勢いと本音と酔い心 最初に覚えたのは、眩暈のような浮遊感だった。
あまり心地良いとは言えない目覚めに顔を顰めながら、慕情はゆっくりと瞬きをした。
もうすっかり日が昇る時分らしく、閉め切ったカーテン越しに白い光が差し込んで部屋全体を薄明るくしていた。
目の前にあるのはどう見ても自宅のアパートの天井で、背中に感じるマットレスの感触も間違いなく自分の布団の物だ。
「……………」
しかし、何故か違和感がある。ぼんやりと考えるが、昨夜帰宅した覚えも寝た覚えも無い。
ごろりと寝返りをうつ。
そこに風信はおらず、ただ空の布団があるだけだった。
掛け布団もシーツも乱れに乱れていて、着ていただろうシャツまで脱ぎ捨ててある。
それに苦笑とも呆れともつかない顔をしていると、向こうから物音とTVの音がした。
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