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    club_amo73

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    club_amo73

    ☆silencio seguir

    9月のisrnwebオンリーのサンプルです

    rnに片想いしているisgが空回りながらも
    rnを旅行に誘い出すお話です

    ※35巻出る前に書き始めてしまっているため、hor、krn、ykmyがBM所属になっています
    ※サンプルのあとはR18部分になります
    ※R18部分には♡喘ぎあります

    #潔凛

    罪と夏「あのさ……俺、凛が好きなんだ!」
    「え? 何言うてん?」
    「凛って凛くん?」
    「どうしたどうした?」
     ここはバスタード・ミュンヘンの食堂。昼食の最中、俺は氷織たちに宣言をした。みんなは俺に何を言っているんだという目線を向けている。あれ? もっと祝福してくれると思っていたのに。想像していた反応とは違う……。
    「あれ……? で、この夏、デートに誘う! それで凛に告白する!」
    「凛くんがデートにまず来てくれるかが問題やな」
    「そこは来てくれる前提なんだ」
    「潔、いけるいける」
     みんなが何か言っていたが俺は気にしない。まずは凛をデートに誘うことだ。オフシーズン入る前に連絡しなきゃ。今日練習終わったら誘ってみるか。
     ──凛、オフシーズンのどこかで一泊二日とかでどっか行けないかな……? お願い! 次のW杯も控えてるし、一度凛と話がしたくて!
     なんて、サッカーをダシに凛を誘ってみた。
    「で、凛くんから返信は来たん?」
    「来ない……何日待っても来ない……」
     あれから数日返信を待っているが、返信はない。元々凛は返信が早いほうではないので、期待をしていないといえばしていないほうではあった。でも、こういった返信は早く帰ってきてほしいと願ってしまう。
    「これはダメなんじゃ……」
    「雪宮、しっ、しっ!」
     雪宮が最悪のケースを言う。え? 俺、もしかして振られた? まだ告白もしてないのに? いや凛のことだから返信してないだけ──……。
     その時、ピロンとスマホの通知が鳴る。通知欄を見ると、凛からだった。俺は急いでメッセージアプリを開く。
    「あ、凛くんから来たんやな」
    「みたいだね」
    「どうだった? どうだった?」
     みんなも俺のことを気にしてくれていたらしくこちらを覗き込む。
    「えっと……8月、日本にいるからそのときならいい……だって……」
     凛からの返信に胸が高鳴る。凛と日本でデートか……どこがいいかな……やっぱり海……?
    「なんか要望多いね……」
    「まぁ、凛くんらしいんやない?」
    「凛らしい、凛らしい」
    「えー悩むなぁ……どこがいいかな……みんなはどこがいいと思う?」
    「えーそれは潔くんが自分で考えることやない?」
    「それはそう」
    「同意同意」
    「え、待って! 一緒に考えてくれないの!?」
     薄情な三人に俺は唖然とする。
    「がんばりや〜」
    「頑張って潔くん」
    「潔、がんばれ、がんばれ」
     そう言って先に食べ終わった三人は食堂を出て行ってしまった。残された俺は一人項垂れた。しかし、へこんでいる場合ではない。凛に、喜んでもらえるようなプランにしなくちゃ。このままじゃダメだ。俺はそう心に誓った。

     それからというものも、練習の合間には日本の観光地を調べまくった。やっぱり夏といえば海かな? プールでもいいなかな? うーん……やっぱ海! そして海といえばあそこかな……と俺は目的地を決めたので、次はホテルを調べる。凛にあのあと泊りでもいい?なんて調子に乗ったメッセージを送ってみたら意外にもOKしてくれた。幸いにもまだ二ヶ月も前なので、いくつかホテルは空いていた。
    「お!このホテル、オーシャンビューでいいじゃん」
     その中でもオーシャンビューが売りのホテルを見つけた。こんなオーシャンビュー見たら、凛も喜んでくれるかも。そしたら俺のこと凛だって好きになって……──。
    「やばっ、想像したらやばいかも……」
     日本語が支離滅裂になるくらい俺は興奮していた。当然その夜は凛でヌいた。
     想像の中の凛は、俺の下で可愛く鳴いていていつもの凛のギャップが堪らない。しかも「いさぎっ♡」なんて、俺の名前を呼んでくれる。それだけで俺のペニスが熱くなった。そして俺は想像上の凛の顔に白濁をぶちまけた。

