はたらくツッキー出勤しようと、博物館の前の道を歩いていると博物館の前に一つの小さな背中が見えた。
「え、なんでいるの。」
「あ、月島くん。」
その背中が知っている人のそれだと気づくくらい近づくと声をかけた。
振り向いた彼女の顔には満面の笑みが広がっていて嬉しげに僕の名前を呼ぶ。
「あの、田中サンに聞いて。」
「田中さん」
「仙台市博物館の前に月島くんと山口くんのパネルがあるって。で、あわよくば月島くんに会えればいいなと思って。」
どうして彼女が田中さんを知っているのか、という疑問は置いておいて目の前に彼女がいるのはさすがに、照れるというか、なんというか。
「…ほんとに、なんでいるの」
「えっと、お休みだから…」
「せっかくの休みに僕のパネル見に来たの」
「うん、いけない」
さっきから僕らの会話はお互いへの疑問でいっぱいな気がする。
「いけないとかは、言ってないデショ。」
「そっか。パネルだけでなくて本人にも会えてラッキーだ。」
ほんとに、僕の片想い相手はどこまで本気で言っているのか、判断がつかなくて困る。
「会えてって、僕これから仕事だし、君の相手は出来ないんだけど。」
「うん、期待してないから大丈夫。」
そこは、期待しろよ。
「じゃあね、月島くん。お仕事頑張って。」
それだけ言ってくるりと僕に背を向けていってしまいそうになる君の腕を慌てて掴んだ。
「」
「えっと…今日…」
こういう時に、言葉を選ぶのも伝えるのも下手くそな自分に腹が立つ。
「待ってる。」
「え」
「迷惑じゃなければ、」
「………わかった。」
相手の意図する言葉だけは理解できた僕は、そう返事をして緩みそうになる顔をどうにかこうにか抑えながら仕事に向かうのだった。