですか。ありがとうございます」
レ「あ、このお饅頭美味しいですよ。江ガスミ殿も召し上がってください」
江「ではひとつ。そうだレイシさん。別に私はあなたのこと要らないだなんて思ってませんよ。ギルドの皆さんも同じだと思います」
レ「ええ、それは」
江「戦力としてではなくて友としてです。あなたが居なくなれば皆悲しみます」
レ「あ、ハハ…」
江「私は特に、嫌ですけど。あなたが居なくなるのは」
レ「……」
○38
チ「ねえレイシ、実際のとこ、江ガスミってどうなの?散々いじめられてたって聞くけど?」
レ「チドリ殿。いいえ、あの方は優しいのです」
チ「う、それは被害者が加害者を庇うやつ。ねえマホ」
マ「ふーん?江ガスミってどう優しいの?」
チ「ええー、マホぉ?」
レ「江ガスミ殿はたくさん苦しまれた方ですから、他人の苦しみを見抜きます。日頃は冷たく見えるかもしれませんが、それは繊細ゆえに心を守っているだけです。最後の最後は悪になりきれず、手を差し伸ばされてしまうのですよ」
マ「へえー」
レ「マホ殿もそのように思うことはあったのではありませんか?言葉を変えるなら、脆い人だと」
マ「あははっ、レイシもそうやって牽制したりするんだ。江ガスミのことそんな大事?」
レ「当然にございますっ」
マ「なんで?」
レ「我を放って置かずにいてくださるからです。恐ろしいことがあっても、寄り添って大丈夫だと言ってくださいます」
マ「でもいじめられてたでしょ?」
レ「あんな些末なことよりも、もっと苦しくて怖いことはたくさんございますよね」
マ「あるかもねー。ホロウとか?」
レ「…ええ。そのうちの一つですね」
チ「ね、ねえ、なんか、喧嘩ならやめてよ」
マ「ははっ、ごめんね。レイシが治療院に泊まってる間、あのおじさん毎日通ってたからさ。なんで?って思うじゃん」
レ「彼は優しい人ですから」
マ「ふーん、なるほど。なんか分かった。じゃあチド、ヤカタんとこ戻ろ」
チ「もうなんなのよ、マホは」
レ「マホ殿、ヤカタ殿のこと見守ってあげてくださいませ。チドリ殿はお二人の元で健やかにご成長なさいませ」
チ「え、え。う、うん」
マ「…意趣返しかよ。チィッ。もちろんそのつもり」
レ「あはは。それではまた明日」
○39
回想
レイシ、治療院に入院中の頃。とある日
江「レイシさん、お見舞いに参りましたよ。今日もひっどい隈。夜寝られてないんでしたっけ?」
レ「く、うぅう…」
江「ウロビトが弱ってると、本当に死体が動いてるみたい。不気味だから早く布団に潜ってくださいな」
レ「え、え…すみ、のの…」
江「なに」
レ「ほ、ほろ、う…」
江「居ませんよ」
レ「でも」
江「出てきても印術が当たれば奴ら死にますし。あ、でもメイガスは属性耐性高かったっけ」
レ「ヒッ、に、にげて!え、江ガ!」
江「騒がない。病室です」
レ「ヒィッ、ヒッ!イぎっ!ヤダ!嫌だ!」ベッドから落ちる!
江「あーもう。レイシさん暴れない逃げない。ベッドの、上!にっ、戻りましょうっね、と。はあ、私がのしかかってしまったから動けないですねえ?っ痛!この、暴れるな!」
レ「江ガスミ殿っ、にげて、にげて!我にかまっておられず!」
…
江「やーっと落ち着きましたかあ?なんで係の人誰も来ないんだよ」
レ「やっぱり……」
江「馬鹿。私が添い寝してやってるのに?ほら、目を閉じなさい」
レ「江ガスミ…の…」
江「別によくありませんか。もし本当にホロウがやってきて、あなたと私を殺したとして。そしたら悔いて悲しむ人は残りません。なら問題なくないですか?」
レ「そうなの?ですか?」
江「どう考えてもそうでしょ。ほら寝なさい」
レ「でも……」
江「でないと私の胸板に顔押し付けますよ」
レ「んぶむっ」
レ「眠」寝た
江「…ハア。昼間にこうして寝ても、またどっかで起きて結局寝不足なんですもんね。難儀。まあせいぜい、私がいるうちに寝ておきなさい」
○40
江「レイシさんが街から物を盗まなくなったのはいつからだと思いますか」
ヤ「空元気が始まってからじゃないのか。言動がおかしくなった頃だろ、お前が何か変なことを言ったらしいあと」
江「空元気はねえ、初めからですよ、あの人。物を盗まなくなったのは巨人を倒す少し前。まあそれも私が何か言ったからなんですが」
ヤ「ずいぶんと偉そうだな。ならこっちも教えといてやるよ。あいつ泣いてたぞ、お前に気持ち悪いって言われたとかって」
江「どの時のですか」
ヤ「チッ…プロポーズだとかって無理やり勘違いしてたな」
江「プロポーズ?……なんかそんな話で盛り上がってた日も、んん?あったか?」
ヤ「知らねえよ。覚えとけよそんくらい」
…
江「レイシさん。探しましたよ。こんな街はずれに、花畑があったんですね」
レ「ふふ。江ガスミ殿」
江「花を集めていたのですか」
レ「はい。部屋に飾ってもよろしいですか」
江「勝手に、なさい」
レ「この白い花。江ガスミ殿によく似合うと思うのです」
江「あ、…の。レイシさん。あなた、私のことが……、好きですか」
レ「んふふ。ふふっ。はい、好きですよ」
江「いつから」
レ「いつからは、分かりません。でもずっと焦がれておりました」
江「なんで、私なんかを」
レ「それも、分かりません。一番かわいらしかったのだと思います」
江「そうですか。……これでも結構罰当たりな人間なんですけどね」
レ「江ガスミ殿?」
江「どうでもいい話です。ほら気が済んだなら帰りますよ」
レ「はい、江ガスミ殿っ」
江「故郷もよく星が見える場所でした。広い海に空が映るので、一面が黒くなり、星が映えます」
レ「はい」
江「私はやはりあの空が一番好きです。だから今度一緒に見にいきましょう」
レ「…は、はいっ」
終わり!!