ストリツ成立前にブリッツがストラスの再護衛をする話「また護衛をお願いすることはできるかい?ブリッツィ」
いつもならすぐ出る拒否の言葉が出てこなかった。ファック!
「アー…………ストラス…、それは本気で言ってんのか?」
四つの赤い目が驚いたみたいにぱちぱちとまばたきする。なんだどうした。面白い顔すんな。
ストラスはホゥ…ともohともつかないと声を漏らしながら、お綺麗な指先を顔に持っていき考えるような仕草をし始めた。
なんだ?オレは何かおかしなこと言ったか?
いつも以上に四つの目全部にじっと見られている気がする。あまり見るなら金を取るぞ。
「おいス「では言い方を変えよう!」
ファック!せっかく金を請求しようとしたのに被せてきやがった!!
「個人的に出かけたい場所があるんだ。その道中私の命を狙う者がいたらその悪意が私に届く前に返り討ちにしてほしい。」
相変わらず回りくど言い方をしてくるが、言いたいことはわかった。
「勿論、もし返り討ちにする相手が現れなかった場合も、拘束時間分の給与は支払うよ。」
耳鳴りがしてきた。ストラスの声が遠くなる。
コイツは何考えてるんだ??目的も理由も全然わかんねぇ。お前に何のメリットがあるんだ?前の護衛は最悪だったはずだし、前回の救出依頼なんてオレはお前をーー「どうだい?ブリッツィ」
ストラスの声が聞こえたと思ったら目の前が真っ赤な光でいっぱいだった。ストラスの目だ。いつの間にこんな近くに来た?驚かせるな!
「近い」
ストラスの顔を引き剥がす。心臓の音が聞こえるはずはないが、聞こえそうで嫌だ。
「君の心が違う所に言っているのかと思って心配したんだよ」
ホウホウと音を漏らしながら言ってくるのがムカつくがいちいち相手にしてられるか!見物料は請求し損ねたが、殺しの依頼は本業だ。護衛よりずっと向いている。正直ストラスと2人で街歩きするのは気が乗らないので断りたいが、それ以上に引っかかる部分があってすぐに答えが出てこない。何が引っ掛かってるんだ。ゲロが出そうで出ないような気持ち悪さ。今どんな顔してる?ああ早く帰りたい。
ストラスがこちらの様子を伺う気配がする。目線だけ上げるとやっぱり赤い目がこちらの回答をじっと待っている。ああ面倒だ!!苦手なんだこう言うよくわからないことを考えるのは!クソッタレ!!
◇◇◇
結論。ストラスの依頼を受けることになった。
事務所でこの決定事項を告げれば、モクシーはターゲットが不確定だなんだと文句を言ったがオレ達はプロだ。契約すれば仕事をする。それでもまだ無計画だなんだとうるさいモクシーをミリーが宥める。ナイスミリー!そう、それでいい!!
「でもブリッツ、意外なのは確か!もう殿下の護衛は受けないと思った!」
「ミリー、間違っちゃ困る、護衛じゃない。暗殺の依頼だ!」
「同じようなもんでしょう」
「モクシー、お前はわかってないな!守るのと殺すのは全然違うぞ!」
モクシーのほっぺをつつきながら殺しと守りの違いを説いてやれば、きぃきぃ喚いたあと「わかりましたよ!とにかく仕事をすればいいんでしょう!」と納得した。よろしい!さすがマイプレシャスビッチボーイ!
◇◇◇
「ショッピングモールに行きたいんだ。」
地獄のプリンスの希望はルールーランドの跡地にそこそこ近い、グリードリングのモールだった。
「それは構わないが…お前がこんなところに用があるのか?」
「ンー…ちょっと色々見て周りたいんだよ」
答えになっていなかったが、これ以上追求したいとも思わないので「そうか」と答えた後は運転に集中する。
いつもの音楽をかける気にもならず、外の治安の悪さに反して車の中は妙に静かだった。