    ***
     
     あっという間にオフシーズンに突入し、八月のその日までもうすぐとなった。凛に、東京のとある駅で待ち合わせするように伝えると、"了解"とだけ返ってきた。ちなみに目的地は内緒だ。凛にはサプライズと伝えてある。
     ──凛も楽しみにしてくれているといいな。
    「そろそろ出るか……」
     車のエンジンをかけ、俺は出発した。凛と過ごす二日間にワクワクが止まらなかった。首都高を抜け、待ち合わせの駅の最寄りのインターで降り、車を進めた。
    「おはよう、凛。今日はありがとう」
     ロータリーで凛を車で迎える。日本に置きっぱなしの車だから、昨日丁寧に洗車したし、中もピカピカに仕上げてきた。
    「潔がなんか誘ってくるからのっただけだ」
    「いや、ほんと嬉しいよ。それに凛とは一度しっかり話してみたいって思ってたし」
     アクセルを踏んで出発し、すぐに高速に乗った。
     俺たちはU20W杯優勝後、それぞれのオファーのあったクラブに所属することになり、接点があまり無くなってしまった。それでも俺は、返信がないことは理解しつつ、凛への連絡は取り続けていた。ずっと凛を思い続けていたから。そしてようやく今回のデートに漕ぎ着けることが出来た。
    「いや、俺たちってお互いのこと全然知らないじゃん。もっとお互いを知れたら、もっと良いプレーになると思って」
    「くだらねぇな……」
     どんどんと俺は加速していき、法定速度に達した。すると凛は無言で俺のカーナビをいじる。すると俺もよく知ってるアーティストの曲が流れてきた。
    「なんでこの曲チョイス……?」
    「悪いかよ」
    「いや……単純に疑問?」
    「……好きだから。好きなアーティスト」
    「そうなの え、意外かも! そういうことが知りたかったんだよ〜! じゃあさ……他に好きなものは?」
    「鯛茶漬け」
    「鯛茶漬け 渋くない? あ、でもさっぱりしてていいよね! 俺はねぇ〜きんつば! あの不思議な生地とあんこの食感がたまらなくてさ……」
    「ふーん……」
     凛は興味無さそうだったが、俺は話を続けた。意外と凛も聞けば答えてくれたので会話が弾んだ。あっという間に、高速を抜け、下道へと入った。
    「うるせぇから寝る」
    「え 凛 もうすぐ着くんだけど」
     そう言うと凛は眠ってしまった。監獄時代は気づかなかったけど、凛は寝つきがいいらしい。カーナビからは、凛が好きだというアーティストの俺の知らない曲が流れている。有名なやつだけじゃなくてもいい曲多いんだな、流石だなと思った。
     そうして凛の好きなアーティストの曲を聞きながら、俺はカーナビ通りに道を進んだ。
    「凛〜、起きて。とりあえず目的地着いた」
    「んん……」
     なかなか凛は起きない。寝起きは最悪、と脳内にメモをする。そういえば二次選考のときの部屋でこんなやり取りをしたっけと思い出す。ようやく起きた凛を連れて、目的地へと歩いていく。
     目の前に広がるのは、青い空、青い海、そして白い砂浜! そしてかの有名な小島があるここは、そう! 江ノ島だ!
     いやぁ、やっぱり夏といえば海! 海と言えば江ノ島! みたいなところあるからね? これは凛もこれは喜んで……──。

