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    なんちゃって警察官パロ、斎誕生日の永斎(未満)※ふわふわ警察知識で書いてます。

     クリスマスは平日であり週の真ん中であったからまだしも、それを過ぎると大抵の会社は仕事納めを迎え、正月休みに入る。
     勿論、年末年始であろうと労働に勤しむ者はいるし、正月休みに入った者であっても実家に帰って親孝行だの挨拶回りだの、義両親宅で全然羽を伸ばせないだのと言った話も山ほどあるのだが、そこは明後日の方向に敬礼をすることで敬意を示したとしたい。
     そういうわけで年末は納会帰りに泥酔して電柱に凭れたり、公園のベンチで横たわり寝こけている酔っ払いを見つけては「凍死しますよ」と起こして回り、酒も抜けきっていない寝ぼけた頭で鞄を漁って「財布がない」と喚く男に詳しく話を聞いてる最中に内ポケットから出てきたり、終電がないからパトカーで家まで送れと要求する女を説得したりと大忙しだ。保護するばかりではなく、ときに酔っ払い同士の喧嘩に割って入り双方に殴られながら仲裁することもある。
     仕事納めも会社によりけりなので、こういったことは三十日まで続く。三十一日から翌月一日、即ち新年については言わずもがな。大都会はあちらもこちらもトラブルばかりで、頻りに出動令が出る。
     この時期は酔っ払いの対応以外にも遺失物届けや盗難事件が多い。なんとか署に帰ってきた後も書類仕事に追われているうち、すっかり規定の仮眠時間を取り逃し、窓から差し込むやけに暴力的な日差しに気付いて漸くキーボードを叩く手を止めた。机上に置いていたスマートフォンの画面は、幾つかメッセージが届いていることを報せていたが、生憎と内容を確認する余裕はない。

