ゴーストパイレートと小さな狼獣たちが住まうとある港町にはとある噂が広がっていた。なんでも、港を統一している狼の屋敷に『世界に一つだけの宝』があるという噂であった。
皆が寝静まった夜、ベッド近くの窓からは満月が部屋を覗き、それを眺めている少年がいた。可愛らしい狼の耳をピコピコと動かししっぽを振っている。
屋敷に住む少年、桜であった。
いつもは寝ているはずの時間。今日は久しぶに顔を出した満月を見るために起きていたのだ。
だが眠気は優しく桜を包み込もうとする。ベッドの上でウトウトとしていると突然別の窓からガタガタと激しく揺れる音が鳴った。
ビクリと体を震わせ、シーツを握る。
ガタンッという音とともに窓があき、潮風が友達を連れて遊びに来たようだった。
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