    「……地元じゃねぇか」

    「……え?」
    「地元だっつってんだよ。ここ」
    「……ええええええええええ 凛って湘南出身だったの……」
    「正確には鎌倉市。でも江ノ島も近所だからよく来てた」
    「……」
     開いた口が塞がらない。いや、ほんとに凛のこと知らなさすぎる。こんなん最初に聞いておけば分かった話だし……聞かなかった俺が悪い! でもそれにしてもこれはやらかしにも程がある……。
     ダラダラと背中に暑いのに冷や汗が流れていく。どうにか挽回しなきゃと頭の中のピースをパラパラさせる。
    「……え、ごめん……ほんっっっっとうにごめん」
     俺はその場に土下座した。こんな調べれば分かることなんで気付かなかったんだ。
    「……別に……なら、いい……」
    「え?」
     顔を上げると凛はしゃがんで俺のことを見下ろしていた。やばい。その見下してくる感じヤバいかも……。
    「早くしろ。あちぃんだよ」
    「あ、うん……」
     凛に促されるまま、俺はビーチへと歩いていった。二人とも水着に着替えたら準備万端。それからビーチパラソルを借りて、それをひょいっと立てて、持ってきたレジャーシートを引いて完成!
    「よし! 凛! 海行こ!」
    「行かねぇよ。俺はここにいる」
    「なんで せっかく江ノ島来たのに 足先だけでも入らない」
    「さっさと行け」
    「えー……」
     俺は一人で海に向かった。この歳になって一人で海に入っても楽しくない。せっかくなら凛と入りたかった……そう思いながら水に足を付けると、ぬるくてあまり気持ちいいものではなかった。もしかして凛はこれが嫌で……──?
     俺は悲しい気持ちになりながら、凛の元へ帰ることにした。
    「り……──」
    「お兄さん! イケメンですね!」
    「あの〜良かったら私たちと遊びませんか?」
    「は?」 
     凛がナンパされてる……? 水着の爆美女に……? 凛が危ない!
    「ちょ、ちょ、待って! 今日は俺たちだけで遊ぶ予定だから……」
     慌てて凛と爆美女二人組の間に割って入る。
    「なに? ……てか、こっちの人、なんか普通じゃない?」
    「うん……なんか平凡って感じ……」
     ズバズバと俺の心を抉る言葉が飛んでくる。普通、平凡……どれも心当たりがありすぎる。
    「あの〜お姉さんたち? 聞こえてますよ?」
    「あっ! じゃあちょうどいいからお兄さんもいっしょにどうですか〜」
    「ねぇ! もしかして、こっちのお兄さんって、サッカー日本代表の糸師凛じゃない? ねぇ、お兄さん、そうですよね?」
    「は?」
    「ちょっと! 凛!」
     やばい凛がキレ始めている。これは凛をどうかしなきゃやばい。とりあえず逃げるか……? でも逃げられそうな場所は海の家ぐらいしか……。
    「あ、あの〜今日は俺たちだけで遊びに来たから遠慮してくれるかな……?」
    「え〜」
    「さっさとどっか行け、ブ……」
    「待って! 凛! それはヤバいから!」
     凛を必死に女の子たちから離して海の家に逃げる。女の子たちも追っては来ないみたいで、俺はそっと胸を撫で下ろした。
    「凛! さすがにブスはマズイって……」
    「は? ホントのことだろ」
    「とにかく! 凛は自分が顔が知られているってこと自覚して!」
    「……」
     凛はぷいっとそっぽを向いてしまった。やばい、凛の気を損ねたかもしれないと、凛と声をかけると、やはり凛はそっぽを向いたまま。美人の不機嫌は怖いなんて聞いたことあるけれど、間近で見ると本当に怖い。
    「……あのさ、お腹空かない?」
    「…ん」
    「ほら!とりあえずなんか食べよ!」