    「雪、降ってたんだぁ」
     気持ち何処かふわふわとした心地で、現実としてはふらふらと覚束無い足取りで窓辺に近寄った斎藤は、そういえばニュースで大寒波がどうのと言っていたことを思い出した。積もった雪は太陽の光を反射して目に痛いほど輝いている。署内は暖かいが、見ているだけで吐く息も白く凍りそうな景色に肩をさすった。
    「おまえが帰ってきた後だから、降り始めたのは四時半くらいからだな」
    「いたの」
    「ついさっきな」
     現れたのは斎藤と入れ替わりで外に出た永倉であった。とはいえ横目に見送ったときの格好付けた姿は見るも無惨と言うしかなく、前髪は乱れ、スーツは寄れて草臥れ、顔色は日頃の斎藤に負けず劣らずといった具合だ。
     時計を見れば時間は九時をとっくに過ぎている。そもそも永倉のシフトは七時までだったろうに今し方帰ってきたとなれば、相当に厳しいことがあったのだろうと伺えた。
    「コーヒーいれてくる、今なら新八の分も用意するけど」
    「要らん。ここのコーヒー不味ぃし、それに俺はもう寝る、書類なんて知らねぇ、全部仮眠の後だ……って気持ちで帰ってきたんだがな」
     永倉は乱れた前髪をかきあげて、斎藤をまじまじと見やった。
    (あ、その仕草はちょっと格好良い……)
     ところで斎藤は二枚目にあとひとつ届かない顔立ちをしている。それでも一応は整っているのだが、気怠げな目付き、陰気に落ちた目の下の影、どこか健康を害したような顔色で、整った容姿と言えど"正統派"とはやや隔たりがあった。それはそれで受け止めてはいるが、"正統派"に憧れがないわけではない。土方という上からは煙たがられ、新入りからは怯えられる男を特に慕うべき上司と見定めたのもそれが起因だ。土方は俗的な言い方をすれば顔だけで食べていけるような凄まじいイケメンで、オマケにそのことを自覚した振る舞いを徹底している。言ってしまえば演出家なのだ。それなのに警察庁の職員である近藤に憧れ、間違えて警視庁に就職したという抜けてるエピソードまで完備しているのだから恐ろしい。
    (好みで言うなら断トツで土方さんだけど、新八も同じくらい整ってるよなぁ)
     というのが斎藤の所感だ。他の誰かと話し合ったことはないので、あくまで斎藤の中だけの話である。
    「聞かなかったことにしてやるから、おまえ先に仮眠室に行け」
    「聞かれて困ることなんて言ってねぇけど」
     言い返せば、永倉は額に手を当てて深い溜息を吐いた。
    「本当にそう思ってるんなら、コーヒー程度のカフェイン入れたところで仕事なんて捗らねぇし、なんなら仮眠明けに書類見返してみろ、さっさと寝てりゃ良かったって頭を抱えるだけだぞ」
    「はぁ?」
    「良いから、とっとと寝てこい。近藤さんが来る前にちっとはマシな顔色に戻しとけ」
    「えっ、近藤さん来るの?」
    「起きたら教えてやる」
     しっしと追い払うような仕草で部屋を追い出される。スマホだって室内に置きっ放しなのだが、あの様子では戻ったところで碌に話も聞いて貰えずにまた追い出されるだけだろう。
    (少し歳上ってだけで偉そうにしやがって)
     昨今、社会問題となっているスマホ依存症というわけではないが、今日ばかりはスマホを手元に置いておきたい理由がある。経歴書に記入している以外では職場で口にしたことはないが、斎藤は今日というこの日が誕生日だった。
     一月一日生まれだから一なんだね、とはよく言われたもの。実際、長男でもないのに一なのだから否定のしようもない。また、同じくらい正月生まれなんて縁起が良いとも言われたが、仮にそうだとしても縁起以外に良いところなんてひとつもない。正月は父方の実家と母方の実家にそれぞれ顔を見せるため過密スケジュールが用意され、両親はそこで集まった親族に挨拶をして回り、子供たちにお年玉を配って回りと忙しく、到底お誕生日会なんて悠長に開いている時間はなかった。それも一段落すれば間もなく冬休みが空けて登校日なのだから、その準備だってある。二日、三日と遅れた末に両親が疲れきった笑顔でケーキを買って蝋燭を立ててくれる。斎藤にとって誕生日とはそういう日であった。
    (後回しにはされたけど、それもどうしようもない理由だし、いつも笑顔で祝っては貰えたし)
     恨み節を言うようなことはなにもない。
     ただ、間が悪かった。
    (小学生のときは給食でデザートの余りが出たらジャンケンで取り合ってたけど、誕生日の子は絶対に貰えたんだよなぁ、僕には関係ない話だったけど)
     仮眠室が近づいてくると、更にスマホを置いてきたことを後悔し始めた。
     警察官という職につき、年末年始を仕事に忙殺されるようになってからの方が、当日に誕生日を祝われることが増えたと思う。
     毎年律儀に親族の集まりに顔を出している兄から聞いた話、どうやら「俺が今年も仕事に追われて帰って来ない弟がいるって言うと、周りの方から母さんに一言でも挨拶を送ってやりなって言ってくれるんだよ」という。これは大学を卒業後すぐに嫁ぎ、夫の帰省に着いていくため自分と同じように親族の集まりに顔を出せない姉も似たようなことを言っていた。
     学生時代は冬休み明けに新年の挨拶と併せて誕生日を祝ってくれていた友人も、社会人となって会う機会が減ってからは当日にスマホで祝いの言葉をくれるようになった。
    (仕方ないと受け入れちゃいたが、やっぱり当日に祝ってもらえると格別なんだよな)
     代わりに誕生日ケーキはなくなったが、もうそんな歳でもない。言葉だけで十分だ。
     せっかく落ち着いてスマホを確認できるタイミングなのに……気落ちしたのもそこまでで、思っていたより身体は限界だったらしい。仮眠室の布団を見ると途端に頭が重くなってきた。吸い寄せられるように後頭部を枕に預けると、瞼が……───。

