ポッキーゲームするデュエス「ねえねえ、今日は何の日か知ってる!?」
授業終了の鐘が鳴って昼休みになった瞬間、監督生がやたらテンション高く尋ねてきた。
「何って、11月11日だろ」
「そうなんだけど、そういうことじゃなくて!そう、ポッキーゲームする日だよ!」
さっきからそわそわしていると思ったら、これを言うためだったのか。
バンッと手を机について、やたらキラキラした瞳で語りだす。
「まーた監督生が変なこと言い出したよ。で、ぽっきーげーむって?」
「そんな名前のゲームは聞いたことないな……」
「ソレって食えるヤツなのか?」
エース、僕、グリムの三人は誰も知らない。グリムは相変わらず食べ物のことしか頭にないようだ。そう都合のいいゲームなんてあるわけな……。
「グリム大正解!食べられるゲームだよ!!」
「そうなのか!?」
びっくりして思わず大声を出す。監督生は動じた様子もなく、じゃーんと鞄からお菓子のパッケージを取り出した。大袋を開けると、中に複数の小袋が入っている。
「サムさんとこで売ってたんだ」
「へえ~。あそこ何でも売ってるね。開けていい?」
エースが小袋をひとつ掴んで開けた。
「細長いプレッツェルにチョコレートがかかってる」
「ウマそうなんだゾ!なあ、早く食っていいか?」
「駄目だよ。ゲームするんだから」
エースとデュースでやってね。そう言った監督生の鼻息が何故だか荒いように思える。偶にこの状態になった時は、大抵変なことを言い出すのだ。おい、本当に監督生の言うとおりにして大丈夫なのか。エースの方を窺い見るが、あまり気にしていないようである。
「どっちかがポッキーをくわえて、両端から食べ進めるの」
「へー、それで?どんどん顔近づいてくじゃん」
「先に折った方が負け」
「おもしれー」
それって、もしかしなくても口と口が触れ合ってしまうやつじゃないか?だが声に出すより早く、口の中にプレッツェルが押し込まれる。
「オレ、チョコついてる方がいいからくわえてて」
「むぐ」
抵抗する間もなくエースがポッキーを齧り始める。何を考えてるんだ!両端をくわえた時点で近いのに、そんな躊躇なく食べ進めたら……。すぐにエースがチョコレートのコーティングされた部分を全て食べ終わった。動きを止める。僕は最初から一口も進んでいない。
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。至近距離でチェリーレッドがニイ、と細められ、やっと揶揄われていることに気付いた。涼しそうな顔で僕が焦るのを見て楽しんでやがる。オレはいつまででもこのままで良いけど、とでも言われているようだ。だがここでエースの思い通りにすぐ折ってしまうのは腹が立つ。耐えろ僕。
監督生はなにやら叫びながらパシャパシャと写真を撮っている。ゴーストカメラって連写するようなものなのか。
「お前らいつまでやってるんだ?オレ様残りぜーんぶ食べちまうんだゾ」
グリムがジト目を向けてきて、我に返った。
「ッ」
「はい、オレの勝ちー」
高らかな勝利宣言。口内ですっかりふやけてしまったプレッツェルを飲み込む。
「もう二度としないからな」
「オレだって二度とごめんだね」
謎のダンスを踊り始めた監督生を尻目に、食堂へと足を向ける。散々な目にあった。次に同じようなことがあったら絶対に断る。そう何度もいいようにされてたまるかと決意を固めた、のに。
道すがら、エースが僕だけにブレザーの内側を見せてくる。内ポケットの中、さっきの小袋が覗いていた。
「っ、何考えてるんだ」
「監督生も喜んでたし、一袋くらいいいでしょ」
ねえ、後でまたしよ。
耳元で囁かれた甘い誘惑に、気付けば頷いてしまっていたのだった。