    「いただきます!」
     ふたりで焼きそばを食べることにした。こういう海の家の焼きそばってなぜか食べたくなるんだよなぁ……。俺は味わって食べているが、凛はあっという間に食べ終わっていた。一緒に頼んだウーロン茶を飲んでいる。その飲み込む瞬間の喉元とか、なんかエロい。凛に対して、エロいなんて低俗な言葉で現してはいけない気がする。芸術? なんて名付けてみる。
    「おい、潔早くしろ。何見てんだよ」
    「あ、ごめん……」
     凛にちょっと怒られて凹みながら焼きそばを全部食べ終えた。海にもう一度戻ろうかと思ったそのとき──……。
    「あの〜、糸師凛選手ですよね?」
    「なっ……!」
    「は? なんだよ」
     また凛が水着の爆美女に話しかけられている。俺は急いで頭を回転させた。またさっきみたいな対応をしたら、きっと凛が怒ってしまう。だとしたら、先ほどとは違うように対応したほうがいい……。凛が怒る前にことを収めなきゃ……。
    「あ、あの! 人違いです!」
    「え……何この割って入ってきた人……」
    「私たちこっちのイケメンのお兄さんに話しかけてるんですけど」
    「あははは……とりあえず、ちょっとアレなのでここは……」
     俺はキレないよう必死だった。我慢して、その場を耐えようと、拳をギュッと握りこんだ。
    「え~! ほんと糸師凛じゃなくても、お兄さんイケメンだから遊びた~い」
    「いい加減に……」
    「あー! ホントに本当に! 人違いなので! これ以上は迷惑なので!」
     俺は言いきった。申し訳ないけど、これ以上は迷惑だった。俺も、潔世一だってバレたら俺の評判も下がるかもしれないと不安もあったが、それでも注意しないよりはマシかという思いだった。
    「おい、潔、行くぞ」
    「え?」
     凛に腕を掴まれたかと思いきやそのまま海の家の外まで連れていかれた。そしてシャワー室に連れ込まれた。凛の大胆な行動に胸の鼓動が止まらなくなる。なんで凛はこんなことを? こんなところでいったいナニを……——。
    「……ここは人が多すぎる。車戻るぞ」
    「……へ?」
    「さっさと着替えろ」
    「あ、はい……」
     なんだそういうことか、と胸を撫でおろした。 俺は凛に言われるままシャワーを浴び、更衣室に移り私服へと着替えた。凛に「貸せ」と言われて車のキーを貸すと、そのまま運転席へと向かい車を発進させた。凛の運転なんて初めてなのでどきどきする。ちらっと横を見ると、片手運転する凛がいて、これは夢なのかと思った。凛は、本当にかっこいい。二回もナンパされるぐらいだし、そういえばこの前、普通に芸能人とかも選ばれる抱かれたい男ランキングでナンバーワンにも選ばれていたし、世間的に見てもこんなにイケメンな凛を俺は落とせるのか不安しかなかった。しかも、すでに俺はやらかしている。凛に格好悪いところばかり見せてしまっている。こんな状態で凛に告白することは出来るのだろうか……——。
    「着いた」
     凛は一〇分ほど車を走らせていただけだと思う。俺は窓の外を見ると、そこには先ほどの混雑とは無縁ののんびりとした時間が流れる海岸があった。観光客がメインというよりは地元の人がメイン。
    「俺が小さい頃、よく来てた場所だ」