    「っべぇ! 寝過ぎた!」
     書類仕事が残っていると知っているのだから、起こしに来てくれて良かったのではないか。飛び込むように部屋へ戻れば、永倉は顰め面で首を傾げた。
    「まだ十一時だぜ」
    「二時間も経ってんじゃん」
     急いでデスクへと戻る。裏返しに置かれたスマホが目に入り、寝る前に考えていたことを思い出したが今は書類の方が重要だ。
    「……斎藤、なぁ」
    「なんだよ、こっちはこれから」
     不機嫌を隠すことなく永倉を睨み付けて、斎藤は言葉を止めた。より正確に言うならば、呆気にとられ続きの言葉を失くしてしまった。
    「新八、どうしたの?」
     何度も瞬きを繰り返した後、ようやく出てきたのそんな問い掛けだった。一月一日、世間は新年を祝い、今頃おせちを囲んでいるかお汁粉をつついているか……そんな時期に永倉は、どういうわけか片手に缶コーヒーを、もう片手にケーキを持って斎藤の傍に立っていた。
    「コンビニで買ってきた」
    「そうなんだ?」
    「…………ふたつ入りだから、やる」
    「あ、ありがとう?」
     礼を言って受け取ろうとすると、ケーキだけでなくコーヒーも渡される。
    「えっと、コーヒーも?」
    「あ? 文句あっか?」
    「いや……」
     斎藤は今まで永倉が甘党だとは知らなかった。それも急にケーキが食べたいからと夜勤明けにコンビニに走るほど筋金入りだったとは……それなら話が合う人がいないと嘆く沖田のコンビニスイーツ談義に付き合ってやればいいのに。
    「お正月にケーキって、なんか変な感じだね」
     スポンジ生地に生クリームと、ビニールハウスで育てられた季節外れの苺が鎮座するショートケーキを見下ろした。
     今の永倉は気が立っていてようだから、こんなことを言えば「文句があるなら食うな」と言われてしまうだろうか。そう思いながら隣の席に座り、ケーキを食べ始めた永倉を盗み見る。すると、あちらもあちらで丁度なにやら思うところがある目で斎藤を見ていたところだったらしく、バチリと目が合ってしまう。
    「僕、変なこと言ったかな」
     先手を打って尋ねれば「いや」と永倉は口篭った。もしかしたら、永倉の家では正月にケーキを食べるのは然程に珍しくはないのかもしれない。時折の噂からして、近年では減少傾向にある親戚間の集いが存在する斎藤の家よりも更に古く格式張った習慣が残る、謂わば"ちゃんとした家柄"のようなのだけれども。
    「おまえん家では、この日はケーキは食わねぇのか」
    「僕の家ではお正月にケーキは食べないね」
     プラスチックのフォークを突き刺せば、柔らかなスポンジの感覚。一口食べれば苺の酸味と生クリームの甘みが口の中に広がる。
    「正月っていうかよ……」
     口の中に広がる幸せを噛み締めつつ、なにやらもごもごと言っている永倉の言葉に耳を傾けていたが、結局「なんでもねぇ」と口を閉じてしまった。
    「まぁ、でも」
     代わりにというわけではないが、ショートケーキの甘さに絆されるように斎藤は口を開いた。
    「本当はずっとお正月にケーキを食べてみたかったんだよね」

