あまりにも無防備な姿にアーサーは思わずその場に押し倒した。どうしてお前を好きだと言った男のベッドの上でそんな格好が出来るのだろうか。
「え、えっ、なに?」
逃げられないようにシンラの利き手を掴んでベッドに縫い付ける。シンラは何も分かっていないのかひたすら困惑している。好都合だ。そのままシンラの学ランのボタンを外していく。その間も抵抗する動作はない。
「あ、アーサー?なぁこれどういう状況?」
「……」
「なぁ、アーサーってば!」
「見て分かるだろ。」
「分かんねェから聞いてんだけど!」
学ランのボタンを外し終えても尚シンラは困惑しているのみだ。これは同意なのだろうか。それともただシンラが無知なだけなのか。
無知なら無知で教え込めばいい。むしろそちらの方がいい。アーサーだけのシンラに染めることが出来る。ぷち、とシャツのボタンを一つ外すとようやく自分の置かれている状況に気づいたのかシンラが暴れ始める。
「ちょ、え?!は、離せって!」
「……お前が煽ってきたんだろ。」
「そんなことしてないッ!」
「俺はお前のことが好きだって言ったよな?」
「そ、だけど……」
静かに目を逸らすシンラを見て、まだアーサーのことをそういう意味で見ていないことが分かってしまった。胸がきゅっと詰まる。が、それはそれとして今の状況を捨てられるほどアーサーに性欲がない訳ではない。
「男のベッドに座る意味、分かるよな?」
「なっ……!だ、だって!そんなの……」
「そんなの?」
「お前がそういうことしたい、なんて思う訳ないだろ……」
「俺だって男だぞ。好きなヤツとそういうことはしたいに決まってる。」
そう言いながらぷち、とボタンを外し続ける。ここまで来たらもう、止まれない。例え今の関係が壊れようとも止まれないのだ。
「……やだ、って言っても止まってくれない?」
「ああ。ここまで来てヤらない選択肢はない。」
「絶対?」
「絶対。」
「……」
シンラは無言になり、何かを考えるように目線をうろつかせた。何を考えたって無駄なのに。シンラの鍛え上げられた腹筋が露になる。萎えるどころか勃ち上がってくる。アーサーはそっとシンラに触れる。
「ひゃっ!」
「……」
「……」
途端シンラからは高い声が漏れた。擽ったかったのかもしれないが正直グッときた。
「あ、ちょ、さ、触んな!スケべ!」
「今からスケべなことするんだからいいだろ。」
「や、よ、よくないっ!やだっ!」
こしょこしょと触り続けるとシンラは嫌がるように身を捻り始めた。恥ずかしさと怒りが混ざっているのだろう。顔どころか身体まで真っ赤に染まっていた。
「ほ、ほんと、おちつけ!なぁ、俺だぞ!相手、俺!」
「だからシてェんじゃねェか。」
「えっ、うそ!俺だってわかってんの!?」
「好きだっつってるだろ。」
最後のボタンを外し終え、服を脱がす。下だけ履いている姿は実技後によく見る姿でどこか背徳感すらある。
「なぁ拒否権……」
「ない。」
「だよな……。……じゃ、じゃあ!せめて俺が上に「ダメだ。」食い気味すぎんだろ……」
シンラはそう言いながらアーサーの上半身を押すがアーサーの方が若干力が強い。押し倒されることなく、コトを進めていく。
「あーもう!分かったよ煮るなり焼くなり好きにしろ!!どうせ俺には拒否権ねェし!!」
「ヤケクソだな。」
「うっせェ!!」
そう言ったシンラはアーサーを押すのを諦め、大の字になって寝転んだ。正直雰囲気ぶち壊しだが、言質は取れたので良しとしよう。
「やっぱなしは今更無理だからな。」
「わーってるよ。目ェ見りゃ分かる。」
「ならいい。」
「……ったく、このバカ騎士。」
眉を八の字にし、困ったように笑うシンラ。まるで本当の恋人になったようでツキリと心臓が痛む。シンラはアーサーに根負けしただけで、アーサーのことを好きという訳では無い。それでも、今日だけは自分のものにしたかった。
「キスしていいか。」
「なっ、んで聞くんだよ。」
「恋人じゃねェのにキスはおかしいだろ。」
「それ以上のことをやるのに?」
「ああ。」
「……じゃあ恋人になってやる、って言ったら?」
「……は、」
「告白された時からずっとお前のこと考えてた。」
「……」
「それでさ、気づいたんだよ。びっくりしたけど嫌じゃなかったって。」
「それ、は」
「俺もお前のこと、好きみたい。……だからいーよ。」
「……っ、シンラっ!」