    「え……? そうなの……? えーなんか、やばい……凛の幼少期か……」
    「なに想像してんだよ」
    「いたっ! 凛からそう言ったんだろ」
     凛に殴られた後頭部を抑える。じんじんと痛みが広がっていく。だって、凛の幼少期とか絶対可愛いに決まっている。いつか見せてもらえる機会とかできないかな……なんて淡い期待を抱いてみる。
     凛が「こっちだ」と案内してくれる。そんな頼もしい背中を頼りに俺はついていった。凛が海の家でパラソルとサマーベッドを借りて、俺たちは水着に着替えなおした。
    「……て、なんでサマーベッド、一脚なの⁉」
     凛は海の家で買ったジュースを片手にサマーベッドに寝転んでいる。
    「自分の分ぐらい自分で借りてこい」
    「あ、はーい……」
     俺もせっかくだからサマーベッドを借りるべく、海の家に向かった。先ほどまで、ナンパを追い払うのに必死だったから、サマーベッドに寝転んで優雅な午後を過ごしたい気持ちでいっぱいだった。
    「サマーベッド一脚お願いします」
     ついでにトロピカルジュースも購入する。俺は凛のもとへ向か……——と思ったところ、また凛が女性に話しかけられているのを見てしまった。
    「あ、あの……!」
     俺は慌てて声をかける。先ほどまでの爆美女水着ギャルではなく、ラッシュガードに大きい女優帽を被った日焼け対策万全な女性だった。そしてそのそばには小さな男の子がいた。
    「あっ、じゃあ、糸師くん、これで……」
     俺が不思議そうな顔をしていると、凛が口を開いた。
    「今のは、中学のときの同級生らしい……俺は覚えてねぇけど……それで子どもが俺のファンらしいから握手してやった」
    「な、なんだ……」
     俺は胸を撫でおろした。凛もファンサとかきちんとやるんだ。意外だったかもしれない。でもプロになってからスポンサーやファンの大切さというのは、たくさん叩き込まれている。そうかんがえたら当たり前か。俺からしたら随分と凛が丸くなったような気がした。そんな凛の姿に思わずときめいてしまう。やっぱり俺は凛が好きだ。凛に告白したい! 俺は心から自分に誓った。
     とりあえず俺はサマーベッドを組み立て、横になった。 凛みたいに片手にジュースを持ち、ビーチを満喫する。遠くに江ノ島が見える。そんな景色を眺めながらも脳内では凛に対する告白大作戦のシミュレーションが行われていた。多分日の入りが十九時ぐらいなので、ここを16時ぐらいに出て、ホテルで告白した方がロマンティック……? なんて妄想をしていると、からんと氷が鳴った。
     ──夏だなぁ……。
     なんだかんだ今までのオフシーズン、こんな風に海とかで過ごしたことないかも。凛とならこんなオフシーズン過ごすのもいいかもしれない……。
     あ〜、それを考えたら凛に早く告白したいな。トロピカルジュースに口を付けると、その甘さが脳天を突き抜ける。カラカラの喉にジュースが染み渡る。そして自分のなかにある疑問が浮かんでくる。
    「ねぇ、凛……なんで、今日来てくれたの?」
     俺は凛に恐る恐る尋ねる。
    「……なんでもいいだろ」
     凛がそっぽを向く。その顔がなんだか赤いような気がして……。俺の気のせいだろうか? この暑さのせいだろうか? 俺は思わず言葉に出してしまっていた。

