ライブの後ライブのあと、柊が泣いていた。柊は玄純がいうようにいつも突然泣き出す。だから慣れたっちゃ慣れた。ただきっと柊も会場にいた真冬を見つけたのだろう。
見たのだろう。真冬が大粒の涙をこぼしているのを。
それだけでこの曲をやってよかったと思えた。
伝えたいもの全部伝えることができたから。
「…柊、玄純」
「…ずびっ。」
「何だ」
まだ涙が引っ込まず鼻水をすすっている柊と、玄純の目が俺に向く。
「俺にこの曲を教えてくれてありがとう。バンドに参加させてくれてありがとう。」
「「」」
そう言うと二人は驚いた顔で俺を見つめるから、居心地が悪くなって目をそらす。
「おうっ」
「あぁ。」
「何だよ、上。やっと俺に感謝したくなった」
「…感謝は多分結構前からしてる。」
「はっ…んだよ、ガチレスすんなよなっ。」
さっきまでずびずび泣いて感謝の言葉を口にしていた男の態度とは思えない柊の言葉に、笑いが込み上げてくる。
「ふっ、お前面白いな。」
「馬鹿にしてんだろ、それ。」
「褒め言葉。」
「きもっ。」
とあるライブの後の話。
大切な人の大切な人が作りたかった曲をを作り上げた日の話。