お汁粉とwsrn斎藤「…甘い匂いがするな。汁粉か。」
「汁粉です。」
自主稽古から戻るとき甘い匂いがしてその匂いに釣られるようにやってくる斎藤さん。
「飲みますか」
と下女ちゃんが聞くと「…いいのかいや、違う。俺は最後でいい。」と。
飲みたい気持ちは山々なのに、咳払いをした後言い直す斎藤さん。
「…ところで、お前は味見をしたのか」
話をしている内に何かを見つけて訊くと恥ずかしそうな下女ちゃんが「少しだけ。」って答えるし、「なら、それを貰おう。」って口元についているあんこを口づけで取るのが斎藤さん。
平助「今日、汁粉があるって聞いてさ、急いで帰ってきたんだよ。っつってもちゃんと見回りはしてきたぞ。」
急いで帰ってきたんだよ、の部分まで聞いてジト目をする下女ちゃんに笑いながら付け加えるのが藤堂さん。
「いいいおいだな。ちょっとだけ味見…いやいや、やっぱりだめだ。先に隊の奴らに食わしてやらねぇと。」
めちゃめちゃつまみ食いしたい気持ちをぐっとこらえて言う藤堂さんに。「藤堂さんもやっぱり隊長さんなんですね。」と笑顔を向ける下女ちゃん。
その時藤堂さんのお腹が鳴り、「俺、もう行くよ。このままここにいちゃ腹が減って仕方ないから。」って藤堂さんが出ていこうとするとき袖を掴んで引き留める下女ちゃん。
「藤堂さんと食べようと思って…頂き物なんですが」とお菓子を見せる下女ちゃんにぱぁああ…と効果音がつきそうなくらいの笑顔を見せてくれる藤堂さん。
沖田「僕、汁粉より善哉が食べたいです」
ふらりと台所に現れて、下女ちゃんの肩越しに鍋を覗き込む沖田さん。
びっくりして固まってしまう下女ちゃんに、君は本当にいつなったら背後に気をつけられるんですかこんなのじゃいつ背後から斬りかかられても仕方ありませんよ、なんて言う沖田さん。
「善哉、お好きなんですか」
「…好きというか。食べ応えが違いますよね。粒あんですし。」
その言葉にそうかと思い直す下女ちゃん。
「今から小豆を。」
「本当に君って人は今言われれば今の人ですね。次回は善哉にすれば良いんですよ。」
「でも、それじゃあ沖田さんが。」
「はい、僕は食べませんよ。今日はなんだかおなかが空かないんです。」
「本当はそれを伝えに来たんです。」
それじゃあ、と出ていこうとする沖田さんの体が以前より細くて思わず、「次は善哉にしますからどうか召し上がってくださいね。」という下女ちゃんと「必死すぎですよ、」とくすっと、笑う沖田さん。
原田「汁粉って甘いよね、半分あげる。」
こちらはもうお汁粉を食べている段階の原田さん。
下女ちゃんの作ってくれたお汁粉は美味しいんだけど多分そこまで甘味を食べないもので少し食べたら半分こを持ちかけてくる。
そんな原田さんに待ってましたとばかりに、にこにこな下女ちゃん。
「…そんなに欲しかったの」と訊く原田さんにこくんと頷くと、「じゃあ、残り全部あげる。」って半分どころか全部渡そうとする原田さんに、「いやいやいや、」となる下女ちゃん。
「…なんで別に遠慮する必要ないでしょ」って本当に不思議そうな原田さんは、「俺はアンタが美味そうに汁粉をすすってるの見てるだけでも結構楽しいから。」って尚も器を下女ちゃんに渡そうとする原田さん。
永倉「小鳥ちゃんが汁粉作ってるって聞いたから手伝いに来たよ。」
甘い匂いが漂う台所にひょこっと顔をのぞかせる永倉さん。
にっこにこな笑顔の永倉さんに、「手伝いなんて…」という下女ちゃん。
「良いでしょ俺、小鳥ちゃんと一緒に台所に立ってみたかったから。今だけ新婚さんみたいに、ね。」最後の方は耳元で囁くものだから、みるみるうちに顔が赤くなっていく下女ちゃん。
それを見て「ははっ、顔真っ赤。」って笑う永倉さんを、バシッと一度叩いてしまう。
それでも完成まで下女ちゃんの手際の良さを見つめながら時折手伝う永倉さんはきっと、この時間がずっと続けばいいのに…なんて心の中でこっそりと願っている。