    「……俺はさ……凛のこと……好き——なんだよね……」

    「……は?」
    「……え? え?」
     ざぶーんという波の音が遠くに聞こえる。今、凛になんて言った? 好きって言った? ……好きって言った⁉
    「あっ! 違くて……! あ、違うってことはないんだけど、今のタイミングじゃないってか……その……」
    「なに言ってんだ? お前が俺のこと好き……?」
    「あー忘れて! 今じゃないんだ!」
    「……」
     俺が、忘れて欲しいとお願いすると、凛はうーんと何か考えているようだった。俺からしたら、何も考えることはないはずだ。じゃあなんで……——?
     その時、ピカッと閃光が走った。するとすぐに雷鳴が轟くとあたりは一気に暗くなった。
    「やばっ……とりあえず車!」
     着替えるよりも早く、パラソルやサマーベッドを片付け車へ避難した。しばらくすると大粒の雨が降ってきて、俺たちは間一髪だったと思った。雷と大雨で車のなかにいてもうるさいと思うほどだった。
    「どうする? もうホテル行っちゃう?」
    「時間だしな」
     あまりにも大雨で視界不良だったので、雨が落ち着いてから向かうことにした。そして今日のホテルはそこそこ格式高いところなので水着でチェックインするわけにもいかなかった。しかし、幸いにも俺の車にはカーテンが付いているので着替えには問題ない。
    「凛、先に着替えていいよ」
     狭い車内を抜けて凛が後部座席に向かう。シャッとカーテンを閉めるとごそごそと着替える音が聞こえてきた。その音になぜか反応してしまう。凛の着替えなんて、監獄時代からいくらでも見てきたはずだ。今更気になるなんて、思春期にもほどがある。落ち着くんだ、潔世一。俺はまだ凛から返事ももらってない。意識するのはまだ早い。
    「おい、着替え終わったぞ」
    「じゃあ、俺着替えてくる!」
     俺がささっと着替えて運転席に戻ると、雨がだいぶ小降りになっていた。時刻は三時過ぎ。とりあえずホテルに向かって、チェックイン出来なければ、ロビーで待っていればいいか。
    「じゃあ、そろそろホテル向かうね」
     凛は無言でシートベルトをつける。俺も、それを確認してからアクセルをかけた。海岸沿いの大通りを走るとあっという間にホテルだった。その街並みを見て、凛は本当にいいところに住んでたんだなと実感する。冴は中学からスペインに行くぐらいだし、きっと良いところのお坊ちゃんなんだろう。こう考えると凛のこと全然知らないな……。もっと凛のことを知ったら好きになってしまいそうで怖い。ただでさえ、今現在フラれる可能性があるのに、凛のこと知りたいなんて……。
     そんなことを考えていると、ナビから“もうすぐ目的地です”と聞こえてきた。森の中に白い巨大なリゾートホテルが見えた。
    「ここなんだけど……凛とか絶対泊まったことあるよね……?」
    「地元で泊まらねぇだろ……でも、子どものころ何回か来たことはある。入学式とかそういうお祝いごとで」
    「やっぱ、ずっと思ってたんだけど凛って良いとこの生まれだよね……? 口悪いけど……」
    「あ? なんか言ったか?」
     良いとこのってところは否定しないんだと思いながら車を降りた。開放的なロビーに圧倒されていると、凛はさっさとチェックインしろと言わんばかりに俺をしばらく見つめたあと、さっさとラウンジのほうに向かってしまった。「チェックインはこちらでございます」という案内係の一言で、俺はフロントに向かって歩き出した。
    「予約してる潔です」
    「潔様ですね。お待ちしておりました」
     ルームキーを受け取ると、ラウンジにいる凛の元へ向かった。
    「お待たせ」
     凛はケーキとコーヒーのセットを頼んでいたらしく、テーブルには桃のケーキが置かれていた。
    「凛って甘いもの食べるの? なんか意外」
    「糖分で集中力の向上とかストレスの緩和とかするからな」
    「へぇ〜やっぱそういうの考えてるんだ。せっかくだから俺も食べようかな? あ、すみません、マンゴーのケーキお願いします。あと、コーヒー、ブラックで」
     ケーキとコーヒーはすぐに届き、俺はケーキを口に運んだ。マンゴーが今まで食べたどのマンゴーよりも濃厚で、飲み込みたくないほど美味しかった。凛はというと意外にも味わうタイプで、まだ半分ほどしか食べていなかった。チラッと凛のほうを見ると、みずみずしい桃がゆっくりと凛の口に運ばれていく。そして凛はぺろりと唇を舐めた。その唇にキスをしたくてたまらなかった。
    「ごちそうさまでした」
     ラウンジを後にした俺たちは、ようやく部屋へと向かった。エレベーターを降り廊下を歩く。すると凛が、「ん」と手を差し出してきた。俺が訳が分からず戸惑うことしかできなかった。
    「鍵。俺の部屋の鍵」
    「あ、あぁ、そっか……はい、これ」
     凛の行動を不思議に思いながら、俺は凛に鍵を渡した。凛は俺にもらった番号の部屋をキョロキョロと探しているようだった。
    「凛、こっち!」
    「は?」
    「え?」
     なぜか不機嫌になる凛に、俺はただただオロオロとするしかなかった。え? スウィートじゃダメだった? 知ってるホテルじゃダメだった?