     振動するスマートフォンが新たなメッセージの到着を告げた。


    ***

     永倉はふと思い出したように口を開いた。
    「三賀日中に近藤さんが顔出してくれるってよ」
    「なんだ、今日とは決まってないんだ。でも、土方さんも喜ぶだろうな」
    「おまえは本当に土方が好きだよな」
    「あの顔とあの気性で、警察庁の近藤さんに憧れて間違えて警察官になったってのが……僕ってそういうギャップに弱いんだよねぇ……当然それだけじゃないけどさ」
    「ふぅん」
     なんとも気のない返事だ。だが、それよりも斎藤としては以前から気になる話があった。
    「山南さんがさ、もうひとり同じ経緯で警察官になった人がいるって」
    「ごぼぁっ!」
     言い掛けたところで永倉が激しく噎せた。慌ただしくケーキを机に置き、コーヒーを一気に飲み干してティッシュで口元を拭う様子を斎藤は呆れながら眺める。
    「おまえね、この時期に警察官がケーキを喉に詰まらせて死ぬなんて洒落にならねぇよ」
     半ば冗談で、つまり半ばは本気でそう言ってみたが、永倉はなにも聞こえていないようにブツブツとなにやらぼやいている。
    「や、やまなみせんせ……自分は……ず……庁に……」
    「大丈夫? っていうかなに? なんて?」
    「な、なんでも……」

    ***

    近藤さん
    警察庁の職員。よく警視庁に顔を出してくれる。
    近藤さんに憧れて間違えて警察官になる人が後を絶たない人たらし。

    山南さん
    警察庁の職員。土方さんたちの課に出向中。
    近藤さんに憧れて間違わずに警察庁へ行った数少ないひと。

    土方さん
    警視庁所属。近藤さんに憧れて間違えて警察官になった。正統派美形。

    永倉さん
    警視庁所属。近藤さんに憧れて間違えて警察官になった。正統派男前。
    イメージ的に叩き上げのノンキャリア感がある。

    沖田さん
    警視庁所属。近藤さんに土方さんを頼まれて警察官になった。

    斎藤さん
    警視庁所属。土方さんに憧れて警察官になった。検察庁の山川さんと仲良し。
    イメージ的にセミキャリア感がある。

    ※土方さんの課(というか新撰組)はセミキャリアとノンキャリアで構成されていそうなイメージ(全てイメージ)
    でも意外と沖田さんがキャリア組(天才なので)だったけど土方さんと一緒にいたくて出世コースを外れたとか体調の問題で休職したとかでも良い。
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    Replies from the creator

    abc12321cba5

    DOODLE文字化けに関する素敵ツールの存在を知り、どうしても使いたくなった2時間クオリティの短いお話です。

    文字化けさせるツール様https://tools.ikunaga.net/mojibake/
    文字化け復元ツール様
    https://tools.ikunaga.net/mojibake-restore/
    状態異常永×看病斎@文字化け版 認識阻害の状態異常に該当するという。
     マスターを庇い敵性エネミーの攻撃を受けた永倉は、帰還後早々に押し込まれた医務室にそのまま留まることを推奨されたが、 本人の希望から自室待機となった。
     とはいえ、本人が知覚する物事が現実と乖離する類の異常だ。バイタルは管制室でも注意するが、それと併せて誰かしらが彼の傍に着くこととなった。
    「縺倥c縺ゅ€∝ヵ縺檎捩縺�※繧九h」
     斎藤が手を挙げた。
    「縺贋コ御ココ蜈ア縺ッ蜷悟ョ、縺ァ縺吶b縺ョ縺ュ縲ゅ〒繧ゅ€∝密蝌ゥ縺励■繧�ァ�岼縺ァ縺吶h?」
     沖田が茶化すような笑いを零す。
    「縺ゥ縺�°縺ェ」
     彼女の言葉に、斎藤が肩を竦める。
    「閨槭>縺溯ゥア縲∝捉繧翫�險€闡峨′繧上°繧峨↑縺�↑縺ヲ髫丞�縺ィ遯ョ螻医↑蠢�慍縺ォ縺ェ繧翫◎縺�↑迥カ諷狗焚蟶ク縺倥c縺ェ縺�? 縺�*縺ィ縺�≧縺ィ縺阪�谿エ繧雁粋縺�¥繧峨>縺後ぎ繧ケ謚懊″縺ォ繧ゅ↑縺」縺ヲ濶ッ縺�°繧�」
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