     とりあえず部屋に入り、荷物を置いてひと息ついたところで、ふたりでソファに座った。すると、凛が先に口を開いた。
    「なんでホテルふたり一部屋なんだよ。普通、一人一部屋だろ。修学旅行じゃねぇんだから」
    「あっ……」
     ぶわっと全身の毛穴から汗という汗が出てくるのを感じた。大の大人の男ふたり旅、冷静に考えたらホテルは一人一部屋予約するべきだったかもしれない。いや、普通に考えたら一人一部屋か。なんで俺そこまで気が回らなかったんだろ……。
    「ご、ごめん……俺、凛と一緒に旅行できるのが嬉しすぎて、そこまで気が回んなくて……と、とりあえず、ふ、フロントに電話して部屋空いてないか確認して……」
    「はぁ……そこまではいい」
     凛の呆れたようなため息が怖い。
    「え、でも……」
    「お前と一緒の部屋なんて、監獄時代に嫌というほど味わったからな」
     凛は、ソファから立ち上がりバルコニーへと続く窓を開けた。ぶわっと夏の雨上がりのあの匂いが入ってくる。俺は慌てて凛を追いかけた。
     目の前に広がる海岸と、潮の香り。西日が差し込んできて眩しい。その先に凛がいる。その凛の姿があまりにも美しかった。
     もう振られてもいい。凛に俺の全てをぶつけよう。
    「凛、もう遅いかもしれないけれど……俺のことどうしたら好きになってくれる……?」
    「……お前、本当に俺のことが好きなのか?」
    「うん……キモいよね……でも凛のこと、好きなんだよ……」
    「……ほんとだな。俺はただの宿敵としか思ってなかったけどな」
    「うん……でも、諦めきれなくて……本当にこの八月の……オフシーズンだけでいいから付き合って欲しい……!」
     遠くから波の音や海鳥の鳴く声が聞こえる。凛は何も答えない。この時俺は思った。潔世一、一世一代の告白は儚くも散った——と。俺はどうにかこの場から逃げたくてとりあえず玄関に向かった。やっぱりこんな突然告白されたってダメだったんだ。もう——……。
    「おい、潔、どこ行くんだ」
     凛が俺の腕を掴んだ。力が強くて俺は思わず顔を歪める。
    「いたっ……ちょっと、出てくる……ディナーの時間には帰ってくるから」
    「お前、俺から逃げるのか?」
    「え?」
     凛から逃げる? そんなわけ……いや、そうかもしれない。凛に勝手に告白だけしておいて、凛の口から直接聞いたわけでもないのに、勝手に諦めて……。
    「俺は何も言ってねぇだろ……付き合ってやる」
    「えっ……凛、なんて……」
    「付き合ってやるって言ってんだよ。俺を満足させてみろ」
    「え……うそ……それほんとに言ってる……?」
     凛の言うことを信じていないわけじゃない。だって俺たちはずっと宿敵としてお互い切磋琢磨してきた仲だ。凛が俺に対して嘘を言うなんて思っていない。
    「俺の言うことを信じろ」
     凛の瞳はまっすぐだった。俺はその目線から逸らせなくなった。
    「答えは?」
     凛の言葉が部屋に響く。
    「……は、はい」
     凛の圧に押され、この話は終わった。 それから俺たちはディナーまでの時間、それぞれ過ごすことになった。凛は持ってきたトレーニング系の本を読んでいる。俺は、テレビとスマホをいったり来たりして、とても落ち着かなかった。お茶でも飲むかと、探すことにした。引き出しという引き出しを開け、お茶を探す。なかなか見つからず色んなところを開けてしまった。
    「あ、あった。凛ー? お茶飲む?」
     聞くと凛は無言で手を差し出してきた。「これから淹れるんだけど……」と言えば「さっさと淹れろ」と返ってきた。ケトルでお湯を沸かし、お茶を淹れる。「熱いから気を付けて」と渡せば凛は少しふーっと冷ましながらそのお茶を飲んだ。
    「ど、どう……?」
     俺は緊張のあまりよくわからないことを口に出していた。
    「ん……? あちぃな」
    「フフッ……アハハハハッ……そりゃあケトルから淹れたんだから、熱いよ。熱いの苦手なら、もっと待てばよかったじゃん」
     凛って結構抜けてるところあるよなぁと昔思ったことを思い出した。俺もソファに座り、お茶を飲んで一息ついた。
    「……そういえば、明日はどこに行くんだ?」
    「えっ……えーと……めっちゃベタに水族館と江ノ島行こうと思ってました……あっ、でも、車あるし全然ここ以外でも……」
    「別にいい……」
    「え?」
    「別にお前がどんな風に喜ばせようとしているのか気になるだけだ」
    「そんな期待しないで……普通に観光するだけだから……」
     凛が何も知らないこと前提で色々組んでしまっているからそんなふうに言われても困る。
    「おい、潔。お前、エゴイストだろ? 普段のお前らしくねぇな」
     ハッとした。そうだ、今日一日、全然普段の俺らしくない。凛に対して、どうやったら好かれるかなんて弱気なことばかり考えてしまっている。俺は凛に対してどう接していた? そんなの恋愛だって一緒だろ。
    「そうだな……凛……明日は、最高の日にしてやる」

     それから俺たちはディナーをホテルのレストランで食べてから、部屋に戻ってきた。ディナーの内容もフォアグラだったり、のどぐろだったり、神奈川の葉山牛だったり、とても満足ができる内容だった。凛もご機嫌そうだったので、お気に召したのだろう。そんな凛は風呂に入ろうと準備をしている。
    「凛、先入る?」
    「入る」
     そう言って凛は湯船にお湯を溜め始めた。そっか、凛はお湯を溜めるタイプなのか。俺と一緒だ、と少し嬉しくなる。凛は溜めてるあいだ、テレビを凝視している。凛もテレビ見るんだと思って自分も画面を見てみる。するとおどろおどろしい音とともに、白いワンピースを着た女らしき人物が映った。
    「ひぃ」
    「ぬりぃな」
     凛はそう言い残してバスルームに向かってしまった。ホラーの特集番組が部屋に響く。
    「え 凛! せめてテレビ消してって……!」
     そんな声も虚しく凛はバスルームに消えていった。俺は急いでバラエティ番組にチャンネルを変える。人の笑い声が聞こえてくるだけですごく安心した。
     バラエティ番組が終わる頃、凛が風呂から上がってきた。交代で俺が入って出てくると、テレビはホラーの特集番組に変わっていた。
    「凛……それ、観るの……?」
    「観る」
     間髪入れずに、答えが返ってきた。「あ、はい」と俺は凛に従った。寝室のほうに行けば観なくて済むのに、凛と離れたくなくて俺はソファに座って薄目でテレビを観た。
    「凛ってホラー好きなの?」
    「よく観る。映画以外にも、ホラーゲームもする」
    「まじで 凛ってホラーゲームすんだ。あ、でも凛はセンスあるからゲーム上手そう」
    「うぜぇ、テレビ聞こえねぇ」
    「あっ、ごめん!あとで話すね」
     凛にガチで怒られシュンとなる。ただでさえ怖いもの観ているのに、怒られるとか、泣きっ面に蜂じゃん。俺は完全に目を閉じて画面を見ないようにしていた。
     するといつの間にか俺は寝ていたらしく、凛に起こされた。
    「おい、潔、起きろ。寝るならベッド行け」
    「……んー? 俺、寝てた……?」
    「俺はそろそろ寝る」
     凛はそう言ってベッドに向かった。俺も慌ててベッドに向かった。
    「おやすみ、凛」
    「ん、おやすみ」

    ※続きは本編で
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